動詞は主語や時制によってhas、hadのように形が変化する。これを(時制による)限定を受けるという。
しかし、動詞の時制には現在形と過去形の二種類しかないため(「未来形」は動詞の形としては存在しない)、それだけでは表現の幅が狭い。「…している最中だ」と動詞の行為が実行中であることを表したり、「…してしまった」「…したことがある」と以前の行為や状態を振り返るなどのバリエーションは現在形と過去形だけでは作れない。そのために、英語では時制(tense)と相(aspect)を組み合わせて表現することがある。相には進行相(「…している最中だ」)と完了相(「…してしまった」「…したことがある」など)の二種類があり、これと時制(現在形、過去形)の組み合わせで「現在時制の進行相」「過去時制の進行相」「現在時制の完了相」「過去時制の完了相」という2×2=4通りの新たな表現が可能になる。
しかし相というのは学校ではまず聞かない耳慣れない言葉になるのでここでは使用を避け、一般的な文法用語に合わせて「現在時制の進行相」を現在進行形、「過去時制の進行相」を過去進行形と呼ぶことにする。ただし、これらの「形」は現在形や過去形の「形」とは若干趣が違うのだということを覚えておきたい。
また、完了相もここで一度に扱いたいところだが、進行相に比べて少し難しいのと、教科書では中3や高校での扱いとなるため、ここでは軽く紹介するに留めて詳しい話は先送りとする。
動詞には今までに学んだ原形・現在形・過去形の他に現在分詞・過去分詞と呼ばれる2つの形がある。これらがどのような機能を持つのかを一言で言うのは難しいが、現在分詞は「発生しているが未完結」という進行中のイメージを持ち、過去分詞は「既に終わっている」という完了的なイメージを持つ。現在分詞・過去分詞という名称は時制とは直接関係はないが、こういったイメージと関連しているのかもしれない(※)。
現在分詞は動詞の原形にingをつけた形で表される(being、playingなど)が、語尾によって微妙に違うときもある(cut→cutting、take→taking、die→dyingなど)。過去分詞は過去形と同様にdやedをつける。不規則に変化するものもある(過去形と同じ形とは限らない)が、ここでは詳しく扱わない。
進行形や完了形はこの現在分詞や過去分詞を使って表現するが、現在分詞や過去分詞は動詞が変形した形でありこれ以上は限定を受けて形を変えることができない(「eatinged」などは無理)。そこで「限定を受ける役割」の別の単語が必要になり、進行形ではbeが、完了形ではhaveがそれぞれ用いられる(このbeやhaveが何であるかは助動詞の項で詳しく扱う)。これらの単語が限定を受けて時制を表すことにより現在進行形と過去進行形を表すことができる。
My dog is sleeping in my room. 俺の部屋で犬が寝ている(最中である)。(現在進行形)
I was having dinner then. 私はその時夕食を摂っているところだった。(過去進行形)
文型を考えるときはbe+現在分詞をまとめて述語動詞と捉えたほうがわかりやすいだろう。訳し方としては「~している」が一般的だが、「~している」は状態や習慣的動作(「毎日野球をしている」など)も表すので「している最中」「しているところ」などと訳すと意味がはっきりしやすい。また、「している」という訳からも分かるように、「動作の動詞を状態化している」というような見方もできる。
進行形は「動作が行われている最中」を表すので、学校ではnowやthen、at the moment、when節(詳しくは接続詞の項で)などの「瞬間的な時間の一点」を表す副詞と共に使われやすい。ただし、「nowやthenがあったら進行形」という考え方は非常に危険なのでやめよう。ネイティブの現在進行形にはnowはあまりつかないという人もいる。
「動作が行われている最中」と度々書いたが、進行形になるのは述語動詞が動作動詞のときだけである。liveやlike、knowのような状態動詞は原則として進行形にならない。動作動詞と状態動詞には紛らわしいものも多いので注意。状態動詞を見かけたら「住む」ではなく「住んでいる」のように「する」ではなく「している」と覚えるようにしておこう。例文のhaveは基本的に状態動詞だが、「(食事などを)摂る」の意味では動作動詞なので進行形になっている。
また、現在分詞が流動的なイメージを与えるからか、進行形には以下のような用法もある。
・反復的動作
Bob is always complaining. ボブはいつも文句ばかり言っている。(現在形よりも語り手にとって反復感が強い)
・近い確定的な未来
I am going to Tokyo tomorrow. 明日東京に行くことになっています。
・瞬間的な動作の開始や変化中
The man is dying. あいつ死にかけてるぞ
begin(始まる)やdie(死ぬ)などの動詞は一瞬のことで「動作をしている最中」がないが、その変化が起きつつある
状況を進行形で表すことができる。この場合、厳密にはdieはまだ起きていない。
・迷いがある
I am thinking about it. それについては考え中です。
think、believeなどは「こう考え(信じ)ている」という意見を伴う状態動詞だが、その意見が定まっていないときは(状態動詞だが)進行形を用いることがある。「私はこう考えている」なら現在形で現在進行形ではない。
・「その時だけ」の感じ
I’m working hard today. 今日は(いつもと違って)頑張ってるよ
※現在分詞・過去分詞はそれぞれpresent participleとpast participleの訳語だが、誤解のもとにもなりうるので「現在・過去」の部分はあまり気にしない方がよい。実際、この用語を用いない専門家もいる。現在分詞のことを「ing形」と呼ぶ中学生も多いが、別にそれでもかまわない。ただ説明が通じないのは困るので、「現在分詞」という言葉とそれが何を指しているのかは覚えておいてほしい。