セリウム

セリウムはランタノイドの中で最も地殻中の存在量が多い元素です。

金属は銀白色なのですが、空気中でゆっくりと酸化され、黄ばんできます。

空気中で撮影したので、やや黄色みを帯びてしまいました。

硬く、密度の高い金属元素です。

様々な用途がありますが、最もよく用いられるのは、酸化セリウム(セリア)で、光学材料の仕上げ研磨には無くてはならないものです。セリアで仕上げると艶が違うのだそうで。

これは、酸化セリウムがガラスのケイ酸分と反応するためと言われています。

こういった研磨剤用途は多いです。

身近なところでは、ライターの発火合金は「ミッシュメタル」というセリウム―鉄合金。

下の写真は「モナザイト」という名前で世を馳せた、モナズ石。リン酸セリウムです。

福島県石川郡石川町塩沢のものです。ペグマタイトの灰色い石英に埋没しています。これが風化分解すると、比重の大きさから砂鉱として溜まり、これを採掘することも。

これがセリウムの最も有用な鉱石鉱物です。

モナズ石(monazite), CePO4, mon., P21/n.

福島県石川郡石川町塩沢

国立科学博物館蔵(櫻井標本).標本番号:NSM-M33989

撮影幅 : 3.3 cm

モナズ石のカチオンサイトはほとんどの場合、程度の差こそあれ他の希土類を含みます。

セリウムのモル比を越えるものになるとランタンを端成分とするランタンモナズ石、ネオジムを端成分とするネオジムモナズ石などのアナログがあります。およその場合、セリウムはモル比で半分、ランタンが四分の一、残りが他のランタノイドです。

んで、しばしば、一周期下のアクチニドであるトリウムやウラン類を含み、このために放射性を示すことが多いのです。多いものではモル比で10%近いトリウムを含有し、そこそこ強い放射性があります。

ラドン温泉に放り込まれたのはこのためです。

ウランやトリウムの分裂に由来するヘリウムガスがこの石の中に多く含まれており、加熱してヘリウム原料としたこともあったそうです。

トリウム源などの利用としてはそれでもいいのですが、ランタノイド系の希土を採るためにはそれだと都合の悪いことがしばしばあり(労働者の被曝を防いだり、放射性廃棄物が出てきたりしますから)、トリウムやウランを含みづらいバストネス石が好んで用いられるケースも多いようです。これはランタノイドのフッ化炭酸塩で、しばしば濃縮した鉱床を作ります。

ただし、バストネス石はランタンやセリウムなどのいわゆる「軽希土類」を多く含むのですが、磁性材料などに有用な重希土類の含量が少なく、この目的ではモナズ石やゼノタイムのほうが有利です。