綴りと発音が一致しないことは、英語学習をする上で日本語との大きな違いです。このことは英語が難しく感じられる原因にもなっています。英語に読まない文字があることには、いくつかの理由があります。そのうちの一つを紹介します。
knowは「ノウ」と発音します。kを発音しません。なぜ発音しないのに書かなければならないのか、書くのになぜ発音しないのか、疑問に思った方は多いと思います。実は、knowのkは、元々は発音していたと考えられています。古い昔の英語(1000年ほど前)では、元々は発音していたのに、いつの間にか発音しなくなってしまったのです。
では、なぜ発音しなくなってしまったのでしょうか?発音しないkの例を挙げてみます。
例:
know (知っている)
knight (騎士)
knife (ナイフ)
knock (ノックする)
knee (ひざ)
knit (編む)
なぜkの音が消えたのか。それは、ある意味合理的な結果です。kは全て単語の最初に来ています。実はこれが原因です。kの音を試しに発音してみてください。「クッ」と、擦れたような音になります。kの文字の音は発音しても、か擦れた音で聞こえにくいです。また、kの音を発音すると、口に溜めた空気を全て吐き出してしまうことになります。空気を全て吐き出してしまうと、次に音を出すのに、もう一度空気を吸い込まないといけなくなります。これは連続で発音するのに非常に不向きです。
おそらく、このような発音しにくい要因が重なった結果、『発音しない』傾向が現れ始め、消えてしまったのだと考えられます。
文字として書いているのに発音しなくなったなんて、嘘では?と疑っている方に、今まさに消えかけているある英単語の音を紹介します。それはoftenのtの音です。tの音もkと同様に、か擦れた音です。実は、tの音は、現代でも発音したり、発音してもほとんど聞こえなかったり、と不安定な音です。
oftenは「オフン」と発音したり、「オフトゥン」とお布団のように発音したりと2パターンの発音方法があり、どちらも正しい発音として辞書に書かれています。ここでポイントはtの音を発音するかどうか、の点です。実際に母語話者がoftenをなんと発音しているかを調査した動画がありますので、見てみましょう。
いかがでしょうか。アメリカ英語、イギリス英語で単純に区別できず、人や出身によってoftenのtを発音したりしなかったりするようです。今まさに、oftenのtの音は発音するかしないかのせめぎ合いの中にあると言えます。
tの音で完全に消えてしまった例はいくつかあります。例えば、listenは「リスン」と発音します。このtの音は全く発音しない方法で定着しています。また、fastenerは「ファスナー」と発音します。ファスナーのことです。これもtの音を発音しません。このような例から推測するに、oftenはいずれtの音が消えるのではないかと筆者は思っています。
英語には発音しない文字があります。この文字がある原因の一つは昔は発音していたのに、発音しにくかったり、発音してもきこえにくかったりするために、何百年もかけて次第に読まれなくなってしまったことが挙げられます。私達日本人の文字の常識は『書いた文字は全て読む』です。この常識との食い違いが英語をややこしく、難しくしている原因となっています。