ラドン

希ガス元素の最末尾。ラドンです。

放射性で、質量数 222 のものがウラン系列に入っています。これは半減期 3.8日で、α崩壊します。

半減期が短いために流通させることは難しいですが、地下水にはウランやラジウムから生じた Rn222 が数千~数万 Bq/L のレベルで含まれています。

これは曝気したり、地下水が空中に出てくると簡単に抜け、気体として大気中に放出されます。

ペットボトルに井戸水を半分ほど収め、これを振ると、気相にラドンがほとんど移ってくるので、ラドン源として使うことができるそうです。

次の写真は、温泉地での自噴泉。このボコボコと湧き出す温泉にも、ラドンが含まれています。

研究者がラドン源を扱う場合、ラジウムから発生してくるものを用いるそうです。

ウラン鉱石を酸で処理し、硫酸イオンを加えると溶解性の乏しい硫酸バリウムが沈殿し、わずかなラジウムは硫酸ラジウムの形で共沈するので、これをラドンソースとして用いることができますが、非密閉の線源となります。

次の写真は、キュリー夫妻がポロニウムとラジウムを単離したチェコ、ヤヒモフ(ヨアヒムスタール)のピッチブレンドです。

これは、通常の天然同位体比のウランに比べかなり強い放射能を示しますが、大部分はラジウムのためです。

この鉱石からも、多くのラドンが発生します。

天然に存在するラドン同位体は、トリウム系列の Rn220 もありますが、これは半減期 55秒という、かなり短寿命の核種です。

アクチニウム系列の Rn219 は、半減期 3.9秒。

人工放射性核種がそれ以外に18ほど知られています。

ラドンは半減期の短い放射性気体で、肺で核分裂するとそこに留まるため、けっこう厄介です。

WHO の調べでは、煙草に次いで肺ガンのリスクとされています。

地上に生きとし生ける者が、必ず曝露されてしまう、潜在的なリスクの一つです。