対戦では「釣り」という用語がある。
魚釣りのように、相手に特定の行動をさせて狩るといった意味の用語だ。
当ページでは、
実戦の動きの中に釣り動作を入れることについて考え、
釣りという動きについて考えているところを主観的にまとめてみたい。
釣りが成功すると何が起こるか。
色々と表現の仕方はあると思うが、
相手が自分にとって都合の良い動きをしてくれる。
自分が何らかの動きをしたことで相手が反応した時に
相手の動き方が想定された「釣られたもの」であった場合、
一方的に攻撃を当てられたりするだろう。
(厳密には動かない状況に反応されることもあるが)
相手が動くことを期待し、
思い通りに動いてくれたところに対処ができれば釣りと言えるだろう。
その一連の流れには、読みや迎撃などのニュアンスも含まれるが、
わざわざ釣りという言葉が使われるとき、
そういったものとは異なるニュアンスで使われるように思う。
「釣り」という言葉だけ見ると、
引っかけるとか騙すというニュアンスを強く感じてしまう。
じゃあ警戒していれば絶対に釣られずに済むようなものなのかと言うと、決してそうではない。
それは実際に釣りが行われる場面が、様々なニュアンスを含んでいるからだ。
釣り動作は一方的に仕掛けてかかるのを待つという罠やフェイントのようなニュアンスもあるが、
その場面でお互いにどう動くかという駆け引きのニュアンスもあると思う。
釣りの場面に駆け引きが含まれる理由は、釣られる側の立場で考えると分かる。
そもそも釣り動作に対して何故動いてしまうのかと言えば、
そこで動かなければ不利益を被る可能性があるからだ。
例えば、地上で少しずつ歩いて接近してくるファルコンを想定してみよう。
ファルコンのステップ投げは非常に素早く、リーチが長く、しかも掴まれたら即死だ。
人間の反応速度が12Fだと仮定すると、
自分に対して12F以下の速度でステップ投げが届いてしまう距離までファルコンを歩かせてしまうと、
即死のリスクを背負うことになる。
しかも仮に自分のキャラが、ボタンを押してから迎撃行動を取るのに5Fかかるキャラだとしたら、
ステップ投げ17F以下の距離まで歩かせることは大きなリスクだ。
だからファルコンがステップ投げ17Fの距離まで接近する前に、
何らかの対処をする必要に迫られてしまう。
そしてその時、数ある対処法のうちの幾つかは、
「そのように動いてくれることを期待されているもの」だったりするため、狩られることがある。
このとき、
ジャンプという対処を選択し、結果的に対空されてしまった場合は、ライン攻めされたと言われるし、
相手に直接攻撃を当てに行くという対処を選択し、結果的に自分の攻撃は回避され、相手側の攻撃だけ一方的にもらうような形になってしまった場合は、釣られたと言われるだろう。
他にも起こった結果によって呼ばれ方は変わっていく。共通しているのは
釣られた側は何らかの行動を取る必要性があったということで、
取った行動と起こった結果を後から見た時に、
「釣り」「ライン攻め」「対空」「素ヒット」など
起こったことに最も近い言葉が割り当てられるものだと考えている。
釣りを仕掛けたのに、結果的に釣りと呼ばれないことがあるのは、
駆け引きや読み合い、様子見や迎撃、差し込みなどの多くのニュアンスを
釣りという動きやその場面が含んでいるからだと思う。
釣りが試合の中で成立する理由で言いたかったことの1つには、
釣りという言葉は結果論的な使い方をされるということがある。
少し当たり前すぎることを言うが、釣り動作を仕掛けた結果、
本当に釣れたかどうかというのは、釣りを仕掛ける前の行動の指標にはならないということであり、
それが分かると釣り動作の仕掛け方も分かりやすいと思う。
対戦の中での実際に釣ろうと考えたときにできることは
「相手が動く条件に触れること」までであり、
その後にどうなるかは結果を見ることしかできない。
相手が動く条件に触れることは簡単だ。
方法は色々あるが、最も分かりやすいところで言えば、ただ接近するだけで良い。
近づいてくる相手には迎撃したり防御したりしなければいけないからだ。
釣りを仕掛けようとするとき、
相手が動く条件に触れる前後で
何らかの駆け引きが必ず起こるはずなのだから、
相手が取るであろう特定の対処行動に対してメタを張れば良い。
メタを張る行動は組み合わせ次第で色々あるが、
64スマブラで最も分かりやすい釣り行動は、引きステップや引きステップ反転だと思う。
「相手がこちらに突っ込んできて、それを狩る」という図式でなければ
釣りという言葉のニュアンスにはそぐわないかもしれないが、
釣りの状況で起こる結果は、失敗と成功の2択ではなく、もっと曖昧なものだ。
「釣ろうとすること」までは自分の手で起こせるが、
「実際に釣れたかどうか」は技術とは別の次元の話でしかない。
結局のところ、釣りの仕掛け方というのは、
相手が動く条件に触れる(または触れようとする)
特定の行動にメタを張る(一点読みをする、または対処できる選択肢を残しておく)
ということだと思っている。
かなり主観的な考え方かもしれないが、
私は「釣り方」を考えてもよく分からないことが多い。
一体何が釣りになるのか、どうすれば釣れるのかを考えることは、
「どうやったら相手を思い通りに動かせるのか」を考えることに似ており、
それを考えるのは非序に難しい。
だから自分は、釣りを実践するための解釈として、
相手が動く条件に触れる方法がいくつもあり、
特定の行動にメタを張る方法がいくつもあるという考えを採用している。
そうすれば、釣りと読みを区別できるようになり、釣りを実戦で使いやすくなる。
「釣り方」ではなく「釣りの仕掛け方」を考え、釣りとは別に読みの部分を考える。
そうすれば対戦の中で実際にやることがシンプルになる。
「相手の動く条件に触る」ところが釣りの仕掛け方の部分であり、
「特定の行動にメタを張る」ところが読みの部分だ。
またそういう考えをすることで、
「どこまでが釣りでどこまでがそれ以外か」みたいなどうでも良いことを考えることも無くなる。
取った方法や起こった結果によって呼称が変わったりするけど対戦の中でそんなことを考える必要は無いし、
呼称が変わるからといって実際の行動に何か影響があるわけでもない。
メタ行動が「一点読みで様子見をすること」だったりすることもあるし、
それを釣りと言っていいかは微妙だったりするけど、対戦ではそんなことを気にする必要もないよねという感じ。
相手が動く条件は、キャラ相性で大体決まってくるものだが、
実際に動かすのはプレイヤーなので、相手次第で変わってくる。
だから相手が動く条件は実戦の中で逐一探していく必要がある。
もし相手が釣られることを考慮したうえで
棒立ち(様子見)という選択をあえて行った場合、
普通に近づいて普通に見えない攻撃で殴るといったことが起こったりする。
その様子を見て「これは釣りの場面だ」などと言う人はいないが、
「動くべき場面で動かなかった理由は釣りの場面だったから」とは言えることになる。
結局は、
動くべき場面があって、特定の動きに対するメタ行動も存在する場合、
釣りっぽい何かが毎回発生する。
だから実は釣りの場面は、実戦では数えきれないほどある。
相手の動く条件に触れるときに背負うリスクは
その組み合わせによって大きく異なる。
特定の行動にメタを張った時、
成功した時のリターンと
失敗した時のリスクも大きく異なる。
釣り動作は圧倒的優位を持っている方が一方的に行うだけのものではなく、
背水の状況で活路を見出すために行われるような苦しいものもある。
ただ64スマブラの場合、大抵は相性の有利側やライン攻めで勝てる側が、
一方的に有利な釣りを仕掛けまくることになるだろう。
釣りが読み合いのニュアンスを含んでいるので、
試行回数を稼げる方が有利だ。
個人的には、釣り動作は強いという印象があるのだが、
特に深く考えずに言葉通りに釣りと呼べる状況では
仕掛ける側は大抵リスクらしいリスクを背負ってないから
釣りという動作が強く見えるのであり、
よくよく考えると、釣りそのものが強いわけでは無い…と思っている。
釣り動作が強く見えるが、実は釣りそのものが強いわけでは無い。
だから何だっていう話で当記事を締めたいと思う。
対戦ゲームでは、しばしば「待ち」が議論になる。
相手が攻めてくるのを待つのは消極的な戦法で卑怯といった具合で批判の的になったりする。
実際に相手が極端に待つ戦法を取った場合、
どうやって相手と戦えば良いのかという答えの1つが釣りになると思う。
「待ち」と一言で言っても、相手はただ待っているわけではなく、
こちらの様子をずっと見ているはずだ。
そして特定の場面で適切な対処をすることで勝とうとしている。
だから実際には、適切な対処をするためのトリガーのような場面が存在するはずだ。
それが当記事で何度も言ってきた「相手が動く条件」ということになる。
待っている相手の動く条件に触れ、
その時の相手の対処行動に対してメタを張ることで、
待ちを崩すことが可能になるかもしれない。
「かもしれない」の理由は、実際に待ちを崩せるかどうかは、
相手が動く条件に触れるときに背負うリスクとか、
相手の対処行動に対するメタ行動が存在するかどうかとか、
そういったものに委ねられるからだ。
いくら一方的に釣りを仕掛けられても、
待ちを崩すのが無理な可能性もあったりするのは、
釣り動作自体が強いわけではないからだと思う。
対戦を見ていると、お互いになかなか攻撃を出さず、一定の間合いで互いに様子を探りあっているという場面を見ることもあるだろう。
これは理解の無い人にとっては、お互い待ちあってるだけかもしれないが、その2人の動きには何処かに釣りの要素が入っているはずだ。
攻撃を当てられそうな場面が何度もあるが、実際に攻撃を当てに行くと狩られてしまうという瞬間が何度もあるのだ。
「相手が動く条件に触る」「相手の特定の行動にメタを張る」という行動に付随するリスクを何度も背負っているのだ。
だからこそ、もし相手が待っているせいで勝てないと感じるのであれば、
「実は相手の釣りに引っかかっているだけなのではないか」と考えてみて欲しい。
釣りはある程度対戦に慣れている人なら、誰でも無意識でやっている。
「この場面の相手はこの行動を取りやすい」という知識を、誰しも経験則で持っているのだ。
自分の攻撃が当てられない、相手の攻撃を避けられないという方は
対戦の中には数多くの釣りが存在するということを認識して
釣りという視点を持つことで何か良い変化が起こせると思う。
これは蛇足かもしれないが、
待つとか攻めるとかいうスタンスの議論は多くのものが不毛だと思う。
待つべきか攻めるべきかというのは美学の問題じゃなくて
リスクリターンの問題だと思うからだ。
待ちを糾弾するのは、明らかにそれが戦術として妥当じゃない時だけで良いんじゃないかな。
少なくとも普通の対戦ゲームの中では待ちが問題になる場面があるとは思えない。
まあ「つまんない」と言われたなら何も言い返せることは無いけど。