英語には、日本語にすると両方とも「~した」と似た訳になってしまいがちな表現があります。それが、過去形と現在完了形です。形や日本語の意味を一生懸命覚えても、実際にどう使い分けをしたらいいのかは、分かりにくいです。ここでは、過去形と現在完了形の使い分けについてまとめています。
過去形は、動詞を ed形 に変えたり不規則変化をしたりして表せます。そして、「~した」という過去を表します。
例:
I played table tennis.
私は卓球をしました。
過去形は、その名の通り、過去のことを表現します。しかし、日本語で「~した」という訳になる表現が他にもあります。それが、現在完了形です。現在完了形は【have + 過去分詞】で表現します。これらは、日本語にしてしまうと、一見区別が付かない場面があります。
例:
I ate lunch.
昼食を食べた。
I've eaten lunch.
昼食を食べた。
日本語にすると、どちらも「食べた」となってしまいます。現在完了形の日本語訳全てに「~した」の訳が当てはまる訳ではありせん。しかし、このように現在形と現在完了形が同じ日本語になってしまうことがあります。では、どのように、使い分けたらいいのでしょうか。
過去分詞ってなに?
過去分詞は動詞の形がさらに変化したものです。次のようなものが過去分詞です。
liked, loved, played, などの動詞の過去形(ed形)と同じ形のもの
had(←have), made(←make), bought(←buy), built(←build), lost(←lose), left(←leave), met(←meet), taught(←teach) などの動詞が不規則に変化した過去形と同じもの
been(←is, am, are, was, were), eaten(←eat), known(←eat), written(←write), taken(←take), given(←give), seen(←see), spoken(←speak) などの nがついたもの
過去形と現在完了形は、表す意味が大きく違います。過去形は、単純に過去のことを表現します。そして、過去形は現在のことについては何を示しません。一方で、現在完了形は、過去に起こったことを踏まえて今現在のことを表します。以下に、違いをまとめてみました。
過去形
過去におきたこと
過去にしていた習慣的なこと
今現在のことは何も表現していない
現在完了形
既に始めていて、今、この時間でもまだしていること(継続)
既に行っていて、今、この時間でもまだ影響があること(完了・経験)
過去に起きたことを受けて、今現在のことを表現している
例えば、「宿題をした」を英語で表現したい場合には、状況に応じて表現が変わります。「昨晩宿題をした」ことを表現するには過去形を使います。この場合、今現在のことからは離れており、今現在のことについては何も示しません。
例:
I did my homework last night.
昨晩、宿題をしたよ。
一方、宿題の締め切り日などに友人に、「宿題やった?」と尋ねられた場合には、現在完了形を使います。この場合の「宿題をやった」とは、今現在宿題を終えているかどうかの状況に着目しています。そのため、現在完了形を使うのです。結果、次の英文には「今現在、提出ができる状態だ」「宿題を終えているのでリラックスできる」などのニュアンスが含まれています。
例:
I’ve done my homework.
(「宿題やった?」と尋ねられて、今現在宿題を終えている状況に着目して)宿題をしたよ。
過去形は、過去のことのみを表せます。一方、現在完了形は、過去におきたことを受けて今現在について表現しているのです。
現在完了形の意味
大まかに3つの意味の捉え方があります。この差は、過去から今現在への繋がりのどの点を捉えるかによります。
継続
過去から始めて、今、この時間でもまだしていることを表現します。「〜している」という意味で解釈されます。この意味では、since(〜から)やfor(〜の間)という表現が共に使用されます。
例:
I have been sick since last week.
先週からずっと体調が悪い。
I have lived in Chiba for three years.
千葉に3年間住んでいる。
I have known him for 10 years.
彼とは10年間知り合いだ(彼のことを10年知っている)。
I have not worked for a long time.
長い間働いていません。
I have not seen him since the accident.
事故以来彼に会っていない。
I have wanted to visit America since I was a child.
アメリカに行くことが子どもの頃からの夢でした(ずっと行きたいと思っていた)。
※これから行く場合でも、行ってからでも使えるフレーズです。
経験
今までのことを振り返っている表現です。「〜したことがある」「〜したことがない」という意味で解釈されます。この意味では、頻度を表す表現、once(一度)、twice(二度)、three times(三度)、many times(何度も)や、強い否定のnever(これまで〜ない)という表現が共に使用されます。before(過去に)やSo far(これまでに)も一緒に使われます。
例:
I have been to Okinawa once.
沖縄に一度行ったことがある。
I have never been to America before.
今までアメリカに行ったことがない。
So far, we have never driven a car.
これまでのところ、私たちは車を運転したことがない。
I have had dinner at the restaurant many times.
このレストランで夕食を何度も食べたことがある。
完了
今に焦点が当たっている表現です。「もう〜した」「既に〜しおえた(だから…)」という意味で解釈されます。この意味では、already(すでに)、not yet(まだ〜ない)、just(ちょうど、まさに)という表現が共に使用されます。
例:
I have already eaten lunch.
お昼はもう食べてしまった(なので食事はいりません)。
I have not eaten lunch yet.
まだお昼を食べていません(なので空腹です)。
I have not finished my work yet.
その仕事をまだ終えていません。
I have just arrived.
ちょうど到着したところです。
I have just left home.
ちょうど家を出たところです。
ここまでの説明でモヤッとする方がいるかもしれません。なぜなら、現在完了形であっても、明らかに過去のことを表現することがあるからです。例えば、現在完了形は「~したことがある」という意味で頻繁に使われます。例えば、「沖縄に行ったことがある」は次のように表現します。
例:
I have been to Okinawa.
沖縄に行ったことがある。
これは、明らかに過去のことを言っていますよね。過去形を使った I went to Okinawa. とどう違うのでしょうか?実は、「沖縄に行った」という事実が伝わる点は同じです。
これは、否定文にすると違いが明らかになります。
例:
I have never been to Okinawa.
沖縄に行ったことがない。
I didn't go to Okinawa.
沖縄に行かなかった。
「行ったことがない」は今現在でも未経験であることが分かる表現です。一方、「行かなかった」は今現在でも未経験かどうかは不明です。現在完了形の方が、過去をうけて、今現在の状況を表していることが分かります。微妙ですが、違いがあるのです。
「行ったことがある」はなぜ have gone では表現できない?
「行ったことがある」は have been で表現します。一方、have gone は「~へ行ってしまって、もうここにはいない」という意味です。なぜでしょうか?
go (行く) は『場所を移動する』という意味です。現在完了形は今現在のことを表現しますから、have gone は「~へ行った状態」を表しています。つまり「今現在~へ行っている状態」なため、「~へ行ってしまって、もうここにはいない」という意味になるのです。
より実践的に現在完了形を使うにはどうしたらいいでしょうか。現在完了形を効果的に使える場面を以下で説明します。
物事の紹介をするとき
現在完了形は、本題に入る前のクッションや前置きのような使われ方をすることがあります。There has been a lot of misunderstandings about cats.(猫についてはこれまでに多くの誤解がある)Many people have suffered in love.(人々は恋に悩んできた) などです。過去から繋がる現在に焦点が置かれています。
例:
Many people have visited Hakone Hot Springs in Japan so far. When the Tokaido Highway was developed during the Edo period and artists such as Utagawa Hiroshige depicted Hakone in ukiyoe woodblock prints, many travelers began to visit Hakone's hot springs. Hakone is now one of the hot spring resorts with the largest number of ryokan in Japan. There are also many tourist attractions, such as Lake Ashi, Owakudani, and a world-famous hot spring theme park Yunessan.
これまで多くの人が日本の箱根温泉を訪れています。江戸時代に東海道が整備され、歌川広重などが浮世絵で箱根を描くと、多くの旅人が箱根の温泉を訪れるようになりました。箱根は、日本で最も多くの旅館がある温泉地のひとつです。また、芦ノ湖や大涌谷、世界的に有名な温泉テーマパーク「ユネッサン」など、観光名所もたくさんあります。
エピソードを話すとき
エピソードを話すときの時間軸の導入にも、現在完了形は効果的に使われます。この場合は過去に焦点が置かれ、現在完了形は過去と現在を繋ぐことがよくわかります。
例:
I have visited Hakone Onsen many times. Last time, I visited it in the winter. I soaked in open-air hot springs and enjoyed the winter scenery of Hakonegairinzan. I saw a snow-covered mountain. It was romantic. It was the most romantic scene I had ever seen.
箱根温泉は何度も訪れています。前回は、冬に訪れました。露天風呂に浸かり、箱根外輪山の冬景色を楽しみました。雪化粧をした山が見えました。今まで見た中で最もロマンチックな景色でした。
また、エピソードの締めにも現在完了形が使われます。今までの話をまとめてつなげる役割になっています。
例:
I recently got a cat. Every morning, my cat comes to my futon, asking for food. I give her food before my breakfast. When I leave home, I hug her. When I come home, my cat greets me at the door. She meows, asking me to give her some food. I give her food before my dinner. This has become my daily routine.
先日猫を飼い始めました。毎朝愛猫が餌をねだりに私の布団にやってきます。朝ごはんの前に猫にごはんをあげます。家を出る時には愛猫にハグします。帰宅すると、愛猫がドアの前で出迎えてくれます。餌をくれと言わんばかりに鳴いています。夕食前にごはんをあげます。これが私の日課になっています。
その他の紛らわしい例を挙げてみます。英語で表現する時に、過去形と現在完了形、どちらを使いますか?
例:
① 東京に行ったときに、道に迷った。
② (週末の台風は多くの家屋を破壊したので)多くの人が住む家を失ってしまっている。
③ (お昼に誘われて)お昼は食べてしまった。
④ 北海道には3回行った。
①を英語にすると…
When I went to Tokyo, I got lost.
東京に行ったときに、道に迷った。
過去のことを言っています。今現在のことについて触れていません。そのため、過去形を使います。
②を英語にすると…
The typhoon over the weekend destroyed many homes, so many people have lost their homes.
週末の台風は多くの家屋を破壊した。多くの人が住む家を失ってしまっている。
台風が家屋を破壊したのは週末の出来事です。同時に家を失ったことになります。しかし、今現在の人々が家を失っている状況を説明するために、現在完了形を使います。
③を英語にすると…
I’ve eaten lunch.
お昼をもう食べてしまった。
今現在の食べた後の状況を説明しているので、現在完了形を使います。食べた直後などの状況です。仮に、I ate lunch. と言った場合は、お昼を食べたという単純な事実を伝えています。その影響などは何も表されていません。または、「今日は忙しかったが、お昼を食べた」などと言う場合でしょう。この場合も、単純に「お昼を食べた」ことを伝えています。
④を英語にすると…
I have been to Hokkaido three times.
北海道には3回行った(ことがある)。
I went to Hokkaido three times.
北海道には3回行った。
現在完了形を使うことが一般的ですが、過去形を使っても問題はありません。2文には非常に細かい違いしかありません。淡々と事実を述べるならば過去形を使います。一方、今現在にその体験が影響を与えているならば、積極的に現在完了形を使って表現してよいでしょう。
例えば、現在完了形を使った場合、そこからさらにエピソードが展開されることが多いです。なぜなら、現在完了形は、その体験で〇〇を学んだ、こういうことを知っている、など今現在に何かしらの影響を与えている状況を表現するからです。
過去形と現在完了形の違いについて紹介しました。
過去形は、過去の行動や習慣を表現します。これは今現在と関係がありません。一方、現在完了形は、現在に焦点を当てた表現です。過去の出来事を受けて今現在を表現しています。過去形と現在完了形の違いがわかると、適切に表現できるようになると思います。