水晶の中の包有物

水晶は、成長時にしばしば周囲の成分を取り込み、結晶成長することがあります。

取り込まれたものを包有物といいます。現実には、濁ったような水晶は、すべて成長環境の周囲の気体や液体を取り込んでいるのですが、肉眼ではっきり見えるような包有物は水晶に彩を与えます。

マリモ水晶と呼ばれる水晶です。大分のものです。

これは、球状の緑泥石という鉱物を含んでいます。

白い繊維状の鉱物は苦土電気石です。

日本を代表する包有物入りの水晶です。

マダガスカルの、クロム雲母(フクサイト)を含んだ水晶です

こちらは秋田県の緑色の水晶です。シャモス石という緑泥石を含んでいます。

白雲母を大量に含んだ煙水晶(ブラジル産)。

細かい灰鉄輝石を含んだ水晶で、草緑色をしています(ロシア)。

多くの角閃石を含むものです(長野県)。

山梨県塩山市には、かつてこういった針状の苦土電気石を含んだ水晶を多く産し、ススキ入り水晶という通り名で、印材用に採掘したことがあります。

液体と気泡を含んだ水晶です(長野県)。

液体は水のこともあれば、食塩水のことも、液化炭酸ガスを含むこともあるようです。

成長時の熱水の情報をすべて、タイムカプセルのように含んでいます。

ハーキマーダイアモンド中の水(アメリカ)

ニューヨークのはずれの山中で出る水晶で、ハーキマーダイアモンドというものがあります。

この中にはしばしば水が取り込まれています。

これは、水の中に気泡が浮いており、ピッチ状の包有物も含まれています。

こちらは山形県の水晶の拡大です。

気体が水晶中に取り込まれています。

気体の形は、水晶と同様に結晶面で囲まれています。

このようなものを「負晶(negative crystal)」といいます。

炭化水素オイルと水(パキスタン)。

10年ほど前にパキスタンのディーラーが「褐色の水を含んだ水入り水晶」と言って販売していた水晶ですが、よく見ると無色の水と褐色の液体が相分離していたので、炭化水素だということがわかりました。

このオイルには非常に強い蛍光を示す物質(おそらくフルオレンかポリアセン誘導体だと思います)を含んでいるようで、紫外線を照射すると、大変強い青色の蛍光を示します。

次の写真は、可視光を光源としたものと、長波の紫外光を光源としたものです。

水晶内部に、複雑な形状の空孔があり、この中に水が含まれ、さらにこの水に炭化水素のオイルが含まれているのがわかります。

ピッチ状固体分、液体、気体を含むハーキマーダイアモンドの拡大です。

水晶を動かすと、気泡は浮かび、ピッチは動いて沈みます。

鉄酸化物、方解石(南アフリカ産)

水晶の複屈折で、二重ににじんで見えます。

江田島(広島県)の水晶です。赤鉄鉱の小さな結晶を含み、中に山ができています。

これは、成長時のある時期に、水晶表面に赤鉄鉱の結晶が付着し、その後再び無色の結晶がその上を覆ってできるもののようです。

こういったものを、「山入り水晶」ですとか、「ファントム水晶」と呼ぶことがあります。

ブラジル、リオ・グランデ・ド・スル州の水晶です。

多くの針鉄鉱を含みます。