英語には、冠詞( a / an や the )という日本語にはないものがあります。冠詞の使い分けについてまとめています。
冠詞(a / an や the )の使い方は、日本人にとって最も難しい英語のルールの一つです。そもそも日本語には冠詞というものがありません。また、冠詞の有無が、意味にどう影響を与えているかははっきりとは分かりにくいです。そのため、英語を使う時に、冠詞を付けるのか付けないのかの判断は非常に難しいです。
では、冠詞(a / an や the )はいつ使うのでしょうか。冠詞は名詞を使ったときに必要になる場合があります。しかし、名詞にはいつも冠詞が付くとは限りません。また、名詞には単数形の場合と複数形の場合とがあり、全て合わせると以下のようなパターンがあります。
a / an + 単数形
the + 単数形
the + 複数形
単数形(冠詞無し)
複数形(冠詞無し)
ここではこれらのうちの3つについて、使うべき場面を説明します。それぞれどのような場面で使うべきなのかを確認していきましょう。
the は『どんなもののことを言っているのか相手にとって明確な時』に名詞につけられるマークです。名詞に the をつける時に意識すべきは次の点です。
the の使い方
それが唯一のものである時には the をつける
それが他と区別できるものである時には the をつける
唯一のものには the をつける
世界でたった一つしかないものには the をつけることが非常に多いです。それぞれ例を見てみましょう。
例:
The earth goes around the sun.
地球は太陽のまわりを回る。
earth(地球)や、sun(太陽)は世界にたった一つしかありません。別の言い方をすると、「地球」と言ったときに話し手も聞き手も同じものをイメージします。そのような時には、the を使うのです。
形容詞や修飾語によって、唯一になるものにも the が付けられます。
例:
It is the only high school in this town.
それはこの町で唯一の高校です。
高校は世界に数多くありますが、この町に限定するとたった一つの状況です。限られた場所や期間の中でのたった一つのものに対しても、the は使われます。
具体的ではないものにも the を付けることが可能です。
例:
This is the first time I've had otoro.
大トロを食べるのはこれが始めてだ。
この場合は、ものではなく経験です。しかし、first(初めて)、second(二度目)など、一度きりしか経験できないことに対しても、theは使われます。
状況的に一つのものには the をつける
世界でたった一つでなくとも、その状況からどの名詞をしているのか一つに絞れる場合には、the をつけることになります。
例:
The picture on the wall is beautiful.
壁の写真はきれいですね。
聞き手に写真が示されていて、どの写真かどうかが明らかな場合です。この場合では、 the picture と表現することができます。
前に出てきたものや人を示す時に、the が使われることがあります。
例:
I met a man on the street. The man was running away from the police.
道で男性を見かけました。その男性は警察官から逃げていました。
the man は、前文の a man を示しています。どの男性かが状況的に明らかであるので、the が使えます。
「◯◯のうちの〜」などの言い回しでは、the が使われます。
例:
I visited Okinawa. I was surprised at the beauty of the ocean.
沖縄に行きました。海の美しさに驚きました。
the ocean は沖縄の海のことです。そのもの全てを示すだけでなく、一部を示す場合にも the が使えます。
theをつけられない場合には、どのもののことを言っているのか一つに定まりません。その時には、a/an が付く可能性があります。
a/an の使い方
それが他と区別できず、1単位のものと捉えられる時には a/an をつける
単語の発音が母音(日本語だと、あ、い、う、え、お)から始まる場合には an をつける
他と区別できず、1単位のものにつける
例:
I have a book in my bag.
カバンの中に本を一冊持っています。
どれのことを示しているのかが不明な段階では、ものや人に対して a/an をつけます。この場合、本は世の中に数多くあります。また、持っているのは一冊の本です。そのため、a が付いています。しかし、the book と表現するべき場面もあります。次はどんな状況でしょうか。
例:
I have the book in my bag.
カバンの中にその本があります。
相手から借りている本や今話題にしている対象の本など、どの本のことかが分かっている場合には、the book と言うべきです。
単語の発音が母音で始まる時につける
例:
I have an egg in my bag.
カバンの中に卵があります。
an が付くのは、a/an が来るべき場所の次の単語が母音で始まる時です。この場合は、egg の e に影響されています。
最後にthe も a/an も付かない場合について触れておきます。a/an も the も使われない場合は無冠詞と呼ばれます。これは簡単に説明するのは非常に難しいです。なぜなら、school や soccer など、身近な多くの名詞がそのままの状態で使われているからです。ここではものに限定して、名詞がそのまま使われる(単数で無冠詞)場合の特徴を挙げてみます。
ものの名前がそのまま使われる時の特徴
それが他と区別できず、単位のあるものではないものである時
それが他と区別できず、単位にならないバラバラな状態になっている時
他と区別できず、単位がない時
例:
I'm thirsty. I want to drink water.
のどが渇いた。水が飲みたい。
この場合、特定の水に限定せず、一般的な水を意味しています。水のように、それ単体では明確な単位がない名詞の場合、a/an は付きません。勿論、グラスに入れれば一杯の水などと単位で数えられますが、逆に言うとそうでもしないと誰にでもわかる単位がありません。イメージとしては、二つに分けても4つに分けても、同じ性質のまま変わらないのものがこれに当てはまります。
他の例を見てみましょう。
例:
This is made of wood.
これは木からできている。
木は半分に切っても、木のままです。いくら分割しても同じ性質のままです。こういう性質のものでは、a/an は付きません。他にも例えば、木材、ガラス、紙などの材料や、肉やチーズなどの素材、水、牛乳などの液体が挙げられます。
他と区別できず、単位にならない時
分けても同じ性質ならa/anを付けないという考え方が応用されると、通常一個二個と数えて a/an が付く名詞が a/an や複数形のs 無しで使われる理由が分かるようになります。
例:
There is chicken in the fridge.
冷蔵庫に鶏肉があるよ。
この場合の chicken は、コケコッコーと鳴くニワトリではありません。ニワトリなら一羽と数えられるため、a chicken となります。この場合の chicken は鶏肉になっています。なぜでしょうか? a が付いていない状態の場合に鶏肉になってしまうのは、肉になると単位としてみなすことができず、それを切っても分けても同じ性質のまま他と区別ができない状態になるからです。材料や素材に近いです。このような状態の場合、a/an が付かずに使われます。
もし、ニワトリが一羽いるというなら、以下のように表現します。
例:
There is a chicken in the garden.
庭にニワトリが一羽いるよ。
生きているニワトリなら、他のニワトリとは区別が可能で、a chicken と表現できるのです。
最後に、単位と見なせなくなってしまった egg の例を見てみましょう。
例:
You've got egg on your tie.
ネクタイにタマゴがついているよ。
この場合の卵は、殻に覆われた一個の卵ではありません。液体だったり食べかすになっていたりするタマゴです。タマゴの中身がばらばらになってしまい、2つに分けても区別がつかないような状態です。このような場合、a/an が付かずに使われます。
冠詞(a / an や the )の使い方について説明しました。the は唯一のものや、どれを示しているのかが明らかな場合に使います。a/an はどれを示しているか他と区別できないものが1単位のものの時に使います。the も a/an もつけられない場合で、単位が明確でない・分けても他と区別がつかないものは、名詞がそのまま使われます。