ISO 19144-1:2009 Classification systems — Part 1: Classification system structure
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対応OGC標準:なし
対応JIS規格:なし
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:19144:-1:ed-1:v1:en
備考1)上記の原文には用語、定義及び略語が収録されていないが、TC211が公開しているMulti Lingual Glossary of Terms (MLGT)で公開されているので、この抄録には掲載した。
ISO 19144のこの部は、国際連合食糧農業機関(FAO)の出版物[1][2]に基づくものである。これは地理分類システムに関連する一連の国際規格の最初のものであり、分類子の定義と登録のメカニズムとともに、地理分類システムの構造を定義している。
その適用分野は多種多様であるため、すべての要求を満たす単一の分類システムはない。分類子の定義方法は、適用分野によって異なる。さらに、特定の適用分野で使用される分類子は、その適用分野で発生するすべての状況に適切ではない可能性があり、時間の経過とともに拡張が必要になる可能性がある。特定の適用分野で分類子の集合を拡張しやすくするために、分類子は ISO 19135 に準拠したレジスタ構造に登録される。
これにより、分類子の集合が維持できる。ISO 19135登録メカニズムを使用すると、複数の情報コミュニティ内の異なる分類子の集合に対して、個別のレジスターを定義できるため、応用システムの要求を満たすことができる。このアプローチにより、情報コミュニティ間の独立性が確保されるだけでなく、異なる分類システム間の関係を構築して、ある分類システムから別の分類システムへのデータの変換又は部分的な変換、又は二つの異なる情報源からのデータの融合が可能になる。
分類システムの概念は、地理情報コミュニティではよく知られている。分類システムを使用すると、任意の地理的領域を小さな単位に細分化できる。各単位には、その型を表す識別子が付けられる。その結果は、ISO 19123 で説明されているように、個別の範囲として表すことができる。このような分類システムは多数定義でき、任意の地理的領域に対応できる。さまざまな応用分野や、さまざまな情報コミュニティで、独自の分類システムを定義できる。しかしながら、互換性のある方法で分類システムを定義すれば、さまざまな情報コミュニティ間の相互作用が可能になる。さらに、特定の応用領域で、確立された分類システムがいくつか存在するときは、それら自体が情報コミュニティ内で規格化されていることが望ましい。
ISO 19144 のこの部では共通の構造について説明し、後続の部における特定の分類システムの規格化を可能にする。
被覆は、空間、時間、又は時空間領域内の任意の直接位置について、その範囲から値を返す関数である。離散被覆は、その領域内の任意の単一の空間オブジェクト、時間オブジェクト、又は時空間オブジェクト内のすべての直接位置について、同じ地物属性値を返す関数である。定義域は被覆関数によってカバーされる領域であり、離散カバレッジはその定義域を空間、時間、又は時空間オブジェクトの集合に分割する。分類システムを適用した結果を表すために使用される離散被覆の幾何は、ジグソーパズルのように組み合わされたポリゴンの集合、グリッドセルの集合、あるいは、点又は曲線の集合など、任意の型の離散被覆にすることができる。
分類システムは、分類子の集合で構成される。これらの分類子は、アルゴリズムで定義することも、分類システム定義の集合に従って確立させることもできる。分類子は応用領域に依存し、ISO 19144の他の部、あるいは、その他の規格又は出版物で定義されるか、定義される予定である。レジスターを使用すると、特定の応用分野の分類子の集合を維持できる。分類子の集合で定義することによって、空間的、時間的、又は時空間的なオブジェクトを分類することができる。
従来の地物及び分類されたオブジェクトには共通点がある。地物は、ISO 19101において実世界の現象の抽象概念として定義されている。地物のクラスには、例えば建物があるが、特定の建物 (ニューヨークの国連ビルなど) は地物クラスのインスタンスである。従来の地物は、1種類の地理情報データ集合を構築し組み立てるための原子的な単位である。
分類システムは、上から下に向かって、カバーエリア内の全体を順次分解するという逆の方法で機能する。分類されたオブジェクトは、現実世界の現象を抽象化した地物であるが、分類されたオブジェクトは、全体を分解する分類子によって必然的に相互に関連付けられているため、原子的なものではない。分類システムの単純な例では、地球全体を「陸域」又は「水域」でカバーし、属性範囲を二つに分割する二つの分類子を定義して、オブジェクトを陸域又は水域として識別できる。分類されたオブジェクトに対応する地球上の特定の領域は、型が「陸域」又は「水域」になる。
ISO 19135 では、準拠するレジスタ内の項目クラスを定義するには技術標準が必要であると規定されている。ISO 19144のこの部は、ISO 19135に準拠するレジスタのスキーマを定義し、分類子の登録に必要な項目クラスを定義する技術標準として機能する。この部では、特定の文脈で分類されたオブジェクトをつくりあげるために使用できる定義を提示するための、一連の規則を確立する。
分類子のレジスターは、相互参照システムの一部として他の地理情報コミュニティによって確立された同様のレジスターの参照元として使用できる。分類子のレジスター内の各項目間の相互参照は、レジスターの構造が情報コミュニティ間で異なる場合には難しい場合がある。ISO 19144のこの部は、分類子の相互参照システムを利用可能にできる互換性のあるレジスターを開発するための、さまざまな情報コミュニティの指針として使用することができる。
ISO 19144のこの部で定義されている分類システムの構造並びに、分類子の定義及び登録のメカニズムは一般的なものであり、土壌、地形、植生、都市化、生物多様性及び気候変動を理解するための体系など、情報コミュニティが定義するさまざまな分類システムに適用できる。この規格を使用すると、さまざまな分類システム間の関係を説明できる。
ISO 19144のこの部は、地理情報分類システムの構造並びに、そのようなシステム中の分類子を定義及び登録するメカニズムを規定するものである。分類システムを特定のエリアに適用した結果を表すために、個別の被覆の使用法を示し、ISO 19135に従って分類子のレジスタの技術的構造を定義する。
この構造は、ISO 19144の他の部で指定される特定の応用領域に対応する特定の分類システムを開発するために使用できる。
次に示す規格は、その内容の一部又は全てがこの規格の要件を構成する形で、本文中で参照されている。日付が記載された文献については、引用された版のみが適用される。日付のない参照については、引用規格の最新版(修正を含む)が適用される。
ISO/TS 19103:2005, Geographic information — Conceptual schema language
ISO 19110:2005, Geographic information — Methodology for feature cataloguing
ISO 19115, Geographic information — Metadata
ISO 19123, Geographic information — Schema for coverage geometry and functions
ISO 19135:2005, Geographic information — Procedures for item registration
4.1 用語及び定義
この規格では、次に示す用語と定義が適用される。
4.1.1
a posteriori classification
後験的分類
収集されたフィールドサンプルをクラスタリングした後で行うクラス定義に基づく、分類スキーム
[UNFAO LCCS 2:2005を引用]
4.1.2
a priori classification
先験的分類
実際に発生するものの型が、抽象的な概念分類にあうように構造化する分類スキーム
注記: このアプローチは、データ収集が実際に行われる前にクラスを定義することに基づいている。
[UNFAO LCCS 2:2005を引用]
4.1.3
classified object
分類済みオブジェクト
特定の凡例クラスに割り当てられた空間オブジェクト、時間オブジェクト、または時空間オブジェクト
[+]
4.1.4
classification
分類
分類子を使用した実世界の現象の抽象的表現
4.1.5
classification system
分類システム
クラスにオブジェクトを割り当てるための体系
4.1.6
classifier
分類子
オブジェクトを凡例クラスに割り当てるために使用される定義
注記: 分類子は、アルゴリズムで定義することも、分類システム固有の一連の規則に従って定義することもできる。
4.1.7
coverage
被覆
空間定義域、時間定義域又は時空間定義域内の各々の直接位置に対して、決められた値域からの値を返す関数として機能する地物
例:例としては、ラスター画像、ポリゴン オーバーレイ、デジタル標高マトリックスなどがある。
注記:すなわち、被覆は、各属性型に対して複数の値をもつ地物で、地物の幾何表現における個々の直接位置が各属性型に対して一つの値をもつものである。
[ISO 19123:2005を参照][翻訳はJIS X 7123:2012 4.1.7を参照]
4.1.8
discrete coverage
離散被覆
一つの空間オブジェクト、時間オブジェクト又は時空間オブジェクトの定義域の中にある全ての直接位置に対し、同一の地物属性の値を返す被覆
注記:離散被覆の定義域は、空間オブジェクト、時間オブジェクト又は時空間オブジェクトの有限集合で構成される。
[ISO 19123:2005を参照][翻訳はJIS X 7123:2012 4.1.12を参照]
4.1.9
domain
well-defined set
領域、定義域
明確に定義された集合
注記:領域は、操作及び関数の定義域及び値域を定義するために使用される。
[ISO/TS 19103:2005を参照]
[+]
4.1.10
feature
地物
実世界の現象の抽象概念
例:“エッフェル塔” という名称の現象は、他の類似の現象とともに地物型 “塔” に分類してもよい。
注記:地物は型として、又はインスタンスとして現れる。この国際規格では、特に指定がない限り、地物型を意味する。
[+]
4.1.11
feature attribute
地物属性
地物の特徴
[ISO 19101:2002を参照]
4.1.12
feature concept dictionary
地物概念辞書
地物カタログで詳細に規定できる概念の定義及び関連する説明情報を含む辞書
[ISO 19126:2009を引用]
4.1.13
identifier
識別子
関連付けられているものを一意かつ永続的に識別できる、言語的に独立した文字列
[ISO 19135:2005を引用]
4.1.14
item class
項目クラス
共通の特性を持つ項目の集合
注記:この文脈では、クラスはインスタンスの集合を指すために使用されており、インスタンスの集合から抽象化された概念を指すわけではない。
4.1.15
legend
凡例
定義された地図縮尺及び特定のデータ集合を使用して、特定の領域に分類を適用するための説明。
備考1)"ROBINSON, Arthur H., et al. Elements of cartography Sixth Edition. Wiley India Pvt. Limited. 2009. p.336"では、legendは次のように説明されている。
"Legends or keys are indispensable to most maps, since they explain the symbols, information sources, and data manipulation used in making the map. "
この書籍の邦訳として『永井信夫訳、地図学の基礎、地図情報センター、1984』があり、その296ページに「凡例」について次の説明がある。これは上記の文に対応する訳文と考えられる。
「凡例は、地図で使用される様々な記号の意味を説明するものであり、当然ながら、ほとんどの地図にとって必要不可欠な存在である。」
4.1.16
legend class
凡例クラス
分類処理を適用して得られるクラス
注記: クラスという用語に関する混乱を避けるため、分類処理の結果は凡例クラスと呼ばれる。このクラスという単語の使用は、UMLモデリングで使用されるクラスという単語とは異なる。
4.1.17
range
値域
<coverage> 関数によって被覆の定義域に関連付けられた地物属性値の集合
[ISO 19123:2005を引用]
備考1)ISO 19123-1:2023 3.1.40では、次のように定義し、二つの注記を加えている。
「<coverage> 関数によって被覆の定義域に関連付けられた値の集合
注記1:これは、ISO 19107における、より一般的な値域の定義と矛盾しない。
注記2:被覆の値域の型と値は、地物属性の型と値の概念に対応する。」
4.1.18
register
レジスター
関連する項目の記述を含む、項目に割り当てられた識別子をもつ記録の集合
[ISO 19135:2005を引用]
4.1.19
registry
レジストリー
レジスターを維持するための情報システム
[ISO 19135:2005を引用]
4.1.20
technical standard
技術規格
登録を必要とする項目クラスの定義を含む規格
[ISO 19135:2005を引用]
4.1.21
vector geometry
ベクトル幾何
構成的な幾何プリミティブの使用による幾何の表現
[ISO 19107:2003を引用][翻訳はJIS X 7107:2005 4.86を引用]
4.2 略語
UN FAO United Nations Food and Agriculture Organization 国際連合食糧農業機関
LCCS Land Cover Classification System 土地被覆分類システム
UML Unified Modeling Language 統一モデリング言語
4.3 表記法
この国際規格で規定されている概念スキーマは、ISO/TS 19103 の指針に従い、統一モデリング言語 (UML) を使用して記述されている。
このスキーマで使用されるいくつかのモデル要素は、ISO 19100 シリーズの他の規格で定義されているものである。この一連の国際規格では、慣例により、基本データ型クラスを除く UML クラス1) の名前には、標準及びクラスが定義されている UML パッケージを識別する二文字の接頭辞が含まれる。この国際規格で定義されているUMLクラスには、CLという二文字の接頭辞が付けられている。表1に、この国際規格で使用されているUMLクラスが定義されている他の規格及びパッケージを示す。
表1 —外部で定義されたUMLクラスの情報源
[1] Di Gregorio, A., Jansen, L.J.M., Land Cover Classification System (LCCS), version 1: Classification Concepts and User Manual. FAO. Rome, 2000
[2] Di Gregorio, A., Land Cover Classification System (LCCS), version 2: Classification Concepts and User Manual. FAO. Rome, 2005
[3] Sokal, R. 1974. Classification: purposes, principles, progress, prospects. Science 185 (4157): 1115-1123.
[4] Kuechler, A.W. and Zonneveld, I.S. (eds.) 1988. Vegetation Mapping: Handbook of Vegetation Science. Vol. 10. Dordecht, the Netherlands, Kluwer Academic
[5] Soil Map of the World. Revised Legend. FAO/UNESCO/ISRIC World Soil Resources Reports. No. 60 (Reprinted 1990). FAO. 1988
[6] Soil Taxonomy, USDA Agriculture Handbook No. 436. Soil survey staff, U.S. Soil Conservation Service. Washington, D.C, 1975
[7] ISO/IEC 13211-1, Information technology — Programming languages — Prolog — Part 1: General core
[8] ISO 19101, Geographic information — Reference model
[9] ISO 19107:2003, Geographic information — Spatial schema
[10] ISO 19108, Geographic information — Temporal schema
[11] ISO 19109:2005, Geographic information — Rules for application schema
[12] ISO 19111, Geographic information — Spatial referencing by coordinates
[13] ISO 19115-2, Geographic information — Metadata — Part 2: Extensions for imagery and gridded data
[14] ISO/TS 19129, Geographic information — Imagery, gridded and coverage data framework
[15] ISO 19126, Geographic information — Feature concept dictionaries and registers 3)
1) To be published.
2) There is potential confusion between the use of the term “class” as used in UML, “class” as used in a classification scheme and “item class” as used in the procedures for registration. Class as used in a classification scheme is termed legend class in this part of ISO 19144.
3) To be published.
1) 公開予定。
2) UML で使用される「クラス」という用語、分類スキームで使用される「クラス」、及び登録手順で使用される「項目クラス」の使用には、混乱が生じる可能性がある。分類スキームで使用されるクラスは、ISO 19144 のこの部では凡例クラスと呼ばれる。
3) 公開予定。
備考1) 上記2)で述べられている内容は、4.1.16に関連すると考えられるが、この肩番を持つ箇所は見当たらない。正しい位置に番号を付加する、又は、消去して付番を修正すべきであろう。
(2025-01-22)