・下記は文の要素のテキスト例(抜粋)
・品詞と同じく、故意に堅い文体にしている
・品詞のテキストと共に、中学英語では常に携帯していつでも参照できるような状況で授業したい
・余白を多めに作って、教科書で出てきた文などを書き加えていけるようにする手もある
・以下テキスト例
文の要素・文型とは
小学校で「主語」「述語」「修飾語」などの言葉を習うが、そのような、言葉が文章中でどのような働きをしているかの分類を文の要素という。文の要素が分かれば文がどのような構造をしているか分かるので、英文を書いたり読んだりするには文の要素を知ることが大切になる。
日本語においては、「は」「が」「に」などの助詞で文の要素がある程度判断できるが、英語には助詞がない。その代わり、英語では単語を並べる順番と動詞の種類によって文の要素が決定される。例えば
Tom speaks Japanese.
という文ならば、Tomが主語、speaksが述語、Japaneseは目的語(後述)になることが自動的に決定されて「トムは日本語を話す」という意味の文になる。これが
Japanese speaks Tom.
であればJapaneseが主語になり「日本語(日本人)はトムを話す」という意味になる。何を言っているのかわからないが。
今回の場合、このルールはspeaks(speak)という動詞によって決定されていて、speakという動詞が述語になっている場合は「主語+speak+目的語」という構造の文を作ることができる。この動詞によって決定される文の構造の型を文型という。文型は学校(高校)では5種類に分けられるが、日本以外では7つか8つに分けるのが一般的とも言われている。日本語の場合、小学校の国語では
「誰が(何が)―どうした」
「誰が(何が)―何だ」
「誰が(何が)―どんなだ」
「誰が(何が)―いる、ある」
の4つに分けられている。
文の要素
それぞれの文の要素は一つの単語でできているとは限らず、複数の単語の塊が一つの文の要素を表すこともある。
動詞(述語動詞)…verb(動詞)の頭文字を取ってVと表されることが多い。
日本語における述語に相当するが、英語の場合は必ず動詞を用いるので述語でなく単に動詞と呼ばれることが多い。文の結論部分であり、その後に続く文の要素を決定する働きも持つので、英文における最重要要素と言える。
主語…subject(主語、主題)の頭文字を取ってSと表されることが多い。
日本語の主語とほぼ同じで、動詞によって表されるのが誰の動作か、誰の状態かなどを表す。主語と述語動詞はセットになっており、英語の文は原則的に「主語+述語動詞(SV)」のセットで始まる(そこから先は動詞によって異なる)。
主語は必ず名詞、または名詞のように働く語句でなければならない。
目的語…object(目的語、対象)の頭文字を取ってOと表されることが多い。
「食べる」「似ている」などの「何を」「何に」という要素を必要とする動詞が使われた場合、その後ろに「何を、何に」に当たる語句が置かれるが、その語句を目的語という(この「目的」は、日常でよく使われる「達成したい何か」ではなく「向かっていく先」のような意味で、現代語としては「対象」に近い)。例えば、
You resemble your father.
という文なら、主語「You(あなた)」述語動詞「resemble(似ている)」目的語「your father(あなたの父)」となって、「あなたはあなたの父に似ている」という意味になる。このように、英語では「は」や「に」がなくても主語や目的語を明確にできる。登場人物が同じでも「あなたにあなたの父は似ている」という意味にはならない。
このような「主語+述語動詞+目的語」という文の構成をSVOといい(学校英語では「第三文型」と言われる)、この形を作る動詞を他動詞という(それ以外の動詞を自動詞という)
主語と同様に、目的語も必ず名詞、または名詞のように働く語句でなければならない。
補語…complement(補語、補足)の頭文字を取ってCと表されることが多い。
状態やその変化、知覚や認識を表す動詞を用いるときに、その動詞だけでは完全に意味を表すことができない場合、述語動詞の後ろにその意味を補足するための語句が置かれる。その語句を補語という。例えば
John became.
という文があったとして、これを日本語にすると「ジョンはなった」となる。これでは何になったか、またはどうなったかがわからないので、「何に」「どのように」に当たる単語を補わないと文が完成しない。そこで
John became a lawyer. / John became tall.
とすると、主語「John(ジョン)」述語動詞「became(なった)」補語「a lawyer(弁護士)/tall(背が高い)」となって、「ジョンは弁護士になった/ジョンは背が高くなった」のような意味の文になる。
このように、補語は名詞の場合と形容詞の場合がある。
今回の例のa lawyerやtallは主語についての説明になっているので特に主格補語ということがある。他に目的格補語というのがあるが、今回は扱わない。
このような「主語+述語動詞+(主格)補語」という文の構成をSVCという(学校英語では「第ニ文型」と言われる)。
また、このように補語を必要とする動詞を不完全動詞と呼ぶこともある。
修飾語…modifierの頭文字を取ってMと表されることが多い。
文を完成させるのに必要な要素は原則必須である主語・述語動詞と、動詞によって必要となる目的語・補語(と、後述する副詞類)だけだが、完成している文をより詳しくするために情報を追加したいことは多い。例えば
Five young boys practice baseball.
S V O
という文は主語five young boys(5人の少年)+述語動詞practice(練習している)+目的語baseball(野球)という構造で「5人の少年が野球を練習する」という意味になるのだが、これでは文として完成していても何を伝えたいのかよく分からない。そこで「いつ」「どこで」「どのように」のような情報を付け加えることができる。
Five young boys often practice baseball in the field.
S M V O M
「often(よく、しょっちゅう)」、「in the field((その)グラウンドで)」を付け加えることで、「そのグラウンドで5人の少年がよく野球を練習している」と、内容がより詳しくなる。これらの付け加えられた語句を修飾語という。
修飾語はあくまで文に情報を付け加える役割なので文の完成・未完成には関係しない。しかし、文のどこに置くかについては大まかなルールがある。詳しくは後の文法で扱われる。
細かく言えばこの文のfiveやyoungも修飾語(boysを詳しくする形容詞)なのだが、このような修飾語の付いた名詞や形容詞はまとめて主語・補語などとして扱ってしまうことが多い。上記のように独立した文の要素として修飾語と扱われるものはほとんど副詞である。
修飾語や副詞類(後述)として働く副詞を作るには前置詞というもの(上記の文だとinのこと)の働きが重要になるが、複雑になるのでここでは扱わない。
副詞類…adverbial(副詞に相当するもの)の頭文字を取ってAと表される。従来の学校英文法では修飾語として扱われる。
例えば
I stay in Tokyo.
という文は、主語I(私は)+動詞stay(いる、滞在している、泊まっている)+in Tokyo(東京に)という構造で「私は東京にいる」という意味になる。このin Tokyoは場所を表す副詞であるが、これを学校英文法では修飾語として扱い、文の要素は主語と述語動詞だけだとしている(第一文型と呼ばれる)。しかし、
I stay.(私はいる)
だけでは情報が不足しており、完成した文とは言い難い。そのため、stayは文の要素として場所に関する情報を要求してくる動詞であると考えるほうがよい、という立場もある。この立場だとin Tokyoは文の要素であるが、副詞なので目的語でも補語でもない。そこでこのような文の要素を「副詞類(advervial)」として扱うことにしている。
このような「主語+動詞+副詞類」という文の構成をSVAという。
※ 副詞類の概念を導入した場合でも、SVのみという文型がないわけではない。例えば
Bob died in Tokyo.(ボブは東京で死んだ)
という文ならば、主語Bobと動詞died(死んだ)だけで文が完成しており、in Tokyoは追加情報であって文を完成させるのに必要な要素ではないので、この場合のin Tokyoは副詞類(A)でなく修飾語(M)である。
このような主語+動詞のみの文の構造をSVという。学校文法では第一文型と呼ばれる。副詞類と修飾語は(共に原則副詞であるため)見かけ上はよく似ているので気をつけよう。ただし、副詞であるということだけ分かっていれば区別できなくてもさほど困ることはない。
SVやSVAのような構造を作る、目的語も補語もいらない動詞を完全自動詞と呼ぶことがある。
発展:興味のある人は読んでみよう。特に中2や中3はぜひ読もう。気になる点や疑問点は質問しよう。
ここまでに登場した文型(SV、SVO、SVC、SVA)の他にも、英語には以下のような文型があるので簡単に紹介しておく。
SVOO(学校では「第四文型」)
動詞によっては、二種類の目的語を必要とすることがある。
例えば、
Tom bought a pencil.(トムは鉛筆を買った)
は、完成された文(SVO)であり、buy/bought(買う、買った)という動詞は「a pencil(鉛筆を)」という目的語を取っている。が、この動詞は「何を」だけでなく「誰(何)に」という目的語を取ることもできる。
Tom bought the girl.(トムはその女の子に買った)
しかし、これでは文が完成しない(完成した文と見ることも可能だが意味に若干の倫理的問題が生じる)。そこで、この場合もやはり「何を」という目的語が必要になる。
Tom bought the girl a pencil.(トムはその女の子に鉛筆を買った)
これで完成した文になる。この文はTom(主語)+bought(動詞)+the girl(目的語)+a pencil(目的語)という構造をしているのでSVOOと呼ばれる。
「誰に(何に)」にあたるthe girlの方を間接目的語(indirect object、IO)、「何を」に当たるa pencilの方を直接目的語(direct object、DO)と呼ぶことがある。SVOのOはDOであるが、IOとDOの名称はさして重要ではない(区別はできたほうがよい)
順序はIO+DOの順だが、動詞の目的語としての印象はDOの方が強い。すべての英文の基礎であるSVから始まり、Vの種類によって「買った?何を?」というところからDOのa pencilが出てくる。そして、一部の動詞は「誰がそのDOを手に入れたのだ?」という情報を文型に組み込むことが可能となっており、それがIOである。だからIOはVの目的語というよりDOの附属情報といった趣が強いかもしれない。
SVOC(学校では「第五文型」)
一部の動詞は、目的語について「状態などを操作する(~にする、~のままにする、~に変える、など)」「識別する(~と呼ぶ、~と名付ける、~とわかる、~とみなす)」などの働きを持っている。例えば、
I call Tomas.(私はトーマスを呼ぶ)
I found this book.(私はこの本がわかった)
だと、なんと呼ぶのか、どうだとわかったのかの情報がないので(この意味では)文が成立しない(※)。なので
I call Tomas Tom.(私はトーマスをトムと呼ぶ)
I found this book interesting.(私はこの本が面白いとわかった)
のように、目的語のあとに「なんと呼ぶか」「どうであるとわかったか」の情報を付け加えることで文が完成する。この付け加えられる要素(名詞または形容詞)は補語の一種だが、目的語についての情報を付加する補語なので特に目的格補語という(SVCで出てきたのは主語を補足するので主格補語という)。
このような「主語+動詞+(直接)目的語+(目的格)補語」という構成をSVOCと呼ぶ。また、この文型になる動詞を不完全他動詞と呼ぶこともある。
目的格補語は目的語に情報を付加するので、上記の例ならOとCの間に
Tomas is Tom. トーマスはトムだ。
this book is interesting. この本は面白い。
のような関係が成り立っている。このように、SVOCのOとCの間には主述の関係が成り立つ。あくまで意味内容上の関係であって実際に文(節)が成立しているわけではないので、このOをCの意味上の主語ということがある。
例えば、中3では
I want you to go there. 私は君にそこに行ってほしい。
S V O C
というような文が登場するが、このyou「君」と to go there「そこに行く(こと)」には
You go there. 君はそこに行く。
という関係が成立している(toについてはあとまわし)。それにより、「君がそこに行く(こと)」をwant「欲する」している→「君にそこに行ってほしい」というような解釈ができるようになる。このことは特に高校入学後非常に重要になるので頭に入れておこう。
※callには「呼び寄せる、電話する」、foundには「見つけた」「設立する」の意味もあるので、その意味であればSVOになって文が完成する。文型は動詞によって決定されるが、「この動詞はこの文型」と完全に固定されているわけではなく、同じ動詞でも複数の文型を作ることができて、それによって文の意味が異なってくる。反対に、文の構造から「この動詞はこの意味で使われている」という判断をすることも多い。
SVOA
My father took me(私の父は私を連れていった)…どこに?
「置く」「連れていく」などの「何かを動かす」系の動詞は「何を」を目的語にするが、「どこに」のような情報は副詞なので目的語にはならない。しかし、上記のような文は明らかに情報が足りず完成した文とは言い難い。そこで、
My father took me to the hospital.(私の父は私を病院に連れて行った)
のようにすれば文が完成する。このto the hospitalは副詞なので、日本で主流の五文型では修飾語として扱われる(この文はSVOに分類される)が、SVO部分だけでは文が完成していないとも考えられるのでto the hospitalを副詞類と扱ってSVOAという文型を作るとする考え方もある。
また、SVOOの項で登場した
Tom bought the girl a pencil.(トムはその女の子に鉛筆を買った)
という文は、まず
Tom bought a pencil(トムは鉛筆を買った)
とSVOの文を完成させておき、
Tom bought a pencil for the girl.(トムはその女の子のために鉛筆を買ってあげた)
と情報を付け加える形になることがある。これで、事実関係としてはもとのSVOOの文とほぼ同じになる(もちろん全く同じではなく、主にニュアンスにおいて若干の違いは出る。詳しくは中2の「情報構造」で)。
buyを「買ってあげる」という意味にするときには、このfor the girlを「無いと文が成立しない文の要素」とみなすことができる。その場合、この文はSVOAになる(SVOOとはみなせない。なぜだか考えてみよう)。一方、SVOですでに文は完成しており副詞句のfor the girlはあくまで修飾語だとすればSVO(+M)という構造になる。この辺は解釈の違いなので何が正解ということはない。
(ただし、SVOAを採用している体系の中でこの文をSVOをみなすのは無理があるかもしれない)
文型は文を解釈するために英文を幾つかのパターンに分けたもので、英文全体を体系的に網羅していくためにどう分けるのが良いかについては色々な考え方があるし何が一番良いとも言えない。
ただ、日本では五文型が主流で学校・塾の指導や教科書・学参などもそれに基づいている場合が多いので、日本で英語を学ぶなら五文型については理解しておいた方がよい。とは言え、五文型では釈然としない文のタイプが残るのも確かなのでこのテキストと今後の指導ではSVAとSVOAも採用している。
しかし、それは「五文型より七文型のほうが正しい・優れている」という意味ではないし、「この文はどの文型か」というところに拘るのもあまり意味はない。大事なのは文の構造を捉えて何を意味するのか把握することであってそれぞれの文の構造に名前をつけることではない。
最終的には各学習者が「自分にとって最も都合のいい文型」を開拓・改善していくのが望ましいだろう。五文型や七文型はあくまで初学者のために提供されるそのサンプル・叩き台である。
(引用終わり)
・中3あたりの生徒が、長文読解中に未知の英単語に遭遇した時にいきなり英和辞典を引いて一番上に出てきた日本語を強引に当てはめるような訳し方をしていたら指導者の負け
・英文は構造を、英単語は文中での機能を考え把握することが大事になるが、一般的な中学生はどちらも日本語に直したときの字面にばかり注目してしまう
・「英文は構造、単語は機能」という呪文を繰り返し唱えて生徒に刷りこんでいきたい