オスミウム

原子量の最も大きい元素は、安定同位元素ではビスマスです。

ところが、密度が最も大きい元素はビスマスではなく、オスミウムとイリジウムがトップ2で、誤差範囲で同じ。

密度は 22.6 g/cm3 もあります。

小さくてもずっしり重く、大変硬い、石のような金属元素です。

日本では、北海道で産し、イリジウムとの合金の「イリドスミン」「オスミリジウム」、ルテニウムとイリジウムとオスミウムの合金の「ルテノスミリジウム」が砂鉱として古くから採取されてきました。夕張のは有名ですね。

白金(プラチナ)とは異なりますが、「砂白金」とされるのは、北海道では大部分がイリドスミンです。

硬くて磨耗に強く、化学的に安定で、紙面上でよくすべるので、万年筆のペン先に好んで用いられたそうです。

それまでは、砂金掘りは捨てていたみたいです。なんともったいない!

写真はオスミウムの貫入三連双晶です。

蒼く、エッジの鋭い、美しい金属結晶。

この結晶を上から見ると、こんな感じです。

切妻屋根みたいな末端を持った四角柱状の結晶が三つ巴で三連双晶を形成し、六角柱状になってます。

パッキングは六方最密なんですが、条線から軸が寝てるのがわかります。柱面が六角形の底面cです。

下の基板なんかツインだらけ。いくつわかります?

これはロシア出身の化学者イワンの作ったオスミウム結晶で、気相成長らしいです。

オスミウムは融点が3000℃以上あって、そう簡単に作れるものじゃないんですが。

四酸化物-金属の平衡を使ってるのかな?

白金族元素のひとつですが、白金やパラジウムに比べて化学反応での触媒能が低く、触媒としてはあまり用いられません。

以前は、四酸化オスミウムが炭素-炭素二重結合をきれいにシス酸化してジオールに誘導できる「オスミウム酸化」がもてはやされました。

が、酸化物は蒸気圧が高くて毒性も高く、触媒で回る反応に置き換えられ、今は脱オスミウムが主流です。

水銀反応なんかと同様ですね。

こういうのって、毒性が高い「危ない」試薬ほど、きれいにイクんだよな。

なお、金属には毒性はありません。

オスミウムの結晶なんてそう簡単には手に入りませんし、写真撮るのも骨なんですけれど。

地下資源では、超塩基性岩に胚胎する白金族鉱床、および、それが風化してできた砂鉱に含まれるものが利用されることが多いです。

以下の写真は北海道鷹泊で得られたいわゆる「砂白金」ですが、化学でいうところの白金(プラチナ)ではなく、オスミウム、イリジウム、ルテニウム系の合金であることが多いです。

北海道は明治期にゴールドラッシュがあり、同時にこういった「砂白金」が得られていたのですが、実はあまり珍重されていたわけでもなく、「バカ」と呼ばれてずいぶん不遇な扱いを受けたようです。万年筆のペン先に使われるようになって、ようやくその価値がわかったようですが。