・テキストのサンプル
・自学用ではなく授業で用いるもの
・なので、もう少しわかりやすく噛み砕いて説明する前提になっている
・例文や具体例も授業中に追加していく
・図なども適宜追加される前提で
・以下テキスト
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前置詞について
前置詞(preposition)は日本語の付属語(助詞など)のように単独ではあまり意味をなさない品詞で、通常はin Japanのように名詞が後に続き「前置詞+名詞」のかたまりで(名詞の前に置かれるから前置詞という)主に副詞、ときに形容詞、まれに名詞などの働きをする。
前置詞の後に置かれる名詞も動詞の場合と同じく目的語とされるので(特に「前置詞の目的語」というときもある)、人称代名詞の場合はwith me、around usなどのように目的格を用いる。
前置詞も英単語なのでそれぞれ固有のイメージを持っているが、実際には同じ前置詞がかなり幅広く使われてそのイメージだけで文中での機能や訳を判断したり適切な前置詞を使用したりするのは難しい。実際には前置詞ごとに文中で果たす機能・それぞれの日本語訳・よく使われる熟語などをいくつか覚えていく必要が出てくるだろう。ただし、それらをその前置詞の中核的なイメージと結びつけていくのは前置詞を理解する上でとても役に立つはずだ。
一度にすべての機能や訳し方を身につけるのは不可能なので、出てくるたびに確認する癖をつけよう。その積み重ねでしか前置詞は身につかない。
・前置詞+目的語が副詞になる例 副詞なのでAやMになる。
I live in Japan. 私は日本に住んでいる。 ※Aになっている例。
I came to Japan in June. 私は6月に日本に来た。 ※Mになっている例。時・場所・理由・方法などを表せる。
・前置詞+目的語が形容詞になる例 形容詞なので名詞を修飾したりCになったりする。
People in Japan eat rice. 日本の人(日本の中の人)は米を食う。 ※people(人々)を修飾している。名詞を修飾する場合はこのように修飾される名詞(被修飾語という)の後ろに置く
He is in danger. 彼は危険な状態にある。 ※補語になるケースはあまり多くない。文型をSVとして修飾語扱いにする解釈もある
in、onなど主要な前置詞の多くはin「中へ」のようにそれ単体でも副詞としても用いられ、その場合は目的語を必要としないが、基本的なイメージは前置詞のときとあまり変わらない。形容詞になったりするものもあるが、さほど気にしなくてもよい。
主な前置詞
in
inは目的語に(空間的・時間的・概念的に)ある程度の広さをイメージしているときに用いられ、「その内部のどこかにある」という状況・状態を表す。「~の中に、中で」、あるいは単に「~に、~で」のような訳が一般的だがそれでは意味の通りにくいときもある。状況を把握して適切な訳を考えるのが基本だが、困ったら「~において」「~における」と訳しておくとそれっぽくなる場合も多い。
場所を表すときの目的語はある程度の広さを持った空間で、時を表すときの目的語は年・月(・週)・午前午後など(※)
副詞の場合でもイメージはほぼ同様だが、「中へ」のような動的イメージを伴いやすくなる。
live in Canada カナダに住んでいる(場所を表す)
leave in the morning 午前中に出発する(時を表す)
be in good health 健康である(状態を表す。補語になれる用法)
men in black 黒服の男たち(身につけているものなどを表す)
※空間の広さや時間の長さは数字でいくつ以上ならin、というものではなく「話し手のイメージ」に依存する。例えば同じ東京でも居住する場所としては十分広い(in)が、世界地図上では点(at)に近い。このように話し手が目的語をどういうイメージで捉えているかによって前置詞は変化する。日付や曜日にはonが普通だが、それより狭いはずの午前や午後がinになる理由なども考えてみるとよい。
on
中核となるイメージは「平面にくっついている」という感じ。inの目的語が空間のイメージなのに対し、onの目的語は面のイメージになり、それに何かが接触している状況を表す。面上に乗っているということで「~の上に(で)」「~に基づいて」などと訳されることが多い。また、時を表す場合はinより狭い場合が多く、日付・曜日(・週)・(特定の日の)午前・午後などが目的語になる。
a clock on the wall 壁にかかった時計(鉛直の面でも接触していればonを用いる)
go back on Tuesday 火曜日に帰る(時を表す)
on my way home 家に帰る途中で(動きのある行為の途中を表す)
on arrival 到着してすぐに(同時または直後であることを表す)
at
空間の中でも面との接触でもなく、単に座標を表すような前置詞。「点」のイメージと言ってもよい。「15歳のときに」のような場合、期間は一年間あるがイメージとしては数直線上の一点に近い。このようなときにatが用いられる。訳し方はinのように「~に、~で」のようになることが多い。時を表す場合は時刻が目的語になりやすい。
arrive at Tokyo 東京に到着する(場所の一点を表す)※東京を広く感じていればinを使う
get up at seven 七時に起きる(時を表す)
at the age of 20 20歳で(時系列上の一点を表す)
look at Tom トムの方を見る(空間上の一点を表す)
be at a loss 困って(状況を見失って)(立場を表す)
by
対象物(目的語)に接近したイメージを与える前置詞だが、そこに結びつけづらい用法も多い難敵。そのまま距離が近いことを表したり(~のそばに(で))、方法・手段を表したり(~によって(する))、行為者を表したり(~によって(される))、程度・差や限界を表したり(~までに、~ずつ)と多岐に亘るので気をつける必要がある。
a house by the sea 海のそばの家(接近したイメージ)
go by bus バスで行く((交通)手段を表す)
written by Shakespeare シェイクスピアによって書かれた(動作主を表す)
by the end of this month 今月の終わりまでに(期限を表す)
sell by the dozen ダースあたりで売る(程度・単位を表す)
older by three years 三歳年上である(差を表す)
for
「目的語の方に向いている」という状況を表す。物理的にその方向を向いているというだけでなく、心理的にそちらを向いているということもある。そこから、「~に向かって」「~(人など)のために」「~(理由・目的など)のために」「~にとって」などの意味を表す。また、向いている先と自分の位置を行き来するイメージから「探す」「交換する」のような動詞とセットで使われることもある。
leave for Tokyo 東京に(向けて)出発する(方向を表す)
good for the health 健康(のため)によい(利益・目的を表す)
look for a job 仕事を探す(目的・目標を表す)
a substitute for butter バターの代用品(交換を表す)
too difficult for me 私にとって難しすぎる(関連を表す)
from
物事の起点を目的語にして「~から」という意味を表す。物理的な起点だけでなく順序や物事の始め全般に用いられ、日本語の「~から」にかなり近いが、区別を表す言葉とともに用いられることもある。中学では「~出身」とされることが多い。
come from the US アメリカ合衆国から来ている ※中学では「アメリカ合衆国出身」と訳される
from A to Z AからZまで(fromが始点、toが終点を表す)※「最初から最後まで」という慣用句
made from wood 木で(木から)作られている(変化前の状態を表す)※紙など、木材の原型を留めていない場合
tell right from wrong 善を悪と区別する(距離が空いているイメージ)
like
動詞「好む」とは別の単語。目的語は例示する何かで、「~のような」「~のように」と訳すことが多い。前置詞の中ではわかりやすい方なので、動詞と間違えないようにだけ気をつけよう。
What is it like? それはどんなものですか(何のようですか)※likeの目的語はwhatである。
speak like politicians 政治家のように話す
of
何かがそこに属している、あるいはもともと属していた(が離れた)ことを表すが、この「属している」はかなり曖昧で関係がイメージしづらい用法も多い。「~(所有者、行為主)の」という訳が多いが、「~に関して」「~という」という訳になったり、分離を表す単語とともに使われたりする。かなり幅広く使われ、中核イメージとの関連付けも難しいことがあるのである程度は暗記に頼る必要もある。
また、所有的なニュアンスからか、目的語が人称代名詞のときは所有代名詞になることがある。
queen of hearts ハートの女王(ハートという集合に属しているクイーン、というイメージ)
the novels of Soseki 漱 石の小説(誰が書いたのか(行為主)を表す)
discovery of America アメリカ大陸の発見(何に関することか、を示す)
a friend of mine 私の友達の一人(aとmyを同時に使えないのでこう表現する。meでなくmineなことに注意)
the city of Kyoto 京都という都市(同格関係を表す)※「同格のof」
deprive Tom of his money トムから金を奪う(Tomとhis moneyを分離したことを表す)※「分離のof」
made of wood 木で作られている(製品と材料の所属関係を表す)※机など、木材の原型を留めている場合
to
forと同じく方向を意識させる前置詞だが、そこに向かって移動していく感じや向かい合っている感じを表すこともある。また、方向はともかく(意識的に)何か紐のようなもので繋がったイメージになることもある。「~へ」「~に」「~まで」のような訳が多い。forがどちらかというと(終点の方を向いているだけで)始点に意識があるのに対し、toは終点の方に意識があることが多い。
go to school 学校へ行く(goの目的地、どこと繋がっているかを表す)※このschoolは通例無冠詞
from A to Z AからZまで(始点を表すfromに対し、toが終点を表す)※「最初から最後まで」という慣用句
important to me 私には大事である(importantとmeが紐付けられているイメージ)
face to face 向かい合って(向かい合っているイメージ)
something to see 見るべきもの(something(何か)とseeが紐付けられているイメージ)
※目的語が名詞でなく動詞の原形になるtoだけの特殊な用法。to不定詞と言われる。詳しくは中2で
with
「付帯状況」を表す。その場に何があるのか、どのような状態であるのかを示す言葉が目的語になる。中学では「~と一緒に」と訳されることが多い。他に「~しながら」「~(道具)で」といった意味になったり、比較や混合を表す単語とともに用いられたりする。
対義語としてwithoutという前置詞もあり、「~がある」状態を表すwithに対して「~がない」状態を表す。
run with my dog 犬と一緒に走る(中学では最も一般的な用法)
talk with a foreigner 外国人と話す(「一緒に」としないほうが自然な例)
a girl with blue eyes 青い目の女の子(状態を表す)
write with my pen ペンで書く(ペンを持った状況で書くというイメージから)※「道具のwith」
compare Tom with John トムをジョンと比較する(比較などを表す)
have no money with me 手元にお金がない(haveは所有しか表さないので手元にあるかどうかを表すときの表現)
with ease 簡単に(「簡単さがある状態で→簡単に」。抽象名詞を副詞化する用法)
あとは
before「~の前に」 after「~のあとに」
under「~の下に」 above「~の上に(上方に)」
near「~の近くに」 until「~まで」
since「~以来」 during「~の期間中」
などが中学で出てくるが、このへんは前置詞としては比較的わかりやすい方なので代表的な日本語訳を知っておくだけでもある程度どうにかなる。基本的な前置詞ほど難しいので気をつけよう。