2-1.はじめに

平成20年(2008)の11月に日本ロービジョン学会の田淵昭雄理事長と守本典子理事のお計らいで、「岡山県視覚障害を考える会」からこのホームページの原本となった、-視覚に障害がある方の-「くらしの情報集」が送られてきた。

同会の情報集執筆と編纂に関わられた奥村俊通:*日本網膜色素変性症協会岡山県支部支部長、小石原紀子:岡山県立岡山養護学校教諭(前任校岡山県立岡山盲学校)、松浦勝:ボランティア、守本典子:*岡山大学医学部・歯学部附属病院眼科医師、諸氏の情熱に感銘するとともに、これは各地域で必要なものと感じた。

視覚障害者は視覚からの情報を自ら取り入れることが困難であるために、彼らに接する医療従事者、特に最初は眼科医が、おおまかであっても、これらの知識を持っていないと、制度があっても患者に伝達することはできない。

自分自身の勉強のため、そして将来出会う患者のために、山梨県版がほしいと思った。

しかし、まったく白紙から始めるのは難しく、守本先生にお願いして、岡山の「考える会」の皆さんのご好意によりPDFを無償で分けていただいた。これが2010年の1月11日であった。ご同意くださった「岡山県視覚障害を考える会」の皆様に心から感謝する。

これなら、できる。と確信を得た私は、甲府共立診療所でともに働く視能訓練士の原田亮、甲府共立病院の医療ソーシャルワーカー望月優一、齊藤徳仁と私の4人で平成22年(2010年)1月25日に第一回の編集委員会を立ち上げた。

第2回は4月6日に同じメンバー、第3回の5月27日外部から4人、第4回の7月20日さらに1人、第5回の9月21日には山梨県福祉保健部障害福祉課の担当者が加わり、まさに岡山の執筆者陣と同様のメンバーが、そろった。

交通費も出ないボランティアで集まっていただき、火曜の午後という平日にもかかわらず、2時間という時間があっという間に過ぎるという、有意義な会を重ねることができた。

編纂する中で、山梨には視覚障害者のための歩行訓練をする人がいないことに気づいた。

また、第11回日本ロービジョン学会学術総会のOrientation and Mobilityのワークショップで、島根の盲導犬センターの方が声をかけてくださり、富士ハーネス(盲導犬センター)の歩行訓練士さんが山梨まで出向いてくださることもわかった。

当院のリハビリ科医師の宇藤に相談したところ、それも自立訓練になるので、当院のOT(職業療法士)が訪問リハで引き受けますよと言ってくれたことがきっかけで、体の障害も兼ねもつ患者のために、視覚障害者の歩行訓練の学習を始めたところである。

自立支援法が、眼科に配慮が少ないことも気づき、上にあげていく必要があることも学んだ。

また、現在身体障害者の認定基準が見直されていることもあり、隔月に編集委員会をしてここまで形としたが、このページは一回書いてしまえば終わりということはなく、今後は「山梨県視覚障害を考える会」と名称を変え、今後は眼科医、視能訓練士、眼科スタッフも巻き込み、最低、季節ごとくらいに集まって、改訂していく必要があることも認識している。

(しかし、ウェブに到達できない方のために冊子としていつか発行したいという希望はある。)

そして、このページは、山梨県眼科医会の萩原会長をはじめとする理事会のご好意により、山梨県眼科医会のホームページにリンクさせていただいた。

我々もできるだけ最新の情報を届けたいとアンテナを張らせておくが、読者が早く気付かれた場合は、問い合わせのフォームより、加茂までご連絡いただきたい。

2011年1月18日

山梨県版 視覚に障害がある方の「くらしの情報集」編集長:加茂純子

甲府共立病院 眼科科長 日本ロービジョン学会評議員

日本眼科医会 身体障害者認定基準に関する委員

山梨県版:編集委員会

加茂純子 甲府共立病院・診療所 眼科医師

担当者 山梨県福祉保健部障害福祉課

佐田弘和 山梨県立盲学校教諭 Eye愛(アイアイ)ひとみ相談室

齊藤徳仁 甲府共立病院医療ソーシャルワーカー

野澤奈加子 青い鳥支援センター ヴィーヴィ

原田 亮 甲府共立病院・診療所 視能訓練士

古屋美智子 南アルプス市社会福祉協議会

穂阪和宏 山梨網膜色素変性症患者の会名誉会長(ナシの実)

望月優一 甲府共立病院医療ソーシャルワーカー

序 (第3版)

第3版の編集委員会は2014年9月に開始したが、今回は難航した、というのも制度がより複雑化したからだ。

以下はいずれも医師にその知識がないと患者に伝えることができず、厚労省から、医師に直接の通達があるわけでないので、知る人ぞ知るの制度となり、患者にとっては、会う医師によっては恩恵を得ることのできない、しかも手続きを何度もしなければいけない、ある意味いじわるな制度である。

医師、患者双方にもっと優しい、視力、視野、オプションで評価できるFunctional Vision Scoreを一回取るだけで、すべての制度が受けられるかどうかを判定できる制度に変化してほしい。 

大きく書き替えた部分は以下の3点である。

1点は障害年金の初診日の認定が病院の証明が必要であったものが、H27年10月から「初診日を証明する参考となる書類」の添付でも初診日と認めることができるようになった。

2点目に介護保険を追加した。介護保険:65歳以上はどの疾患でも基準を満たせば訪問介護、家事の支援などが受けられるが、眼科においては糖尿病網膜症が介護保険における特定疾病と言われ、40歳以上65歳未満であっても介護保険が適応される。

http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html

また、そもそも介護保険には視覚の項がないので、日比野らによれば、以下の項を書き加えることが示唆されている。

第1群(身体機能・起居動作)調査項目で視覚に関連する項目

書き添えること

1-7 歩行 (白杖がないと危ない)

1-9 片足での立位 (1秒以上立っていられない。)

1-10 洗身 (スポンジ シャンプー 石鹸が見つからない。)

1-11 爪切り (飛んだ爪がどこに行くかわからない)

詳しくは介護保険の項をご参照ください。

3点目に障害者総合支援法に難病が追加され、身体障害者手帳を取得していなくても難病に該当している方は障害者サービスを受けられる可能性がある。

 総合支援法の「特殊の疾病または難病など」332と難病法の「指定難病」306のサービス範囲の違いは後者が

1. 発病の機構が明らかでない

2. 治療方法が確立していない

3. 患者数が人口の0.1%程度に達しない

4. 長期の療養を必要とする

5. 診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている

という基準を持っていますが

前者はこのうち1と3は要件としない。

前者であれば補装具申請は可能

後者であれば医療費助成は可能

 

私たちが調べた限りでは、眼科疾患では 

指定難病は、網膜色素変性、黄斑ジストロフィ、レーベル遺伝性視神経症、ベーチェット病、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、重症筋無力症などが中でも特定疾患と呼ばれ、特に補助が大きい。(その疾患にかかる医療費の自己負担が3割の方は2割となる。また所得によって月額自己負担金が0-30000円ある。)スモンはH27年1月1日に特定疾患から除かれた。

総合支援法の難病には、加齢黄斑変性、多発性硬化症、大動脈炎症候群、悪性関節リウマチ、ウェジナー肉芽腫症、ウィリス動脈輪閉塞症、神経線維腫症、黄斑ジストロフィー、IgG4関連疾患、レーベル遺伝性視神経症、潰瘍性大腸炎などがあります。

4-4 難病の項をご参照ください。

また難病の手引きもご参照ください。


平成27年8月23日

加茂純子(甲府共立病院眼科 編集長)

大塚恵 (視覚リハビリ指導員)

萱沼祐輔 山梨県障害者ITサポートセンター(福祉プラザ)職員 

五味梨恵子(甲府共立病院 ソーシャルワーカー)

酒井弘充 (山梨県立盲学校教諭)

佐野尚子(福祉を考える会)

田辺直彦(田辺眼科 副院長) 

原田亮 (甲府共立診療所 視能訓練士)

福本康之 (山梨県障害福祉課)

穂阪和宏 (山梨網膜色素変性患者の会 ナシの実 元会長)

吉田朋子 (山梨県立盲学校教諭)

第4版への序に変えて

序(第4版) 

第4版は2018年7月の視覚における身体障害者認定基準が改訂されたのに伴い改訂した。

法律は変えないままに、視野については静的視野の基準が規定され、中心視野の欠損部は経線から引くことができ中心暗点や傍中心暗点が評価されるようになった。

しかし0.6,0.02は6級と認められても 0.2,0.1のいわゆるロービジョンは認められない。(以下の表参照) 

医師、患者双方にもっと優しい、視力、視野、オプションで評価できるFunctional Vision Scoreを1回取るだけで、すべての制度が受けられるかどうかを判定できる制度に変化してほしい。

平成30年12月2日

視覚に障害がある方の「くらしの情報集」(山梨県版 第版) 編集長

山梨県視覚障害を考える会 会長

甲府共立病院 眼科長 加茂純子

 

 山梨県版 第4版編集委員会:

金山佐保(山梨ライトハウス 視覚リハビリ指導員)

加茂純子 (甲府共立病院・診療所 眼科科長)

望月 (甲府共立病院 ソーシャルワーカー)

酒井弘充 (山梨県立盲学校教諭)

田辺直彦(田辺眼科 副院長)

原田亮 (甲府共立診療所 視能訓練士)

穂阪和宏 (山梨網膜色素変性患者の会 ナシの実 会長)

吉田朋子(山梨県視覚障害を考える会)