日本の新鉱物(炭酸塩、ホウ酸塩)

逸見石(岡山県布賀鉱山)

ホウ素を多く含んだ熱水によって生成した、銅とカルシウムの含水ホウ酸塩です。大変美しい鉱物です。

数年前に多産し、良質の標本が多量に流通したことがあります。

はっきりと三斜晶系だということがわかる結晶です。

神保石(栃木県加蘇鉱山)

原標本(東京大学総合研究博物館所蔵)の神保石。

栃木県鹿沼市加蘇鉱山。長さ11cm。

櫻井先生が気付き、加藤先生がサンプリングされたとされるものです。

岩石標本のように、キレイにトリミングしてあります。

神保石はホウ酸マンガンの単純な組成の鉱物で、斜方晶の結晶が集合した緻密な塊を作ります。

白っぽい部分は、切断部です。黒い層状のバンドはヤコブス鉱。

神保石(Jimboite) Mn3(BO3)2, orth., Pnmn or Pmmn

栃木県鹿沼市上久我 加蘇鉱山

東京大学総合研究博物館蔵

標本長: 11 cm

Nikon Micro Nikkor 60mm F2.8G ED (F = 22)/Nikon D3

同時に採集された、もっと小さなものです。

赤いのは、分析部を示した朱書きです。いずれも4cm。

独特の、テフロ石のような破断面で、もうちょっと赤紫っぽい褐色の鉱物です。

ある種の堆積性の層状マンガン鉱床にはホウ素が濃縮することがあり、ホウ酸イオンとマンガンイオンを含んだ珍しい鉱物が形成されます。

鉱物名は、東大教授の神保小虎 (1867-1924)にちなみます。日本鉱物誌第2版の編者ですね。

木村石(佐賀県肥前町)

木村石(kimuraite-(Y)), CaY2(CO3)4-6H2O, orth., Imm2.

佐賀県東松浦郡肥前町新木場

国立科学博物館蔵(櫻井鉱物標本).標本番号:NSM-M33522

幅 : 4.2 cm

佐賀の外れのアルカリかんらん石玄武岩の空隙には、特異な希土類の炭酸塩鉱物を多く産し、その道の人にはすごく有名です。

一番バッターがロッカ石でしたが、新鉱物第一番はカルシウムとイットリウムの炭酸塩で、東大の放射化学の権威、故木村健二郎教授(1896-1988)の名前を頂きました。

わずかにピンク色を帯びた白色の結晶集合体です。

理想成分はカルシウムとイットリウムとされていますが、このイットリウム分は他の希土類元素を多く含んでいます。

記載論文における分析値の上位6元素をあげておきますと、イットリウム (77.7%)、ネオジム (5.3%)、ガドリニウム (4.1%)、ジスプロジウム (3.9%)、ユーロピウム (2.6%)、サマリウム (1.6%) です。すべてモル%。

中国に振り回されっぱなしの希土類元素ですが、佐賀県のもお忘れなく。