ISO/TR 19169:2021 Gap-analysis: mapping and describing the differences between the current GDF and ISO/TC 211 conceptual models to suggest ways to harmonize and resolve conflicting issues
現行
履歴
対応OGC標準:なし
対応JIS規格:なし
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:tr:19169:ed-1:v1:en
0.1 背景
GDF(Geographic Data Files)は当初から、ISO/TC 211規格(ISO 19100規格群)と同様の地理空間概念に基づいていた。長年にわたり、GDFは様々な交通関連応用システム及び車載ナビゲーションシステムを利用可能にするデータ構造を提供するために仕様化されてきた。GDFは、TomTom、HERE、その他のナビゲーションシステムで使用されており、今日のソリューションの基盤となっている。ISO/TC211によって作成されたISO 19100規格群は、一般的な地理空間用途の概念的基盤として現在も機能し続けている。ISO 19100規格群の基本概念規格は、特定の応用領域を利用可能にするものではないが、地理空間業界で広く採用されている。ISO/TC211規格は、INSPIRE指令などの主要な欧州法規の基盤にもなっている。
コネクテッドカーや自動運転車の増加に伴い、車両のナビゲーションシステムやコンテキストアウェアネスシステムと、地図作成・道路管理者(道路側の関係者)の間で地理空間情報を共有する必要性が高まっている。これらの関係者間での地図データの交換には、車載ナビゲーションシステムの地図データが道路側の関係者の地図データと整合していること、そしてデータ交換が明確かつ一貫した方法で安全性と効率性に関する応用システムを堅牢にサポートしていることを保証するために、広範な解釈と変換ルールが必要になる。
備考1)コネクテッドカー(connected car)とは、ICT端末としての機能を有する自動車のことである。
「総務省平成27年度版情報通信白書 第2部 ICTが拓く未来社会」を参照
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc241210.html
備考2) コンテキストアウェアネスシステム (contextual awareness systems)とはコンピューターがユーザーや周囲の状況、環境の変化を認識・理解し、その状況に応じた適切なサービスや情報を提供するシステム
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A2%E3%83%8D%E3%82%B9
GDFは、道路車両の自動化の要件に加え、公共交通機関、地理空間データ、ナビゲーションデータといったより広範な応用分野への適応を目指して開発が進められている。GDFの主要概念及びISO/TC 211規格の主要概念の整合性の欠如は、統合規格の総合的な有効性の低下、規格準拠データの効率的な利用の複雑化、そして非効率的な変換に起因するリスクと脅威の増大を招く。これは非効率であり、主にGDFとISO/TC 211規格の概念モデル間の調和の欠如が、その原因になっている。
どちらのモデルも広く利用されており、GDFは車載ナビゲーション業界で、ISO 19100規格群は地理空間業界や世界中の公的機関で利用されている。したがって、一方の関係者グループがもう一方の規格に移行することは、業務に支障をきたす可能性がある。また、これらの規格は機能的に直接同等というわけでもない。したがって、本報告書の基礎となる作業は、二つの概念間のギャップを特定し、それを埋める方法を提案することを目的として行われた。
最初にギャップ分析を実施し、その後、ギャップを埋める手段を提案し、最終的に必要な調和を実現するための標準又は応用スキーマをどのように作成するかを決定する必要がある。GDFとISO/TC 211の概念を整合させるために、概念を調整する機会を特定することは、道路・車両データシステム、そしてより広範な利用における地理空間データ集合の相互運用性を向上させる必要性を示している。
この報告書では、比較分析と推奨事項が示される。分析と推奨事項は、大まかに言って、ISO 19100ファミリーベースの応用スキーマを作成するためのGDFの修正を提案している。その目的は、以下のとおりである。
— ISO/TC 211の支援を受けて、GDFを自動運転車両に対応させる。
— すべての関係者(自動車メーカー、地図メーカー、地図作成機関、道路所有者)間で地図データ交換を可能にする。
— 欧州機関、指令、CEN、TN-ITSやDATEX IIなどの欧州規模のプラットフォーム、そしてTISAなどの国際的な利害関係者グループで使用されているISO/TC 211ベースの標準および関連技術と整合させる。
この報告書の制作過程において、GDFの様々なバージョンが使用されレビューされた。現在公開されているGDFのバージョンは、GDF v5.1、第1部として知られており、ISO 20524-1(2020年3月30日公開)及びISO 20524-2(2020年11月30日公開)として公開されている。これらの文書は、以前使用されていたISO 14825:2011(GDF v5.0)を改訂したものである。ISO 14825:2011は廃止された。この報告書内の分析では、GDF v5.1(ISO 20524-1及びISO 20524-2)を参照基準(reference baseline)として使用している。
0.2 推奨の概要
0.2.1 一般
この項は、本報告書全体を通して提示された推奨事項をまとめたものである。各推奨事項が要約されており、詳細な説明については、関連する参照条項を参照することを推奨する。また、各推奨事項に対応することが期待される主要な関係者を記載している。
0.2.2 モデルの構造
7.1項及び7.2.1項をみよ。
報告書内の概念の保守、改訂、再利用を簡素化するため、ISO 19100規格群の構造に従ってGDFをより具体的にモジュール化することが推奨される。相互運用性を向上させ、GDF固有の概念の必要性を低減するため、GDFの全体概念データモデルとISO 19100規格群の概念との間の関係を明確にすることが推奨される。
GDF GDMの汎用地物モデル及び地物カタログモデルは、汎用地物交換モデル及び地物カタログモデルの2つの専用モデルに分割することが推奨される。これらのモデルは、ISO 19109に準拠した応用スキーマとして定義し、モデル駆動型の実装用に準備することが推奨される。
ISO/TC 211規格におけるベルト概念とGDF地物の位置参照全般をどのように定義するかについて、更なる検討が必要である。
ベルトの線形参照をより明確にする必要がある。
ISO/TC 204及びISO/TC 211で対応すべきである。
0.2.3 一般概念モデル
7.2項をみよ。
内部 GDF ステレオタイプ「Feature」、「Attribute」、及び「Relationship」を ISO 19109 ステレオタイプ「FeatureType」に置き換えることを推奨する。
コアクラスであるFeatureとAttributeは、Generic Feature Exchange Model(GFE)でのみ使用することが推奨される。一方、Feature、Attribute、及びRelationshipカタログでは、地物クラス専用の上位クラスを使用することが推奨される。コアクラスであるRelationshipは、GDF GDMから削除できる。
GDFモデルの概念を特定の抽象度で構造化し、属性型と属性値の概念モデルをメタモデルとして定義することが推奨される。メタモデルは、ISO 19100ファミリー内のモデル、又はISO 19100ファミリーに基づくモデルとの相互運用性を向上させるために、ISO 19109 GFMを拡張する必要がある。
GDFにおける地物の定義は、物理的ではない実世界の現象も含めるように修正することが推奨される。さらに、論理的な配置のためのクラスを評価し、必要に応じて位置参照クラスに変更することが推奨される。
アルバム及びデータ集合モデルは、ISO 19109の規則に従って応用スキーマで定義することが推奨される。このモデルには、データ構成の構造及び汎用的な地物交換モデルを含める必要がある。ISO/TC 204で対応する。
0.2.4 GDFカタログ
第8項を参照。
GDF Feature、Attribute、及びRelationship Cataloguesは、ISO 19109の規則に従って応用スキーマとしてモデル化することが推奨される。GDFメタデータカタログは、ISO 19115-1で定義された要素を再利用し、アルバム及びデータ集合のモデルの一部としてモデル化することが推奨される。
Feature、Attribute、並びに、Relationship Catalogues内のFeature、Attribute、及びRelationship クラスの使用を置き換えるコア上位クラスを定義することを推奨する。
ISO 20524-1:2020、A.1、A.2、A.3における一意のIDのリストは、一貫性を保つためにUMLモデルからの報告であるべきである。ISO/TC 204で対処する。
0.2.5 符号化規則
GDFのGML実装スキーマは、GDF応用スキーマから派生させることが推奨される。GMLにおける属性コンテンツに関する要件に対応できるよう、ISO/TC 211は、ISO 19109及びISO 19136-1の改訂又は修正を検討し、これらの要件への対応を促進することが推奨される。
既存の2つの実装符号化法(MRS及びGDF-XML)を維持する場合、UMLモデルからの変換を可能にするために、特定の変換規則を定義する必要がある。これはISO/TC 204及びISO/TC 211で対処する。
0.2.6 用語の整合
附属書Aは、GDF規格(ISO 20524-1及びISO 20524-2)又はISO/TC 204で定義されている用語の定義と、ISO/TC 211のISO 19100ファミリー規格で定義されている用語の定義との間に、依然として差異があることを示している。ISO/TC 211は、TC間で定義されている用語及びその定義の整合性を向上させるための活動を主導することが推奨される。これは、ISO/TC 204及びISO/TC 211によって対処されることになる。
0.2.7 GDF時間領域構文及び他のISO規格との整合
GDF(ISO 20524シリーズ)の将来の改訂版を準備する前に、GDFがサポートする構文特性の詳細な分析と、ISO 8601シリーズ及びISO 19108が提供する特性との比較を実施し、ISO 8601シリーズ及びISO 19108に準拠した構文メカニズムの採用を目指すことが推奨される。これはISO/TC 204及びISO/TC 211で検討する。
0.2.8 GDFにおける動的座標参照系へのエポック値の追加
GDFにおいて「静的」座標参照系と「動的」座標参照系の使用を区別し、「動的」CRSへの参照に元期(epoch)値を追加する必要があるという懸念が提起されている。これはISO/TC 204で対処される予定である。
この報告書は、ISO/TC 204のGDF(ISO 20524シリーズ)と、ISO/TC 211のISO 19100ファミリーの概念モデルとの相違点をマッピングし、それらの差異を解説するとともに、矛盾点を調和させ、解決するための方法を提案する。
この報告書全体を通して、GDFとは、特に明記しない限り、GDF v5.1、ISO 20524-1、及びISO 20524-2を指す。必要に応じて、第1部又は第2部を参照する。
この報告書に引用規格はない。
この報告書には用語及び定義のリストはない。
ISOとIECは、規格化に使用する用語データベースを次のアドレスにおいて維持・公開している。
— IEC Electropedia: http://www.electropedia.org/
— ISO オンライン閲覧プラットフォーム: http://www.iso.org/obp
注記:ISO/TC 211規格で使用されている地理空間用語は、https://isotc211.geolexica.org/[21]でも参照できる。
[1] ISO 19101-1:2014, Geographic information — Reference model — Part 1: Fundamentals
[2] ISO 19103:2015, Geographic information — Conceptual schema language
[3] ISO 19109:2015, Geographic information — Rules for application schema
[4] ISO 19110:2016, Geographic information — Methodology for feature cataloguing
[5] ISO 19118, Geographic information — Encoding
[6] ISO 19136-1:2020, Geographic information — Geography Markup Language (GML) — Part 1: Fundamentals
[7] ISO/TS 19139-1, Geographic information — XML schema implementation — Part 1: Encoding rules
[8] ISO 14825:20111, Intelligent transport systems — Geographic Data Files (GDF) — GDF5.0
[9] ISO 20524-1:2020, Intelligent transport systems — Geographic Data Files (GDF) GDF5.1 — Part 1: Application independent map data shared between multiple sources
[10] Object Management Group, Unified Modelling Language Specification Version 2.5.1. 2017, Object Management Group: Needham, MA, U.S.A.
[11] Object Management Group, Model Driven Architecture (MDA) Guide rev. 2.0. 2014, Object Management Group: Needham, MA, U.S.A.
[12] Jetlund K., Onstein E., Huang L., Adapted Rules for UML Modelling of Geospatial Information for Model-Driven Implementation as OWL Ontologies. ISPRS International Journal of Geo-Information 2019, 8(9), p. 365.
[13] Coetzee S., Plews R., Brodeur J., Hjelmager J., Jones A., Jetlund K. et al., Standards - Making Geographic Information Discoverable, Accessible and Usable for Modern Cartography. In Service-Oriented Mapping: Changing Paradigm in Map Production and Geoinformation Management, Döllner J., Jobst M., Schmitz P., Editors. 2019, Springer International Publishing: Cham. p. 325-344
[14] Jetlund K., Onstein E., Huang L., Information Exchange between GIS and Geospatial ITS Databases Based on a Generic Model. Isprs International Journal of Geo-Information 2019, 8(3), p. 141,DOI: ARTN 141 10.3390/ijgi8030141
[15] INSPIRE, Data Specification on Addresses – Technical Guidelines. 2014
[16] INSPIRE, INSPIRE Data Specification on Transport Networks – Guidelines. 2010
[17] ISO 19115-1, Geographic information — Metadata — Part 1: Fundamentals
[18] CEN, CEN/TS 17268:2018 Intelligent transport systems — Its spatial data — Data exchange on changes in road attributes; CEN: Brussels, Belgium, 2018
[19] ISO 20524-2:2020, Intelligent transport systems — Geographic Data Files (GDF) GDF5.1 — Part 2: Map data used in automated driving systems, Cooperative ITS, and multi-modal transport
[20] ISO 19132:2007, Geographic information — Location-based services — Reference model
[21] ISO/TC 211. ISO/TC 211 Multi-lingual Glossary of Terms, see https://isotc211.geolexica.org/
[22] Dynamic Coordinate Referencing Systems, YouTube video by Roger Lott, UK, see https://youtu.be/IKM-bR6SwVs
[23] ISO 19148, Geographic information — Linear referencing
1 Withdrawn. Replaced by ISO 20524-1 and ISO 20524-2.
(2025-09-21)