療育と教育
県内には見えにくさのある子どもたちのための療育・教育を行っている相談機関や学校があります。
学習の場としては、主に盲学校と地域の小中学校があります。
盲学校の入学対象者は矯正視力が概ね0.3未満の見え方の方ですが、視力以外に視野や疾患の特性も考慮をします。
また、職業教育機関として、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格の取得を目指す専門課程が盲学校に設置されています。中学卒業の資格がある方なら年齢制限なく受験することができます。
以下、学校や機関を年齢段階別にご紹介します。
(1)乳幼児
①見え方に配慮した乳幼児の教育の専門機関《山梨県立盲学校》
・幼稚部
山梨県立盲学校は、見えにくさを有する乳幼児の教育を専門に行う県内唯一の機関です。
幼稚部では通常の幼稚園・保育園と同じく3歳児から、見え方や発達に配慮した教育を行っています。
・乳幼児就学前教育相談
教育相談は、0歳児から小学校入学前の幼児に対して行っております。
お子さんの見え方の確認や、見え方に応じた日常生活での配慮点や学習の方法の提示、上手な目の使い方の指導、おもちゃの紹介、弱視レンズ等の視覚補助具の紹介、就学・進学などについて等の相談を受けています。
年齢や発達によって通常の視力検査が難しいお子さんの視機能検査もしています。
見えにくさを有するお子さんには乳幼児期からのは早期の教育がとても重要なので、必要に応じて継続的な教育相談も行っています。
相談・問い合わせ:山梨県立盲学校 Eye愛ひとみ相談支援センター
〒400-0064山梨県甲府市下飯田2-10-2
電話:055-226-3361
URL:http://www.ysvi.kai.ed.jp/
E-mail:eyeeye@ysvi.kai.ed.jp
②療育機関《障害児通園施設・児童デイサービス等》
医療的配慮のもとに障がいのあるお子さんの育成・保育を行う療育機関や、通園しながら日常生活の基本的な動作や集団生活を学ぶ障害児通園施設(児童デイサービス事業所)等が県内に数カ所あり、様々な障がいのあるお子さんが集まって集団生活をしています。
療育機関や児童デイサービス事業所の問い合わせ先一覧がまとまった冊子が以下の各機関・施設にありますので問い合わせて下さい。
相談・問い合わせ:山梨県立盲学校、児童相談所、県保健福祉事務所、各市町村の保育課、障害福祉担当など
③幼稚園・保育園
障がいのあるお子さんのために職員数を増やしたり、部屋の環境を整える等の配慮をしている幼稚園や保育園があります。
相談・問い合わせ:各市町村の保育課、障害福祉担当、山梨県立盲学校(情報提供)など
(2)義務教育段階
就学に関しては、居住地域の教育委員会と就学相談をしながら決定していきます。行い、見え方の程度や見えにくさを有するお子さんにとっての実態、また教育上必要な支援の内容、地域における教育体制の整備の状況、等を考慮し、総合的に検討して就学先を決定します。主な就学先としては、地域の小中学校、県立盲学校となります。地域の学校では見えにくさを有するお子さんのための特別支援学級である弱視学級の設置も検討できます。必要な支援の具体的な内容については山梨県立盲学校 Eye愛ひとみ相談支援センターで相談を受けています。
相談・問い合わせ:該当地域の教育委員会、山梨県総合教育センター、山梨県教育委員会、山梨県立盲学校(情報提供)など
見えにくさを有するお子さんの学びの場は多様ですが、ここでは盲学校と弱視学級の概要についてご紹介します。
①山梨県立盲学校小学部・中学部
山梨県立盲学校は、視覚障がいのある児童・生徒の専門教育機関です。見え方に配慮した教室環境や教育方法によって、通常の小中学校と同様の内容の授業を行っています。また、盲学校の教育課程には、障がいによる種々の困難を改善・克服するための「自立活動」の時間が設けられており、見えにくさを補うための視覚補助具、見えにくさに配慮したT機器の活用や白杖歩行の練習なども行っています。視覚障がいの他にも障がいのある児童・生徒には、実態にそれぞれのお子さんに合わせた学習を進めています。
相談・問い合わせ:山梨県立盲学校(上記参照)
②弱視学級
弱視学級は地域の小中学校に設置されています。
基本的には通常の学級と同様の内容の授業見えにくさを補う方法の練習をを行いますが、盲学校と同様に「自立活動」の授業も行われます。「自立活動」では主に視覚補助具活用の練習等を行います。授業は、弱視学級での個別・少人数指導と、交流学級とを組み合わせて行われています。国語や算数などの基礎的な授業と自立活動を弱視学級で行い、他の教科を交流学級での集団授業で学んでいる例が多いです。
相談・問い合わせ:在住地域の教育委員会、山梨県教育委員会、山梨県立盲学校(情報提供)など
(3)高等学校
高等学校には、現在のところ弱視学級の設置はありません。
見え方に対する配慮を専門とする教育機関は県内では県立盲学校のみです。
一般の高等学校に進学する場合は、見え方への配慮や支援のニーズについて希望する高等学校と事前によく話し合うことが必要となります。
①山梨県立盲学校高等部普通科
受験に際しては、事前に教育相談を行い、見え方に合わせた教室環境や文字の大きさ、問題の読み上げ等の配慮のもとで試験を受けることができます。
高等部普通科では、見え方に配慮した教室環境や教育方法によって、通常の高等学校と同じ内容の授業が行われます。視覚障がいの他にも障がいのある生徒については、個々の実態にあわせた教育課程で学習となります。
卒業後の進路については、大学進学や専攻科理療科等の専門課程への進学、就職、視覚障がいの他にも障がいのある生徒については福祉就労など、本人の希望と実態に合った進路を選ぶことができます。
相談・問い合わせ:山梨県立盲学校
②一般の高等学校
一般高校においては、見え方に対する配慮のもとに入学試験を受けることができます。
ただし、事前に本人や保護者、在籍中学の担当者が山梨県教育委員会や受験予定の高等学校に相談をする必要があります。入学後の配慮や卒業後の進路についても高等学校とよく話し合う必要があります。
相談・問い合わせ:山梨県教育委員会、当該高等学校
③独立行政法人筑波大学附属視覚特別支援学校(附属盲学校)
所在地は東京都文京区ですが全国から生徒を募集しており、多くの生徒が学校に併設された寄宿舎に入舎しています。
高等部には普通科、音楽科があり、多くの生徒は大学進学を目指して、見え方に配慮された環境の中で勉強に励んでいます。
相談・問い合わせ:筑波大学附属視覚特別支援学校
〒112-8684東京都文京区目白台3- 27 - 6
電話:03-3943-5421
(4)高等教育機関
あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格の受験資格を得られる盲学校の専攻科、一般の大学・専門学校、また、視覚障がい者を対象とした大学があります。
①山梨県立盲学校高等部専攻科保健理療科・専攻科理療科、高等部本科保健理療科
職業的自立のために国家資格取得を目指す課程です。
解剖学や生理学、東洋医学などの座学と実技を学び、専攻科保健理療科ではあん摩マッサージ指圧師の受験資格、専攻科理療科ではあん摩マッサージ指圧師に加えて、はり師、きゅう師の国家試験受験資格が得ることができます。
また、高等部本科保健理療科では、中学卒業資格の方に対して職業課程高等学校に準じた普通教科と、あん摩マッサージ指圧師に関する専門教科の授業が行われています。専攻科保健理療科と同様にあん摩マッサージ指圧師国家試験の受験資格が得られます。
入学に際しての年齢制限はないので、高等学校新卒生徒だけではなく、成人してから視覚障がいとなった方も多く在籍しています。
相談・問い合わせ:山梨県立盲学校
②一般の大学、専門学校等
一般の高等学校への進学と同様に、事前に入学を希望する大学や専門学校と、受験時の配慮や特別措置、入学後の見え方への配慮や支援のニーズについてよく話し合う必要があります。センター試験での特別措置の詳細については大学入試センターに問い合わせてください。
相談・問い合わせ:当該大学、当該専門学校、大学入試センター
③国立大学法人筑波技術大学
茨城県つくば市にある国立大学で、視覚や聴覚に障がいのある方が学ぶ大学です。
視覚障がい者を対象とした学部には、情報保障、情報通信技術に関する情報科学と人権や、マイノリティと社会の関係に関する障害社会学に関連した分野を学ぶ教育課程である「共生社会創生学部」 (2025年度新設)と「保健科学部」があります。「保健科学部」には、「保健学科」(鍼灸学専攻、理学療法学専攻)と、情報科学とその応用(福祉情報工学,機械学習,ビジネス等)に関連した分野を学ぶ「情報システム学科」があります。
相談・問い合わせ:筑波技術大学保健科学部
〒305-8521茨城県つくば市春日4- 12 - 7
電話:029-852-2890
URL:https://www.tsukuba-tech.ac.jp/
視覚障がい者の大学受験について。
文部科学省の取り決めと、具体的な対応についてのQ&Aを、それぞれ文部科学省のホームページと、独立行政法人 日本学生支援機構のホームページから抜粋したものを載せます。
<文部科学省HPより>
身体上の障害等にかかる特別措置
身体上の障害等により、受験の際に特別措置を希望する方は、通常の出願書類にあわせて、「高等学校卒業程度認定試験身体障害者等受験特別措置申請書」及び「医師の診断書」の提出が必要となります。提出された書類を基に、文部科学省で審査を行い、特別措置を決定します。
○特別措置の対象者及び対応する特別措置
視覚障害
・点字による教育を受けている方
→「点字による解答(時間1.5倍)(別室)」と視覚障害に関するその他の措置
※出題は点字により行います。
・良い方の眼の矯正視力が0.15未満の方
・両眼による視野について視能率による損失率が90パーセント以上の方
→「文字による解答(時間1.3倍)(別室)」と視覚障害に関するその他の措置
・上記以外の視覚障害者
→「点字による解答(時間1.5倍)(別室)」及び「文字による解答(時間1.3倍)(別室)」以外の視覚障害に関する措置
出典:文部科学省 HP http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/06033010/005.htm
<独立行政法人 日本学生支援機構より>
Q 入試問題の点訳や点字解答の文字化をしてくれる団体はありますか。
A 入試問題の点訳や墨訳(点字解答を通常の文字に直すこと)を行なう組織として「全国高等学校長協会入試点訳事業部」があります。入試点訳は原則として試験当日の朝から大学内で点訳作業を開始し、各科目の試験開始までにすべての問題を点字化・触図化します。ただし、大学側が試験日前に点訳作業を希望する場合には、前もっての作業も可能です。
なお、費用は点訳・墨訳枚数に応じて算出された点訳料と機材搬入費、また遠方の場合には別途交通費等がかかります(全国に対応しています)。その他、入学後の定期試験の点訳・墨訳にも対応可能です。
お問い合わせ:全国高等学校長協会入試点訳事業部
〒112-0015 東京都文京区目白台3-27-6
筑波大学附属視覚特別支援学校内401号室
T E L:03-3945-6824(直通)
F A X:03-5981-9985(直通)
E-mail:ntj@braille-exam.org
U R L:https://www.braille-exam.org/
Q 視覚障害がある受験希望者に対する注意点について教えてください。
A 一般的には、大学入試センター試験の特別措置を参考にすることができます。
視覚障害のある受験生の特別措置としては、
◆点字による出題・解答、試験問題・解答用紙の拡大
◆解答方法の変更
◆ルーペや拡大読書器
◆書見台、卓上ライト等の支援機器の持込許可
◆別室受験
◆時間延長
が一般的です。
学生の状況によっては、パソコンを使用することも考えられます。その他の配慮については、本人または高校の進路指導担当者等と十分な打ち合わせを行ない、その上で決めていくことが必要です。
なお、点字受験には、
◆短時間に大量の問題を読んで答える形式の試験には向かない
◆図表の読み取りには多くの時間を要する
などの受験生にとって不利な点があります。
そのまま出題すると点字受験者にとって不適切な問題であることが懸念される場合には、入試問題の点訳の際に、入試点訳者と大学の担当教員との間で相談を行ない、問題の一部を変更したり、試験を通じて問いたい能力に合わせた代替問題を準備する、などの配慮をすることが望ましいといえます。実際にそのようにしている大学もあります。
出典:独立行政法人 日本学生支援機構HP http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/faq/faq7.html