・絶対値について
・中学数学における絶対値はおそらく大小関係と正負の計算の導入のためだけに入っている
・その導入も実際に行う作業を無理やり文章にしたような甚だ分かりづらく直感性のないもので、それに沿って教える妥当性が乏しい
・中学ではその後絶対値が登場することはなく、生徒は数Ⅰで久しぶりに再会することになる(そして死ぬ)
・数学の理解という点で言えば中学で絶対値を扱う合理性はほとんどなく、高校生になってから扱うのが妥当と思われる
・とはいえ、定期試験や入試で出題される問題パターンもあるので全く無視するのは難しい
・中1において絶対値は「符号を外した数」と表現されることが多い
・生徒によっては「絶対値は正でも負でもない数」と誤認して絶対値に+符号をつけるのが誤りだと思っている場合もある
・「絶対値は正でも負でもない数」と言い出す教諭やテキストも存在する
・そのような生徒は、外すべき符号がついていないため「5の絶対値は」で手が止まったりするので判別できることがある
・このような誤認により、|-x|をxだと思いこんでしまって解説を読んでも全く理解できず高1早々で数学に苦手意識を持ち始めたりする要因になっている
・が、絶対値は(負だと逆符号になるが正はそのままという点で)非対称な印象を強く与えるので、冒頭から正と負を対称的に扱い続けた中1生には腑に落ちづらい概念ではある
・「正でも負でもない無符号の数」という認識はこの非対称性を解消してくれるので生徒は余計そこに落ち込みやすい
・気をつけて指導したとしても、ここまでで正と負を全く対称的に扱わないのは難しいので、ここが最初の難関になる
・「原点からの距離」「方向などのない大きさ」ということを強く念押しして、場合によっては最初に戻って「正の数が何を表すか」から説明しなおしても良いだろう
・中学数学「のみ」を考えた場合は、「正でも負でもない無符号の数」と認識させておいてもデメリットはさほどなく理解も問題演習もスムーズに進むだろうとは思われる
・数の大小関係について
・大小関係そのものは普通に指導していれば特に難しいところも誤解を誘発しそうなところもさほどない
・「負の数のときは大小関係が逆になる」のように「覚えて」それで処理するのはあまり好ましくない
・どう教えても機械的に処理する子は出てきてしまう
・負の分数(特に分母の異なるもの)などになると速度と正答率がふつう下がるが、その落差が極端に大きい子は怪しい。基本通り数直線に基づいて考えさせたい
・特に中間層や下位層の生徒の場合、頭のなかで数直線を描くのがまだ難しいので描けるようになるまでは実際に数直線を描いて確認する癖をつけさせたい
・「-3.2以上の整数のうち最も小さいものを求めなさい」というような問題は初見で解けない子が目立つ
・そもそも問題文の意味が分かっていない、状況が把握できていないために解けない場合が多い
・「問題文をよく読んで意味を考える」「数直線を活用する」という観点ではよい練習になる
・声掛けは「問題文をよく読もう」「数直線を利用しよう」というあたりまでで、具体的な操作はできるだけ教えたくない