なぜ、中国語や韓国語やフランス語などではなく、学校では英語を学ぶのか。その理由について紹介します。
英語が話されている国と言えば、アメリカです。そして、アメリカは世界の中心です。政治、経済、研究開発、IT、出版、そして軍事などの様々な分野でアメリカは影響力があります。アメリカ大統領の発言一つが世界のニュースになったり、経済の取り決めに影響したりします。また、アメリカの企業は世界中でものを売っています。皆さんが多く使っているiPhoneも、アメリカ企業のAppleの製品です。また、アメリカは日本と違って今後数十年間人口が増加する見通しです。アメリカは世界でも成長が今後も期待されている市場です。これらの理由で、アメリカと関わらずにはもはや生活は成り立たないのです。
アメリカと関わらざるを得ないため、彼らの多くが話す英語を学ぶ必要性があるのです。英語ができないと相手にされずに、世界で取り残されることになって非常に不利益を被ります。経済の分野では、アメリカからモノを買ったり、逆にアメリカへ日本のモノを売らないとやっていけなくなっています。研究分野では、研究の中心はやはりアメリカの大学で、多くの研究成果は英語の論文で書かれています。彼らと対等にやっていくには、私達も英語で論文を書かざるを得なくなっています。日本語でいかに素晴らしい内容や発見をしても、誰も読んではくれないのです。ITの分野では、例えばインターネットの始まりはアメリカでした。そして、今でもインターネット上で使われる言語の大半は英語です。英語が圧倒的に強いのです。出版の分野では、世界で出版される書籍の大半は英語で書かれています。それは巨大な出版企業のほとんどはアメリカにあるからです。最新の内容について本から学ぶためには、英語が必要になっています。
しかし、歴史上常にアメリカが世界の中心になるほど強かったかというとそうではありません。アメリカが世界の中心になったのはここ百年です(2022年現在)。この百年だけの影響で、世界の様々な国の人々に英語を学ばざるを得ない状況を作ったわけではないはずです。実は、一昔前、世界の中心はイギリスでした。そして、英語という名前から分かるように、元々英語は「英国の言語」という意味です。英語が話されていたイギリスの軍事や経済が世界の中で非常に強かった期間が長く続いたため、英語は影響力のある言語になったのです。
かつて、イギリスは軍事的にも経済的にも最強の国でした。大英帝国、という言葉を聞いたことがあると思います。イギリス本島はあの小さな島ですが、かつては世界の多くの国を支配し、植民地にしていました(植民地とは、元々は自分の国ではないのに、自分の国が武力などで支配している土地のことです)。イギリスの植民地支配は、1600年頃から始まり、1900年前半まで続きました。実に300年もの間、他国を支配していたため、元々英語が話されていなかった地域にも、英語の影響力は強く残りました。
例えば、アジアオセアニア地域だけでも、インド、バングラデシュ、シンガポール、香港、マレーシア、オーストラリアがイギリスの植民地でした。アフリカ地域では、エジプト、ガーナ、ケニア、ナイジェリア、などがイギリスの植民地でした。また、北アメリカの地域では、カナダやアメリカの大半をイギリスが植民地としていました。これらの国は今や英語が公用語として幅広く話されています。私はナイジェリアの人々と留学先で出会いましたが、彼らは英語を流暢に話していました。支配が何百年も続くと、その国の言語を英語で塗り替えてしまえるほどの影響力があるのです。
こうして、英語は世界中に広がっていったのです。
アメリカで英語が話されている背景には、イギリスからアメリカへ人々が移り住んでいったことが理由です。最初のイギリスからの移民はピルグリム・ファーザーズと呼ばれる人々でした。彼らは宗教的な対立が原因でイギリスを離れて、1620年アメリカに到着しました。当然彼らが話していたのは英語です。その後も、宗教的対立からアメリカへ渡っていった人々は次々と現れました。
また、イギリス本国も、アメリカを軍事的に征服していきました。例えば、1644年には、当時オランダが支配していた地域をイギリスが占領し、ニューヨークと名前を変えました。ニューヨークは東側の地域ですが、その後もイギリスは現在のアメリカの国土を西へ西へと植民地として支配していき、西海岸まで支配地域を広げていきました。
そのうち、アメリカでは、産業が発展し、イギリス本国を脅かす存在になっていきました。そして、とうとうイギリスの支配を拒否し、1775年にアメリカ独立戦争が起こりました。1776年にアメリカは独立を宣言し、アメリカ合衆国という国を作ります。そこからアメリカは広大な国土と人口と、技術革新で、世界の覇権を握り現在に至ります。
なぜ他の言語ではなく英語を学ぶのか。それは、特に世界中の人々が共通言語として英語を使おうと決めたわけではありません。歴史の流れで、英語が強い影響をもつ言語になったことが原因です。イギリスの繁栄と、その次のアメリカの経済超大国としての地位が、私達に英語を学ばざるを得ない状況にしているのです。ちょっと、理不尽と言うか、ずるいと言うか、そんな気持ちになりませんか?