大西順子(おおにし じゅんこ、1967, 4/16-)
大西順子のピアノは、エリントンのピアノと近いところにある。
管理人にとって、大西順子は今でこそ偏愛するピアニストだが、
初めて聴いたときはそのよさがよくわからなかった。
書店に並ぶジャズ雑誌の表紙を飾るそのキレイなたたずまいに憧れて手にとったものの、
そのビジュアルと音のギャップによくない意味でノックアウト。。。
ゴツゴツしたタッチで、メロディらしきフレーズがなかなか出てこないし、
取り上げてるモンクやミンガスの曲も「?」だった。
ジャズ・ピアノといえばビル・エヴァンスで、
『Waltz for Debby』を聴いてうっとりしてるようなジャズ聴き始めの田舎の高校生には刺激が強すぎた。
つまるところ、どういう聴き方をすればいいのかよくわからなかったわけだ。
そのカッコよさに開眼したのは、モンクの変態性に犯され、ミンガスの体臭を知り、
大学に入ってエリントンの洗礼を受けてから。
久しぶりに『WOW』を聴いてみると、それまでとは真逆な印象を受けたことに驚いた。
時にピアノというよりもパーカッションとして叩き込まれるフレーズ、
そして、メロディよりもハーモニーを重視して重いグルーヴでゴリゴリと疾走するスタイル。
これ、エリントンだ。
・WOW, 1992, 9/3-9/5, (発表93年 1/20), EMI
このアルバム、何度聴いてもいいです。
エリントンの影響が感じられるのは、#2のRockin'in Rhythmよりも、
むしろ#1のThe Jungular。
・Crusin' '93, 4/21-4/22, EMI
エリントンマニアとしての本性を現したセカンド。
エリントン曲として、#2 The Shepherd、#5 Melancholia と #6 Caravan をカバー。
特に#2 の The Shepherd は、知る人ぞ知るエリントンの名コンボ演奏だったりします。
60年代の演奏。The Shepherdは「First Concept」と「Second Concept」の2バージョンを収録。
大西順子と異なり、この曲でエリントンはアドリブを展開するというよりも、
定型フレーズや「キメ」を使った濃密なバンドサウンドの構築を目指している。
なんといってもErnie Shepardが素晴らしい!
また、後年、エリントンは全く違うアレンジでこの曲をsacred concertで取り上げる事になるのだが……それは別項で。
なお、大西順子氏はエリントンと同じくらいモンク・Loverでもあるが、そのモンクのエリントンカバー集、『Plays Duke Ellington』について大西氏が語った貴重なインタビューが存在する。
インタビュー時期はちょうどこの『クルージン』収録直後で、「キャラバン」のアレンジの元ネタはモンクなの、といったコメントが興味深い。
【参考:「Kinda Dukish」】「ジャズ・ミュージシャンは『Monk Plays Duke Ellington』を愛する。」
・Piano Quintet Suite, ’95, 7/7/11
これではクロージング曲として、セッション色が濃い「A列車」をカバー。
マーカス・ベルグレイヴのボーカルは、アーニー・シェパードへのオマージュかと。
・Pandora, Jazz Workshop
Disc 3で、川嶋哲郎とデュオで Solitude をカバー。
…ええと、それからなんやかんやありまして、引退宣言後の復帰作でもさりげなくエリントンに言及。
・楽興の時, 2009, EMI
ボーナス・トラックのライブ演奏でエリントンをカバー。
暴れ倒した「So Long Eric」のチル・アウト、「Mood Indigo」をバックに、
「明日も演ってます (^o^)/」のクロージング・アナウンス。
アフター・アワーズの最中にポロッと弾いてしまった
「Do Nothing Till You Hear From Me」を呼び水に、第2戦がはじまってしまうのはミュージシャンの悲しい性なのでしょう。
繰り返されるクレッシェンドの大団円はサービス過剰だけど、
復帰第1作をエリントンでまとめてくれたのはうれしかった。
また、 2017年7月3日、Web音遊人インタビューの「音で遊ぶ人と聞いて想像するのは?」の質問には、
「デューク・エリントンかな。自身も言っていますが彼にとってオーケストラは楽器なんです。
ビッグバンドのイメージが強い人ですが、実は宗教音楽からパーカッションだけのアルバムまで幅広い」
と答えている。
エリントンへの愛は変わらず在り続けているようだ。