日本語と英語はかなり異なる言語です。しかし、似ている点もあります。それは同じ言語としての特徴でもあります。日本語と英語の類似点についてまとめています。
日本語には敬語があります。『英語には敬語がない』『英語では誰もが同じ立場だから』と言う人がいます。本当でしょうか?英語には丁寧な表現はないのでしょうか?実は、英語にも相手に配慮する丁寧な表現があります。
言葉は長くなればなるほど丁寧になる
日本語でまず考えてみましょう。どの表現が丁寧でしょうか?
例:
ドアを開けろ。
ドアを開けてくれない?
ドアを開けてくださいませんか?
下に行けばいくほど文が長くなり、丁寧な表現になっていることに気づいたでしょうか。
では英語ではどうでしょうか?
例:
Open the door. ドアを開けろ。
Can you open the door?ドアを開けてくれない?
Would you mind opening the door? ドアを開けてくださいませんか?
命令文より、Can you ~ ?の表現の方が依頼をする丁寧な表現です。Would you mind ~ ?は直訳すると、ドアを開けるのは嫌ではありませんか?となります。これはかなり丁寧な表現です。下に行けばいくほど文が長くなり、丁寧な表現になっていることに気づいたでしょうか。実はどの言語にも共通の特徴として『長くなればなるほど丁寧な表現になる』という傾向があります。
なぜ丁寧な表現が長い表現になるのでしょうか?「ドアを開けて」というメッセージを伝えるだけなら最小の単語数で十分です。
これは本来なら短い表現で済むところをわざわざエネルギーを使って長い表現で表すことで、相手に対して配慮したり気を使ったりすることになるからなのです。日本語も英語も、相手に配慮する時の言葉の性質は同じなのです。
日本語には数多くのカタカナ語があります。それらは外国語からやってきた言葉です。多くは英語からやってきた言葉です。言葉を外国語から借りることを「借入」(しゃくにゅう)と言います。文化庁のページから、広く使われているカタカナ語をいくつか紹介します(文化庁:カタカナ語の認知率・理解率・使用率【使用率順】)。
例:
ストレス (← stress )
ボランティア (← volunteer )
リサイクル (← recycle )
サンプル (← sample )
インターネット (← Internet )
実は、英語も多くの言葉を外国語から借りて取り込んでいる言語です。日本語から英語になった言葉も多くあります。
例:
sushi (← 寿司 )
kawaii (← 可愛い )
otaku (← オタク )
typhoon (← 台風 )
senpai (← 先輩 )
skosh (← 少し )
seppuku (← 切腹 )
なぜこのような借入が起こるのでしょうか。それは、元々なかった名前や概念(アイデア)は新しい言葉を作るよりも既にある言葉を借りたほうが楽だからです。例えば、日本語でカタカナが禁止されてインターネットやストレスやリサイクルという言葉を使えなくなったらどうでしょうか?ストレスは『精神的肉体的苦痛』、ボランティアは『社会奉仕活動』、リサイクルは『再生利用』のように、新しい言葉を考えたり、既存の言葉を組み合わせて説明しなければならなくなって面倒です。インターネット、などは一体どうやったら日本語にできるでしょうか?『世界的情報通信技術網』でしょうか?段々と長くなってしまって困りますね。カタカナが禁止で日本語のみの会話がいかに窮屈になるかはこち亀16巻第二話の『大和魂保存会!?の巻』を読んでみるとよく分かります(以下のリンクを参照)。
話が逸れました。英語も日本語も、外国語を借りてくるという性質は同じなのです。
日本語で考えましょう。次の太字を強く読むとどんな意味合いになりますか?
例:
「じゃあ、君はどう思うの?」
『私は〜思うが、あなたはどうなんだ?』と相手自身の意見を強く求めることになります。
英語では通常、内容語に強勢(アクセント)が置かれます。機能語にはアクセントは置かれません。しかし、強調したい時には、機能語にもアクセントが置かれます。この機能は日本語も英語も似ています。
例:
What do YOU think?
『私は〜思うが、あなたはどうなんだ?』と相手自身の意見を強く求めるときに、機能語のyouにアクセントを置いて言うこともあります。
英語のリスニングでは、音の変化に対応することがとても重要です(リスニングのコツ②音変化参照)。これは単語と単語を速く話そうとしたりできるだけ労力をかけずに話そうとしたりすることから起きています。英語独特の現象のように思われがちですが、普段意識していないだけで、日本語でも音の変化が起きる場合があります。
次は、速く話そうとするために前後の音がくっつく例です。カタカナ語でも起こります。
例:
天皇(テン+オウ→テンノウ、ten+ou→tennou)
因縁(イン+エン→インネン、in+en→innen)
ワンナウト(ワン+アウト→ワンナウト、wan+auto→wannauto)
発音しにくい音が落ちることもあります。
例:
河原(カワ+ハラ→カワラ)
裸足(ハダカ+アシ→ハダシ)
何で(ナニ+デ→ナンデ)
家庭教師(カテイキョウシ→カテキョー)
言いやすいように音が変化することもあります。
例:
学校(ガク+コウ→ガッコウ)
三角形(サンカクケイ→サンカッケイ)
雨宿り(アメ+ヤドリ→アマヤドリ)
kの音が消えて「ッ」になっています(三角形)。同じ音が連続したほうが言いやすいので、メ→マになっています(雨宿り)。
音の順番が入れ替わることもしばしば起こります。カタカナ語でもこの入れ替え現象は起こります。筆者には、マリトッツォをマトリッツォと言って大恥を書いた経験があります。
例:
秋葉原(アキバハラ→アキハバラ)
ふいんき(フンイキ→フインキ)
シミュレーション(シミュレーション→シュミレーション)
マトリッツォ(マリトッツォ→マトリッツォ)
話してによって、変化したりしなかったりする場合があります。
例:
洗濯機(センタッキ または センタクキ)
体育(タイク またはタイイク)
速く話そうとすればするほど、省略したり短くなったり音がなくなったりする傾向が強くなります。これらは言語に共通の現象です。
日本語でも英語でも、共通した現象は実はあります。興味がある人は他の例もインターネットで調べてみましょう。