22-1 障害年金制度
障害年金制度では、国民年金から全国民に共通の障害基礎年金が支給され、被用者年金制度(厚生年金か共済年金)に加入している人の場合には、その被用者年金制度から障害厚生年金または障害共済年金が上乗せして支給されます。
65歳未満の人は障害年金と老齢年金とを重複して受給することはできず、どちらか一方を選択します。
65歳以上の人は次の二つの組み合わせについて併せて受給できます(平成18年度から)。
・障害基礎年金と老齢厚生年金
・障害基礎年金と遺族厚生年金
障害年金を受けるためには、個別に条件を検討する必要があります。詳しくは、下に書かれた窓口、年金相談センター、 医療機関のソーシャルワーカーなどに相談してください。
(1)受給要件
① 障害の原因となった病気やけがの初診日(初めて医師等の診療を受けた日)がいずれかの間にあること
・国民・厚生・共済年金加入期間
・20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の方で年金制度に加入していない期間
※老齢基礎年金を繰り上げて受給している方を除きます。
② 障害の状態が障害認定日(初診日から1年6か月を過ぎた日、またはその日以内に症状が治った場合の日)に、障害等級に定める1級~3級のいずれかに該当していること
③ 保険料の納付要件を満たしていること
(2)窓口
・障害基礎年金:市町村役場の国民年金担当課
・障害厚生年金:事業所を管轄する社会保険事務所
・障害共済年金:各共済組合
(3)障害認定基準
令和4年1月1日から、障害年金の審査に用いる眼の障害の障害認定基準が一部改正されました。
平成30年7月の身体障害者障害認定基準、令和4年1月の障害年金の障害認定基準の改正により、両制度の視力と視野の障害認定の手順は概ね一致するものとなりましたが、等級とその基準は異なります。
表11 障害年金の視力基準
等級
障害の状態
1級
視力の良い方の眼の視力が0.03以下のもの
視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
2級
視力の良い方の眼の視力が0.07以下のもの
視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
3級
視力の良い方の眼の視力が0.1以下のもの
障害 手当金
視力の良い方の眼の視力が0.6以下のもの
一眼の視力が0.02以下のもの
視野
ゴールドマン型視野計、または自動視野計を用いて測定し、認定はどちらか一方の測定結果で行われます。
表12 自動視野計に基づく障害年金の視野基準
等級
障害の状態
1級
両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
2級
両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
3級
両眼開放視認点数が70点以下のもの
障害
手当金
両眼開放視認点数が100点以下のもの
両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
表13 ゴールドマン型視野計に基づく障害年金の視野基準
等級
障害の状態
1級
両眼のI/4視標による周辺視野角度の輪がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
2級
両眼のI/4視標による周辺視野角度の輪がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
求心性視野狭窄または輪状暗点があるものについて、I/2の指標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの※改訂前の基準の範囲を改正後もカバーできるよう存置した基準
3級
両眼のI/4視標による周辺視野角度の輪がそれぞれ80度以下のもの
障害
手当金
I/2視標による両眼中心視野角度の和が56度以下のもの
両眼による視野が2分の1以上欠損したもの
表14 身体障害者認定基準と障害年金基準の比較
身障者認定基準 視覚 2018/7改訂
障害年金 視覚基準 2022/1 改訂
1級
視力の良い方の眼の視力が0.01以下のもの
1級
イ. 両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの
ロ. 一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの
ハ. ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
ニ. 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
2級
視力
1. 良い方の眼の視力が0.02以上0.03以下のもの
2. 良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
視野
1. 周辺視野角度(Ⅰ/4視標による。以下同じ)の総和が左右眼それぞれ80度以下かつ両眼中心 視野角度(Ⅰ/2視標による。以下同じ)が 28度以下のもの
2. 両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
2級
イ. 両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの
ロ. 一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの
ハ. ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
ニ. 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
「求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの」(辰巳社労士より障害年金独自の規定と)
3級
視力
1. 良い方の眼の視力が0.04以上0.07以下のもの(2級の2に該当するものを除く。)
2. 良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
視野:
1. 周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下かつ両眼中心視野角度が 56 度以下のもの
2. 両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
3級
イ 両眼の視力がそれぞれ0.1以下に減じたもの
ロ ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼の1/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下に減じたもの
ハ 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下に減じたもの
下の1時金のみで、将来悪くなったとき、年金は受けられないので注意。
固定していなければ3級で申請可能。眼瞼痙攣の場合途中で打ち切られる事例あり。
3級一時金
・両眼の視力がそれぞれ0.6以下に減じたもの
・1眼の視力が0.02以下に減じたもの
・両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
・両眼による視野が2分の1以上欠損したもの、ゴールドマン型視野計による測定の結果、Ⅰ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下に減じたもの又は自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が100点以下若しくは両眼中心視野視認点数が40点以下に減じたもの
・両眼の調節機能及び輻輳(ふくそう)機能に著しい障害を残すもの
・2013/6改訂:眼瞼痙攣などで常時両眼の瞼に著しい運動障害を残すことで作業が続けられない程度のもの
・麻痺性斜視で複視が強固なため、片眼に眼帯をしないと生活ができないため労働が制限される程度のもの。
・散瞳している状態で瞳孔の対抗反射の著しい障害により羞明(まぶしさ)を訴え、支障をきたす程度のもの。)
(4)年金額
A 障害基礎年金
1級:昭和31年4月2日以後生まれの方 1,020,000円+子の加算額
昭和31年4月1日以前生まれの方 1,017,125円+子の加算額
2級:昭和31年4月2日以後生まれの方 816,000円+子の加算額
昭和31年4月1日以前生まれの方 813,700円+子の加算額
B 障害厚生年金
1級:加入期間と給与に応じて支給、配偶者加算がある
2級:1級に同じ
3級:1級に同じ(配偶者加算はない)
C 障害共済年金
・障害等級に応じた厚生年金相当部分(報酬比例部分)と職域年金分を合算した額
・1級と2級の場合は配偶者加算がある