日本の新鉱物(硫酸塩、テルル酸塩)

大阪石 Osakaite (大阪府箕面市温泉町平尾旧坑)

大阪石は塩基性硫酸亜鉛5水和物 (Zn4SO4(OH)6・5H2O) の鉱物で、大阪府箕面市平尾旧坑の中の亜鉛鉱床に生じた、含水量のとりわけ多い亜鉛二次鉱物です。現場では、鍾乳石のようにこの鉱物がぶら下がっていたそうです。

この標本は、発見直後に記載者の方がサンプリングされたものの頂き物です。誠にありがとうございます。

とても水和水が抜けやすく、乾燥空気中とか、X線回折実験の照射でも抜けてしまうと記載論文にはあります。

脱水して4水和物の namuwite になってしまうんですが、水につけるとまた戻るという可逆性があるようです。

標本存在数が少なく、被写体探しが容易ではありません。

しかもこの石、小さくて撮るのが妙に難しい・・・。

ほぼ無色透明の六角薄板状結晶です。

大阪石(osakaite) Zn4SO4(OH)6・5H2O, tric., P-1

大阪府箕面市温泉町 平尾旧坑

写真上下 : 2.0 mm

Carl Zeiss Luminar 16mm/Nikon Multiphot/Nikon D800E

大阪石(osakaite) Zn4SO4(OH)6・5H2O, tric., P-1

大阪府箕面市温泉町 平尾旧坑

写真幅 : 2.5 mm

Nikon Ultra Micro Nikkor 28mmF1.8/Nikon Multiphot/Nikon D3

大阪石(osakaite) Zn4SO4(OH)6・5H2O, tric., P-1

大阪府箕面市温泉町 平尾旧坑

写真上下 : 1.9 mm

Carl Zeiss Luminar 16mm/Nikon Multiphot/Nikon D800E

結晶粒は 0.2-0.3mm が最大です。

こちらは、記載者さんにお借りしたタイプ標本の写真です。わずかに含んだ銅成分により、うっすらと青く色づいています。

天井にぶら下がっていた鍾乳石状大阪石の根元の部分のようです(写真だと天地ひっくり返し)

手稲石(北海道手稲鉱山)

金鉱山の酸化帯に産する、銅の亜テルル酸塩。

大変美しい鉱物で、結晶には左右の鏡像構造が存在しますが、面からは確認できません。

手稲石(teineite) CuTeO3・2H2O, orth., P212121

北海道札幌市手稲区手稲 手稲鉱山

東京大学総合研究博物館蔵

写真幅 : 6.5 mm

LOMO Mikroplanar 40mmF4.5/Nikon PB-2/Nikon D3

手稲石(静岡県河津鉱山)

手稲石(teineite) CuTeO3・2H2O, orth., P212121

静岡県下田市蓮台寺 河津鉱山猿喰坑

国立科学博物館蔵(櫻井標本).標本番号:NSM-M33923

写真幅 : 15 mm

LOMO Mikroplanar 40mmF4.5/Nikon PB-5/Nikon D3

滋賀石(滋賀県五百井鉱山)

滋賀石(shigaite), [AlMn2(OH)6]3(SO4)2Na(H2O)6{H2O}6, trigonal, R-3

滋賀県栗東市下戸山五百井鉱山

FoV : 3 mm

Olympus Zuiko Auto Macro 38mm F2.8 (F = 5.6)/Nikon Multiphot/Nikon D3

滋賀県の五百井鉱山(いおいこうざん)より見出された新鉱物の滋賀石です。

カナダ、オーストラリアでも見つかり、南アフリカのマンガン鉱山で多くの美麗な結晶を産出し、標本市場に出回るようになりました。

アルミニウムとマンガンとナトリウムの含水硫酸塩で、黄色透明の六角板状の鉱物です。

鮮やかな黄色透明が綺麗ですね。

底面方向にへき開があり、その方向にひびが入りやすいようで、空気ギャップによる干渉色が見えます。

これは、滋賀石の層状の結晶構造に基づくものです。

ンチュワニンのもので構造再解析がされているので、Can. Min. の pdf を参照のこと。

三方晶で、結晶の底面(六角板状の面)に平行にマンガンとアルミの水酸基リガンドがたかった八面体の連なったシートがあり、シート間を硫酸イオンとナトリウムイオンが結んでいます。

そのため、シートが剥げるようなへき開が発達しています。

硫酸塩の雲母みたいなものですね。

やったことは無いんですが、このへき開片、曲がるらしいです!

滋賀石 (南アフリカ、ンチュワニン鉱山)

欽一石(静岡県河津鉱山)

アマチャ鉱物コレクターの総帥、故櫻井欽一博士の名前を頂いた鉱物です。

含水の鉄のテルル酸塩で、記載産地の標本存在数がものすごく少ないことでも知られます。産地は河津鉱山猿喰坑ですが、檜沢坑でもあるみたいです。

テルルを多く含んだ金鉱石の二次酸化帯に生じる、褐色の結晶です。

欽一石(kinichilite), (Fe,Mn,Zn)2(TeO3)3(NaxH1-x)-3H2O, hex., P63/m.

静岡県下田市蓮台寺 河津鉱山檜沢坑

国立科学博物館蔵.標本番号:NSM-M33921

幅 : 4.0 mm

模式標本は黒々とした六角短柱状の結晶の集合体で、そのイメージがものすごく強いんですが、こういう針状結晶の放射状集合体のほうが、この鉱物の特徴をよくあらわしているのだと思います。

その後、メキシコ・ソノラで見つかったのも、まさにこういうタイプでした。

すごい低温低圧で生成しているような雰囲気もあり、猿喰、檜沢のテルルの多い鉱石で、石英塊の晶洞やひび割れに、見慣れない濃い褐色の放射状集合体があったら、分析をかけてもいいと思います。

産状からして、みんなの標本箱に紛れ込んでいてもよさそうな感じです。