インジウム

【性質】

インジウムです。明るい銀白色の金属ですが非常に軟らかく、爪で簡単に傷がつきます。

この軟らかさとシール性のよさを使って、金属線材を低温用の真空シールに使うこともあります。

金属結晶は、四角板状結晶ができやすいクセあり。

結晶構造では、面心立方格子で、空間群 (F4/mmm) なんですが、この正方晶の構造を反映しているのでしょう。

マニア度高い、実物インゴット入りペーパーウェイトです。

一番左がインジウムですが、アルミニウムに似た銀白色が確認できると思います。

インジウムイオンは三価の陽イオンで、塩はほとんどの場合、無色のことが多いようです。

硫酸インジウム9水和物は、透明な板状結晶です。

Leitz Photar 50mm F4 (F = 8)/Nikon Multiphot/Nikon D3

インジウム塩の炎色反応は青で知られていますが、写真に撮ろうとすると、なぜか青紫になってしまいます。

これについては納得いかないので、後で撮りなおしましょう。

【地下資源】

インジウムの地下資源としては、鉛亜鉛の鉱石を精錬する際の副生成物として得られます。鉛の精鉱を還元して粗鉛を作るときに、亜鉛鉱石の精錬で出てきたインジウムを多く含む鉛を含ませると、酸化されたドロスが浮いてきて、これがインジウム分を比較的多く含むので回収します。

インジウムを主成分として含む鉱物はほとんど無く、硫化鉱の微量成分のような形で入ってくることがほとんど。

例外がいくつかあり、その一つはアマチュア鉱物コレクターの総帥、故櫻井欽一先生の名前を戴いた櫻井鉱です。

櫻井鉱は、櫻井先生が紫綬褒章を受章された際に献名されたインジウムを含む鉱物です。記載は加藤先生。

写真は巨大なタイプ標本で、右上の緻密な部分(ちょっと緑がかった灰色)が櫻井鉱を含む部分です。怒涛の標本。

櫻井鉱 (sakuraiite), (Cu,Fe,Zn)3(In,Sn)S4, tet.

兵庫県朝来郡生野町生野鉱山金香瀬坑

国立科学博物館蔵、登録番号:NSM-M15843 (タイプ標本)

標本サイズ: 12.6 cm

ゼノサーマル鉱床である生野鉱山のいわゆる輪状鉱の一部分に生じる、インジウムリッチの部分です。

独特の破断面を示す緻密な塊状で、密雑に硫化鉱物が混ざり合っています。

色は黄錫鉱と混じりあったためのもので、純粋な櫻井鉱は、やや緑がかった銀白色。

横の金色は黄錫鉱、閃亜鉛鉱―石英帯を挟んで、下に黄銅鉱が出ています。

日本では豊羽鉱山(北海道)、生野鉱山(兵庫県)をはじめとして、ちらほらとインジウム含量の高い鉱石をかつては産しました。

生野鉱山は鉱量枯渇で、豊羽鉱山は下のレベルに掘り下がるに従い、坑内水の問題と地熱による坑内保安が確保できないために操業を停止しました。

【用途】

ディスプレイ用の透明電極向け ITO(indium tin oxide; インジウムスズ複酸化物) などに用いられることが多く、IT産業にはなくてはならない元素の一つです。

ただ、最近はその有害性のために、特定化学物質扱いをされます。インジウムを取り扱う事業所などは、防護設備を設け、作業者は特定の健康診断を受ける必要があります。