被災時、離れ離れになっている家族と連絡が取れて安否が確認できることは大変重要です。しかし、固定電話の有無や、家族がスマホを使いこなせるかどうか、などは家庭によって異なるため、被災時の連絡方法は各家庭ごとに決めておく必要があります。
その際、多様化された昨今の通信手段の中で、被災時にどの通信手段が有効なのかは、予測できませんので、複数の連絡方法を練習して、利用できるようにしておくことが重要です。以下、連絡方法決定の参考のために、代表的な連絡方法について説明します。
なお、いずれの方法も被災直後は通信が殺到してつながらないことが予想されます。したがって、むやみに連絡を取り続けると、スマホでは、バッテリーの消耗などにつながります。
◇ 音声で連絡
・ 固定電話やスマホでダイヤル発信する方法。ただし、被災直後は、通信規制がかけられるので、音声回線は極めてつながりにくいと予想される。
・ 公衆電話からの発信は規制されないので、利用してみる価値はある。(ただし、相手が被災地にいるとつながりにくい場合がある。被災地から被災地外への電話はつながりやすいという説がある。よって、遠方の親戚や友人を連絡拠点とするのは一案かもしれない。)
また、LINE などの SNS でも、音声通話は可能であるが、ネットが大渋滞となるのでリアルタイムの通話は困難かもしれない。
◇ 文字で連絡
・LINE などのSNS
・ショートメール
・電子メール
文字通信は音声通信よりはつながりやすいが、大幅な遅れがあるかもしれない。また、見かけ上発信されたように見えても、通信回線のトラブルなどで、相手に届いていない場合があるので要注意。
ただし、これら平時と同じ方法は、回線の大渋滞の原因となるので、通信会社は下記の災害用伝言サービスの利用を推奨している。(特に動画の送受信やビデオ通話は混雑を悪化させる)
通信会社が、災害時用に提供するサービス。一般の通信より優先される場合があるので、災害時の連絡方法の第一選択肢である。以下の①~③のサービスがある。
◇ 音声で安否を連絡
電話通話で171番にダイヤルをして、音声を録音したり、聞いたり(再生したり)することができる。録音や再生は、電話番号を ID として行われるので、ID として使用する自宅の電話番号または家族の誰かの電話番号を1つ決めておいた方が良い。
一度に録音できる時間は30秒と短いため、安否の確認、今いる場所、これからどうするかを簡潔に録音する。原稿をあらかじめ作成しておくと良い。登録件数は最大20件(災害規模により異なる)。
◇ 文字で安否を連絡(伝言板)
② web171
web ページ( https://www.web171.jp )(または、web171 「検索」で)にアクセスして、100文字以内で伝言板に書き込み、読み出しができる。書き込みや読み出しは、電話番号を ID として行われるので、ID として使用する自宅の電話番号または家族の誰かの電話番号を1つ決めておいた方が良い。webページなので、PCでも利用できる。
web171の文字情報は、171で音声として聞くことができる。また、171で録音した音声もweb171で聞くことができる。
書き込み文字数は最大100文字。登録件数は20件。
③ 各通信会社独自の災害用伝言板
各通信会社によって違いはあるが、基本的には、自分のスマホの電話番号の掲示板に伝言を記入できる。他人(家族や友人)は、災害用伝言板アプリや web171から読み出しできる。利用方法はweb171より簡単であるが、他人はこの掲示板に書き込みはできず、また、電池切れなどで自分のスマホが使えない場合には、自分の電話番号に伝言登録できない。
スマホでは、各通信会社の災害用伝言板と、web171 の両方を使うことができる。家族内で事前の取り決めをしておいたほうが良い。
◇ その他のサービス
LINE では、大規模な災害が起こった際に、ホームタブに赤枠の「LINE安否確認」が出現し、これをタップするだけで家族や友だちに状況を共有することができる、らしい。また、Googleでは Personfinder というシステムがあって人探しに利用できる、らしい。これらのサービスは、回線の大混雑下で、うまく動作すれば良いが、信頼性としては、通信会社の提供する上記伝言サービスが優れていると考えられる。
※ 171 や web171 を使用する場合は、IDとする電話番号 (固定でもスマホでも可)を一つ決めておいて、家族で共有しておくと良い。
※ どの連絡方法が被災時に利用できるかは不明なので、複数の連絡方法を家族で練習しておくことが望ましい。例えば、スマホがつながらなくても、公衆電話が利用できる場合は「災害伝言ダイヤル 171」を利用して安否を伝えることができる。決して「LINEを使えば大丈夫」と決め込んで安心してしまわないこと。
※ 以前、「 J-anpi」というシステムがあったが、通信各社の災害用伝言板で相互検索が可能となったので、現在はサービスを終了している。
※ 171、web171、各社の災害用伝言板は、毎月1日と15日(および正月3ヶ日、防災週間)に体験できますので、ぜひ一度使ってみてください。
(1) 自分のスマホ、および家族のスマホが使用でき、回線状況も良くてLINEが使えるのなら、普段使い慣れている、LINE などのSNS の利用が便利かもしれない。
(2) LINE など、普段使用している SNS が良好に動作しない場合は、web171 の利用が良いと思う。web171 はホームページなので、自分のスマホが使えない場合、他人のスマホやパソコンなどからも、各自の電話番号 ID を利用できる。
ただし、web171 がつながらない場合、スマホ通信会社独自の伝言板も試してみる。
(3) スマホや携帯などが使えない場合は、公衆電話や固定電話から、災害用伝言ダイヤル 171 が利用できる。171では、web171の文字情報を、音声として聞くことができる。
以上、3種類くらいの連絡方法を家族で共有しておくと良いと思われます。事前の予行演習を行っておくこと。また、操作ができない子どもには、周囲の大人に頼めるように、必要な情報(保護者への連絡方法や電話番号や伝言板用IDなど)を子どもに伝えておくこと。
※ 「被災時の通信事情」も参考にしてください
2025.4.5