タデアイによる藍の叩き染め

インジゴは水にほぼ不溶性の青色色素で、これを布への染料として用いるには、さまざまな工夫がいります。

これは大きく分けて二つあり、直接染色と建染め(バット染色)とがあり、前者はインジゴ分子を布の上でまったく別の前駆体から作りだす方法、後者はインジゴ分子を還元して水に可溶性のロイコ体とし、これを繊維上で酸化させ、インジゴ分子を再生して染色する方法です。

通常は「藍建て」といって、後者の方法で染めます。

タデアイの場合、藍の草本から蒅(すくも)と呼ばれる、インジゴ 3-5% を含む発酵された葉を作ります。

これをつくるのは「藍師」。

この製品である藍玉を買い、再度アルカリ中で還元発酵させロイコ体とし、これで布を染める人は「紺屋」と呼ばれました。

タデアイは、めったに直接染色では染めないのですが、叩き染めと呼ばれる原始的な染色法があるので、これにトライしてみます。

反応式はこれ。酵素反応から始まる酸化二量化反応です。

まず布を切ります。綿よりも絹(シルク)が良く染まります。

綿よりも絹の繊維の方が、藍の色素分子とより強く相互作用する(くっ付き合う)ためです。

タデアイの葉を摘みます。若い葉っぱほどいいです。先端から2-3枚目だとすごく色が濃くなります。

叩き台の上に、一枚ティシューペーパーを敷き、その上に絹布を置き、その上にタデアイの葉を並べます。

デザインがここで決まります。

布を折り返して葉を布で挟み、さらに保護のためにティシューペーパーを重ねて、プラスチックハンマーで叩きます。

あまり強くたたくと布を傷めるので注意。

布にうまく葉がはりついたら、ティシューを外しても大丈夫です。ムラなく葉っぱの形が出るように叩きます。

ひっくり返して裏からも。葉っぱの形が、表裏キレイに出てくるまで。

これを、剥がさないようにビニール袋に入れます。乾燥させないためです。

これは、酵素が藍の色素成分のもとになる分子(インジカン)から色素分子をつくるときに、完全に乾燥すると反応が止まってしまうので、それを防ぐためです。

保湿のために、わずかに水で湿らせたティシューペーパーがビニール袋に入っています。

ただし、絹布が濡れてしまうとにじんでしまうので気を付けてください。

この状態で30分以上放置します。

袋から取り出し、剥がします。この時点で強い青緑になっています。

葉っぱを落とし、葉緑素を抜くために、洗剤を使って水洗いします。ゴシゴシこすっても大丈夫。

こまめに流して洗って、を繰り返すと、白地に青が映えます。

葉緑素は水洗いで溶けて流れ出ますが、タデアイからできた色素分子であるインジゴは、水にまったく溶けないので、インジゴの青に染まります。

この布を干して終了です。お疲れさまでした。

(注記)タデアイの枝をまるまる叩き初めすると、若い葉に多くの色素のもとになる分子が入っているのがわかります。

だから先のほうを摘むのです。

まさに、青は藍より出でて藍より青し、ということわざそのままであります。