・Take The "A" Train (1941, Billy Strayhorn)
エリントン・オーケストラのテーマ曲。
エリントンの代名詞と言ってもいい曲だけど、
実はこの曲もストレイホーンの手によるもの。
Aメロ3・4小節目の2小節にわたる♭5thのロングトーンとか、
よく聴くと「後でじわじわとクセになる」ストレイホーン臭がプンプン。
「A Train」というのはニューヨークのブルックリン東地区からハーレムを経てマンハッタン北部を結ぶニューヨーク市地下鉄A線 (別名「8番街急行」) のこと。
また、隠語として黒人解放運動のことも指すらしいが、
こちらは調査中。
余談になるが、ジャズを学び始めた大学1回生の頃、
「叡山電車で行こう(Take The A-zan Train)」という曲を作っていた先輩がいた。
確かホールトーンを使った曲だったように思う。
まあ、京都人なら1度は思いつくネタですね。
他にも、「C列車で行こう」(毛皮のマリーズ)
【カバー演奏】
, 1955
「This is ハードバップ」な演奏が聴きどころ。
素晴らしい演奏だけど、エリントン臭薄し。
・The Star-Crossed Lovers
シェイクスピア組曲"Such Sweet Thunder"中の1曲で、
ホッジスフィーチャー曲。
「Star-Crossed Lovers」とは「星の巡りの悪い恋人」くらいの意味だけど、
ここでは「ロミオとジュリエット」のこと。
ベースのハーモニクスやら、
ハリー・カーネイのsaxセクションでの浮きっぷり(もはやリードです)とか、
聴きどころ満載の曲。
ベイシーの「Lil' Darlin'」を実際にやった人ならわかってもらえると思うが、
ビッグバンドで、スロー・テンポの曲をグルーヴさせるのは実に大変。
ベイシー・バンドにはフレディ・グリーンがいた。
エリントン・オーケストラでこの曲をグルーヴさせているのは、
やはり耽美的なハーモニーなのだ。
【カバー演奏】
, 2000
「変態ギタリスト」デヴィッド・フュージンスキーの古今東西カバーアルバム。
変態ギター、ウッドベース、ドラムのトリオによるシンプルなアレンジの演奏。
ホッジスのピッチベンドを表現したかったのかもしれない。
しかし、それなら「I GOT IT BAD」をやればいいのに、
という気がしないでもない。
ちなみに、このアルバムは他の選曲もちょっとおかしい。
ショパン、ジミヘン、メセニー、チック・コリア、ジョージ・ラッセル、
ロナルド・シャノンジャクソン…。
ごった煮な選曲・コンセプトのせいか、
アルバムの全体としては散漫な印象を受ける。
こんな感じの選曲、どこかで見覚えあると思ったら、
ジャコのアルバムがこんな感じだった。
そういやジャコには「PUNK JAZZ」という曲もあったなあ。
・I'm Gonna Go Fishing
映画『或る殺人(Anatomy of a Murder, 1959)』のメイン・テーマで、
上にJBのシャウトが乗っかっても全然違和感がないくらいファンキーなブルース。
いわゆるハチロク(6/8拍子)の曲で、レイ・ナンスのプランジャーがいかがわしさを演出。
歌詞を付けたのはペギー・リー。
その時に曲名もこのI'm Gonna Go Fishingとなり、
以後、この名前が定着した。
, '59
なお、エリントンはこのサントラで第2回グラミー賞 映画・テレビサウンドトラック部門を受賞した。
映画に使われたからか、ファンキーだからかはわからないが、
意外なミュージシャンにカバーされる。
「ハチロクのブルース」ということで、素材として料理しやすいからかもしれない。
【カバー演奏】
, 1999
いわゆる1999年ものか。
しかし、I'm Gonna Go Fishing の選曲にドクター・ジョンのセンスが光る。
abyss / 山中千尋, 2007
この曲を取り上げたセンスと解釈の方向は好きです。
が、どうしてもタッチの軽さとタイム感が気になるなあ…。
ジャケットは素晴らしいです。
あと、ミュージシャン以外ではこんなのも。
このジャケット、実によく似てる…
横に並べてみよう。
スパイク・リーのことだから、
偉大なるデューク・エリントンへのオマージュなのかも。
確かに、エリントンのジャケットの中で、珍しくカバー意欲を掻き立てられるジャケットです
(なにしろ、エリントンのアルバムって、ほとんどエリントン自身のアップだから…)。
・caravan ([comp.] Duke Ellington・Juan Tizol(1935), [Lyr.] Irving Mills(1937) )
Aメロはアフロ・キューバン、Bメロで4ビートになるリズム・チェンジが特徴的。
ジャズ・スタンダードとしての知名度も高く、カバーも多い。
リズム・チェンジで曲にダイナミクスが生まれるため、
単調になりがちなジャム・セッションでも重宝される。
Mood Indigoと並んでエリントンが終生ハーモニーの研究材料とした曲であり、
数多くのアレンジの異なる演奏が残されている。
「キャラバン」とは、シルクロード周辺などの西アジアにおける交易のユニットのことで、
訳語として「隊商」の語があてられており、元々はペルシア語。
『極東組曲』まで続くペルシアへのまなざしは、
1935年のこの曲まで遡ることができるといえるだろう。