(Alice Babs 1924, 1/26 - 2014, 2/11)
1963年2月、ヨーロッパツアー中のエリントン一行はストックホルムに2日間滞在し、1回の公演とSverige Radio TVによる演奏の撮影を行う。このときエリントンは3オクターブのソプラノ歌手、Alice Babsと出会い、その歌声に惹かれてレコーディングの約束をすることとなる。
2月7日に出会い、28日にレコーディング。そのときの作品がこれ、『Serenade to Sweden』である(Reprise, 発表は3年後の66年)。編成はトリオ演奏+ボーカル。ピアノは曲によってストレイホーンと交代。佳作なのに長い間CD化が見送られてきた、美しくも不幸な作品だ。
・Serenade to Sweden, '63, 2/28-3/2, Reprise (発表は3年後の66年)
この全世界でCD未発売だった作品が、ついに2017年2月3日に発売された。
細かい話だが、メンバーのクレジットには媒体により誤差がある。
B.Gilbert Rovere, ds. Christian Garros, Kenny Clarkが正しいだろう。
少し話が脱線するが、63年の2月、エリントンはヨーロッパで暴れまくっていた。
1月半ばにイギリスに渡ったエリントン一行は、同月末にはパリに移り、
2月アタマからオリンピア劇場で怒涛のライブを行う(2/1, 2)
このときの演奏は『パリコン』に収録される。
その後一行は北に向かって演奏旅行。
スウェーデン、ストックホルム、ハンブルク、ベルリン、チューリッヒ、ミラノと南下したところで
22日には『Jazz Violin Session』収録。
その後23日に再びパリに戻るとすぐにオランピア劇場で締めくくりのコンサート。
24日 『Duke Ellington Presents The Dollar Brand Trio』を監督し、
同日、さらにストレイホーンを加えて『A Morning in Paris』を録音する。
つまり、この日2枚の作品を録音した(ライナーノーツには23日とあるが、諸データから24日1だと思われる。なにしろ23日はオランピア劇場でコンサートをしており、そのときの演奏が『パリコン』に収録されているのだから)。
そして28日にバブスと『Serenade to Sweden』の収録をはじめ、翌日3月1日に録音完了。
まさに「グレート」。絶倫としかいいようがない。
この快進撃を、管理人は「63年2月の奇跡」と呼んでいる。
これについては、 別館でもう少しだけ詳しく書いた。
さて、バブスとの親交はエリントンの晩年まで続く。
Second Sacred Concert で共演したりもするのである。
旧友たちが次々と様々な形で自分の前から姿を消していく日々の中でも、
アリス・バブスとの関係が途切れることはなかった。
老エドワード、晩年の幸福な1枚。
・Duke Ellington in Sweden 1973(Capris, 2009)