はじめに

(第 3版 2015年8月)

序 (第3版)

第3版の編集委員会は2014年9月に開始したが、今回は難航した、というのも制度がより複雑化したからだ。

以下はいずれも医師にその知識がないと患者に伝えることができず、厚労省から、医師に直接の通達があるわけでないので、知る人ぞ知るの制度となり、患者にとっては、会う医師によっては恩恵を得ることのできない、しかも手続きを何度もしなければいけない、ある意味いじわるな制度である。

医師、患者双方にもっと優しい、視力、視野、オプションで評価できるFunctional Vision Scoreを一回取るだけで、すべての制度が受けられるかどうかを判定できる制度に変化してほしい。

大きく書き替えた部分は以下の3点である。

1点は障害年金の初診日の認定が病院の証明が必要であったものが、H27年10月から「初診日を証明する参考となる書類」の添付でも初診日と認めることができるようになった。

2点目に介護保険を追加した。介護保険:65歳以上はどの疾患でも基準を満たせば訪問介護、家事の支援などが受けられるが、眼科においては糖尿病網膜症が介護保険における特定疾病と言われ、40歳以上65歳未満であっても介護保険が適応される。

http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html

また、そもそも介護保険には視覚の項がないので、日比野らによれば、以下の項を書き加えることが示唆されている。

第1群(身体機能・起居動作)調査項目で視覚に関連する項目

書き添えること

1-7 歩行 (白杖がないと危ない)

1-9 片足での立位 (1秒以上立っていられない。)

1-10 洗身 (スポンジ シャンプー 石鹸が見つからない。)

1-11 爪切り (飛んだ爪がどこに行くかわからない)

詳しくは介護保険の項をご参照ください。

3点目に障害者総合支援法に難病が追加され、身体障害者手帳を取得していなくても難病に該当している方は障害者サービスを受けられる可能性がある。

総合支援法の「特殊の疾病または難病など」332と難病法の「指定難病」306のサービス範囲の違いは後者が

1. 発病の機構が明らかでない

2. 治療方法が確立していない

3. 患者数が人口の0.1%程度に達しない

4. 長期の療養を必要とする

5. 診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている

という基準を持っていますが

前者はこのうち1と3は要件としない。

前者であれば補装具申請は可能

後者であれば医療費助成は可能

私たちが調べた限りでは、眼科疾患では

指定難病は、網膜色素変性、黄斑ジストロフィ、レーベル遺伝性視神経症、ベーチェット病、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、重症筋無力症などが中でも特定疾患と呼ばれ、特に補助が大きい。(その疾患にかかる医療費の自己負担が3割の方は2割となる。また所得によって月額自己負担金が0-30000円ある。)スモンはH27年1月1日に特定疾患から除かれた。

総合支援法の難病には、加齢黄斑変性、多発性硬化症、大動脈炎症候群、悪性関節リウマチ、ウェジナー肉芽腫症、ウィリス動脈輪閉塞症、神経線維腫症、黄斑ジストロフィー、IgG4関連疾患、レーベル遺伝性視神経症、潰瘍性大腸炎などがあります。

4-4 難病の項をご参照ください。

また難病の手引きもご参照ください。


平成27年8月23日

加茂純子(甲府共立病院眼科 編集長)

大塚恵 (視覚リハビリ指導員)

萱沼祐輔 山梨県障害者ITサポートセンター(福祉プラザ)職員

五味梨恵子(甲府共立病院 ソーシャルワーカー)

酒井弘充 (山梨県立盲学校教諭)

佐野尚子(福祉を考える会)

田辺直彦(田辺眼科 副院長)

原田亮 (甲府共立診療所 視能訓練士)

福本康之 (山梨県障害福祉課)

穂阪和宏 (山梨網膜色素変性患者の会 ナシの実 元会長)

吉田朋子 (山梨県立盲学校教諭)