【サンプリング】
ヒップホップは言うに及ばず、1990年代以降に流行したアシッド・ジャズや、
クラブ・ジャズによる4ビートジャズの再評価により、
ジャズの音源はサンプリングされまくってきた(こんな大雑把なまとめでいいのか?)。
中でも、ジャジー・ヒップホップのトラックメイキングには
ジャズのフレーズ・サンプリングは欠かせない要素だけど、
あれだけ多くの音源が発表されているにもかかわらず、
エリントン・ミュージックのサンプリングは驚くほど少ない。
以下に列挙してみる。
【サンプリング】
・Duke Ellington & John Coltrane, ’62 9/26, impulse
Duke Ellington & John Coltrane
#1 In A Sentimental Mood のイントロは、
エリントンの音源にしては珍しくサンプリングされまくっている。
今のところ確認できたのは以下の4つ。
1. The Art of Love and War(邦題「愛と闘争のアート」) / Angie Stone
#4 make it last
音源はこれ。
他には、これとか。
"Transitions / ARTS THE BEATDOCTOR"
#5 crazy times (feat. Skiggy Rapz)
音源はこれ。
この曲、Mellow Beatsのコンピレーションにも収録されているから、
知っている人も多いかも。
#14 crazy times (feat. Skiggy Rapz)
3. Mood Swing / Asheru (Ft. Talib Kweli)
曲を構成するリフとして、曲全体に使用。
コルトレーンのテナーも使われている。
4. Free Your Turntable and Your Scratch Will Follow / DJ Cam
2:10 辺りからが該当箇所。
軽く「かすった」ところではこんなものも。
2010年、その急死の知らせに世界中が涙したNujabes。
そのトリビュート・アルバム、『modal soul classics II -dedicated to...Nujabes 』 に、
こんな曲が収録されている。
3. No One Like You / Zack Austin
メロウなジャズのフレーズをサンプリングして、
ヒップホップのトラックに乗せた、典型的「Mellow Beats」な作品。
サンプリングの切り取り方も、その利用の仕方も凡庸だけど、
元ネタがエリントンの「Star Crossed Lovers」なのが渋い。
これ、演奏はエリントン関係ではないと思うけど、
そもそもクラブ関係でエリントンナンバーがカバーされる事自体珍しいので挙げておく。
さて、驚くほどサンプリングされることが少ないエリントンだが、
ここでとんでもないリミックスを発見。
1997年発売のシングルB面で、川辺ヒロシによるリミックス。
2017年現在では、『宇宙 ベスト・オブ・フィッシュマンズ』[Disc 2]に収録されている。
FISHMANSにエリントン…。
まず、この発想がすごい。
元ネタはエリントンの「Silk Lace」("In The Uncommon Market"。)で、
ジミー・ハミルトンのクラリネットをフィーチャーした美しも妖しい曲。
はっきり言ってリミックス自体はエリントントラックにMAGIC LOVEを乗っけただけの
イージーなコンセプトなんだけど、繰り返しになるが発想がすごい。
というのも、Fishmansの音楽に漂っている「どうしようもない切なさ」と、
エリントン・ミュージックの「グロテスクなまでのブラックネス」なんて、
まず合わないじゃないですか。
そこを敢えて組み合わせてみようとするその心意気が独創的。
結果、組み合わせることによってお互いの特長が相殺されてる気もするけど…。
というわけで、このリミックスが成功してるかどうかどうかは別にして、
この発想は評価すべきだと思うのです
(ゴツゴツとした手触りからくる、「ある種の不気味さ」は出てると思う。
リミックスの面白さとは、意外性を楽しむところにあるとおもうので、
その意味ではもちろん成功してますね)。
さて、一時期流行したエレクトロ・スイング。
スイング・ジャズのノスタルジックでゴージャスなサウンドを
アゲアゲのパーティミュージックに大胆に利用する、というコンセプトだけど、
管理人はどうもブームに乗りきれず、距離をおいて聴いてました
(でも、Club Des Belugasは特別! スイングジャズとは無関係にカッコいいです)。
一般的なイメージとしては、「エリントン・ミュージック=スイング・ジャズ」だから、
サンプリングとかたくさんあってもいいはずだけど、
エリントンに関するものは意外に少なかったように思う。
エリントン・ミュージックが独特すぎたため、
使いたくてもうまく使いこなせなかった、というのは深読みだろうか。
管理人が耳にしたのはこんなところ。
Ring Dem Bells / G-Swing
Caravan / G-Swing
両方とも、G-Swingのアルバム、『Swing For Modern Clubbing』から。
毒気を抜かれ、かわいくまとめられてしまった感があるが、
これはこれで楽しい……といえなくもない。
ただ、抜かれた毒気にこそエリントンの魅力が存在するわけで、
管理人としては複雑な気持ちです。