石綿(アスベスト)
日本における石綿の有用性は、江戸時代、平賀源内が広めたと言われています。
鉱物性の繊維で、耐熱性がすこぶる高く、比較的柔軟な繊維を形成します。
独特の微細なチューブ状繊維で、その特異性は古くから注目されてきました。
耐候性、耐薬品性は極端に高く、熱および電気の絶縁体であり、耐摩耗性および耐久性の高さ、セメントとコンポジットにしたときの相性のよさなどから、日本の高度成長期に多用されました。昭和40年代は年間20万トン以上もの石綿が輸入され、多くは建材に利用されたようです。
これの代わりになる天然繊維は、そう簡単には見つからないし、合成も容易ではありません。
安価に簡単に手に入り、加工も使用も容易で、使うと劇的な品質改善が望めたため、盛んに賞用されました。
ところが、石綿の職業的な曝露により、中皮種、肺がん、石綿肺などの高い危険性が徐々に明るみに出たため、昭和46年に法規制(特定化学物質等障害予防規則)され、使用についてブレーキがかかりました。
これに続く平成16年の改正労安法によってさらに強く法規制がかかり、石綿を利用した建材やブレーキパッドなどはほとんど作れなくなりました。
様々な物質には利点と裏返しの欠点が存在し、これは鉱物にも、合成有機・無機化合物にも、天然物にも医薬品にも必ずあります。
要は程度問題なのです。
すべては使い方次第で、アスベスト禍は安全性の判断と対策に不十分な点があったために起こりました。
うまくモノを使うのは本当に難しいことだと思います。