腹長♂31.2~33.5mm、♀31.9~35.6mm、後翅長♂34.80〜36.90㎜、♀34.90〜38.30㎜。体は、明瞭な斑紋がなく、脚も含めて一様に緑味のある橙褐色。未熟個体の体色は、体・翅ともに、成熟個体よりも鮮やかなオレンジ色である(久松・武智、2012、2014;久松ほか、2018)。
主に平地から丘陵地の、開放水面があり、池干しを秋以降に行うため池周辺に生息する(久松ほか、2018)。羽化は夜間に、池の岸に生えているキシュウスズメノヒエやヨシ等に捕まって行われ、6月初旬~8月下旬まで続く。未熟成虫は、ため池周辺の草地に数日間留まるが、1週間以内にはため池周辺から移動する。夏場の生息場所は、谷筋や山頂・山腹など比較的涼しい場所で過ごしていると予測されるが、採集・目撃記録は極めて少ない。県内では未熟成虫は、標高1,000m前後の山の山頂付近や山腹で数例のみ確認されている。9月初旬頃、ため池に交尾・産卵の為に集まる。交尾は午前中にため池堤体の草地などで行われる。産卵は主に午前中、連結した状態で水際の水面か砂泥に腹端を打ち付けて行われる。稀に、♀単独での産卵や、水際から離れた沖合の水面に産卵する様子も観察される。夜間は、ため池周辺の堤体草地や水田の稲穂、放棄果樹園などで休止する。12月初旬には死没する(久松・武智、2014;久松ほか、2018)。
朝鮮半島、中国、ロシア:日本(北海道、本州、四国、九州)(久松・武智、2014;久松ほか、2018)。国内では青森、大阪、兵庫、広島、香川、愛媛、高知、大分の8府県から確認情報が得られている(宮崎、2017;中国新聞、2018)。
四国中央市、西条市、今治市、松山市、東温市、砥部町、松前町、伊予市、内子町。
全国的に希少種であるが、その減少要因として以下のことが考えられる。水際の砂泥・水面に産卵するという本種の習性から、ため池が護岸されることによって、産卵場所が減ったことや卵の孵化が難しくなったこと、羽化時に利用する岸辺の植生が減ったことが挙げられる。その他、護岸によりため池決壊の恐れが減少したことや水田への利用の減少により、池干しという水管理をしなくなったことにより、水質の悪化や産卵場所となる砂泥の露出が減ったこと、等が挙げられる。
中国新聞(2018)東広島にオオキトンボ 県内初.
久松定智・武智礼央 (2012) トンボ目. レッドデータブックまつやま2012 松山市における絶滅のおそれのある野生生物. 松山市環境部. 256 pp.
久松定智・武智礼央(2014)トンボ目.愛媛県レッドデータブック2014 愛媛県の絶滅のおそれのある野生生物.愛媛県県民環境部環境局自然保護課. 623 pp.
久松定智・武智礼央・村上裕・黒河由佳・松井宏光(2018)絶滅危惧種オオキトンボ(トンボ目,トンボ科)の発生消長調査.愛媛県立衛生環境研究所年報,(19): 23-27.
宮崎俊行(2017)オオキトンボ部会2016年活動報告.Pterobosca,(22)B,41-42.
オオキトンボ♂縄張り
愛媛県内 2010年10月10日 武智礼央撮影
オオキトンボ連結
愛媛県内 2010年10月10日 武智礼央撮影