英語での受け身は複雑な形です。受け身の作り方は、参考書や教科書には丁寧に説明されています。しかし、なぜ受け身を使わなくてはならないのか、は教科書や参考書が明確に説明してくれていないことが多いです。受け身は普通の文(能動文)とどうやって使い分けたらいいのか、日本語と同じ感覚で使ってよいのか、疑問に思ったままの方は多いでしょう。ここでは、受け身を使わざるを得ない場面や、受け身をどう効果的に使ったらよいか、について説明しています。
受け身とは、日本語で言うところの『~される』という表現です。
例:
(普通の文)Ken likes the rabbit.
ケンはあのウサギを気に入っている。
(受身の文)The rabbit is liked by Ken.
あのウサギはケンに気に入られている。
【be動詞+過去分詞】の形を使います。時には、byを使って『誰がしたのか?』や『何によって』を表すこともできます。
過去分詞ってなに?
過去分詞は動詞の形がさらに変化したものです。次のようなものが過去分詞です。
liked, loved, played, などの動詞の過去形(ed形)と同じ形のもの
had(←have), made(←make), bought(←buy), built(←build), lost(←lose), left(←leave), met(←meet), taught(←teach) などの動詞が不規則に変化した過去形と同じもの
been(←is, am, are, was, were), eaten(←eat), known(←eat), written(←write), taken(←take), given(←give), seen(←see), spoken(←speak) などの nがついたもの
基本は能動文を使うべきです。なぜなら、普通の文の方が簡単だからです。一方、受け身の文は過去分詞を使うなど、複雑です。また、誰がしたのか?が曖昧になりがちです。そのため、普通の文である能動文を基本的には使うべきです。
しかし、受け身の文の方が適切な場面があります。(1) 『誰が』が分らない、(2) 『誰が』が重要でない、(3) 新情報を後ろに置きたい、などの場合です。そのような場面では、受け身を効果的に使うことができます。
『誰がしたのか?』が分らない時には、受け身を使う理由になります。
例:
This house was built 30 years ago.
この家は30年前に建てられた。
無理やりに、Someone built this house 30 years ago. (誰かがこの家を建てた)と書くこともできなくはないです。しかし、これは非常に不自然です。この文において重要なのは、この家が築30年であること、だからです。誰が建てたのかはあまり重要ではありません。このように『誰が』が分らない場合には、受け身を使ったほうが自然です。
また、『誰が』が重要ではない場合にも、受け身を使ったほうが自然です。
例:
Two men may love one woman.
2人の男性が1人の女性を好きになるかもしれません。
Or two women may love one man.
もしくは2人の女性が一人の男性を好きになるかもしれません。
Three people may have one-sided feelings for each other.
3人の人々が一方通行の思いを抱えることもあります。
This is called a love triangle.
これは、三角関係と呼ばれます。
Love triangles create a lot of problems and stress.
三角関係は多くの悩みとストレスを生み出します。
最後から2番目の文は、People call this a love triangle.と言っても、文法的に間違いではないです。しかし、『人々が』とわざわざ主語を表現する必要性は低いです。なぜなら、『誰が』呼んでいるかは重要ではないからです。『誰が』を示す必要性が低いため、受け身を使うのが自然です。
一方、1番最後の文では、わざわざ A lot of problems and stress are created. と受け身で主語を隠してはいけません。なぜなら、『何が』悩みやストレスを生み出すのか(つまり『三角関係』)、がこの場合には重要な情報だからです。
一つの文の中で、文の初めの方に既に述べた内容を置き、文の後ろの方に新しく出てきた内容を置くと分かりやすいです。文の中で、既に述べた内容のことを『旧情報』、新しく出てきた内容のことを『新情報』と呼びます。つまり、旧情報→新情報の流れになるように1文を書くと、文章全体の流れがスムーズで分かりやすくなります。
次の例では、2文目において、緑は旧情報、赤は新情報です。
例:
My brother is kind. He gave me a cake the other day.
私の兄は優しいです。この前、ケーキをくれました。
Heは既に出てきたMy brotherを示しています。代名詞は既に出ている内容を示すので、基本的に旧情報になります。一方、a cakeはここで初めて出てきたので新情報です。冠詞a/an が付いているものは初めて出てきた新情報になることが多いです。すでに知っている内容(He)から始まって、新しい情報(a cake)が加わっているので、分かりやすくなっています。
旧情報→新情報の流れになるようにするために、受け身が使われることがあります。次の例を見てみましょう。
例:
I bought a cake at a cake shop. But, on my way home, my cake was eaten by a dog.
私はケーキ屋さんでケーキを買いました。でも、家に帰る途中で、ケーキを犬に食べられてしまいました。
こちらでは、my cakeは旧情報になっています。最後に出てきたa dogが新情報です。受け身を使わなかった場合には、A dog ate my cake. となり、新情報であるa dogがいきなり文頭に来てしまいます。これでは、面食らってしまうので、分かりにくいです。
学んだ内容を内容を参考に、受け身の使い方の練習をしてみましょう。
受け身を使うべき場合について紹介しました。基本はシンプルな能動文を使います。しかし、(1) 『誰が』が分らない、(2) 『誰が』が重要でない、(3) 新情報を後ろに置きたい、などの場合には、受け身を使いましょう。そのような場面では、受け身を使うことにより情報を分かりやすく伝えることができます。