ISO 19146:2018 Cross-domain vocabularies
現行
履歴
対応OGC標準:なし
対応JIS規格:なし
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:19146:ed-2:v1:en
情報製品の開発では、さまざまなデータ供給者から複数のデータ集合を取得して組み合わせることが多い。データの結合方法は、検討中のビジネス要求の性質によって異なり、テーマ別の表現を単純に組み合わせるだけから、高度な統合、分析、レンダリングまでさまざまである。いずれの場合も、データ供給者及びデータ処理者は、データの特性への理解を共有し、適切な解釈のもとで使用する必要がある。処理が複雑又は自動化されるほど、この理解が明確であることの必要性が高まる。
異なるデータ集合を組み合わせるときに生じる課題は、提供元が採用している用語定義の慣例が異なることに起因することが多い。データ集合は、特定の業界 (道路輸送など) を支援する専門家のコミュニティから提供されることが多い。データの内容、関係、動作を説明するために使用される用語は、業界の概念及び専門家の文化、慣例、慣行との整合性を反映している。したがって、特定の概念は、それが使用される業界の環境に応じて、異なる用語が用いられる場合がある。
さまざまな専門コミュニティから提供されたデータを結合する能力の高さは、データのビジネス上の意味を説明するために使用される用語及び概念に対する共通の理解に依存する。したがって、コミュニティの語彙間の意味の違いを調整する相互変換機能(cross mapping)が利用可能であるべきである。
この規格は、語彙間の相互変換機能の方式を提示する。これは主に地理空間コミュニティでの使用を意図しているが、より広い範囲への適用可能性もある。
この規格の目的は、オントロジーや分類法を定義することではない。その目的は、相互変換処理を実装する際に一貫性を確保するための規則を提供することである。ただし、その規則は分類学及びオントロジーの概念を参考にして、意味の相互運用性を可能にすることを目的として開発された。したがって、語彙の相互変換機能への適用は、将来のオントロジーや分類法の取り組みに情報を提供することが期待できる。
この規格では、地理空間概念の登録に ISO 19135-1:2015 の規定を適用している。また、UML並びに、用語の理論及び実践から取得した用語及び概念も採用している。
この規格では、語彙の相互変換機能の方法論を規定する。また、相互変換された語彙の記載項目を登録するための ISO 19135-1:2015 の実装法も示す。
地理情報及び地理情報科学に関連するオントロジー及び分類法の開発方法論は、この規格の範囲外である。
次に示す規格は、その内容の一部又は全てがこの規格の要件を構成する形で、本文中で参照されている。日付が記載された文献については、引用された版のみが適用される。日付のない参照については、引用規格の最新版(修正を含む)が適用される。
ISO 19103:2015, Geographic information — Conceptual schema language
ISO 19104:2016, Geographic information — Terminology
ISO 19115-1:2014, Geographic information — Metadata — Part 1: Fundamentals
ISO 19135-1:2015, Geographic information — Procedures for item registration — Part 1: Fundamentals
3.1 用語及び定義
この規格では、ISO 19144-1並びに、以下に記載されている用語及び定義が適用される。
ISO及びIECは、標準化に使用するための用語データベースを次のアドレスで管理している。
— ISO オンライン ブラウジング プラットフォーム: https://www.iso.org/obp で利用可能
— IEC Electropedia: https://www.electropedia.org/ で利用可能
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3.1.1
associative concept system
連想概念体系
連想関係(3.1.2)に基づく概念体系(3.1.5)
3.1.2
associative relation
pragmatic relation
連想関係
実用関係
経験により非階層的な主題的つながりを持つ二つの概念 (3.1.4) 間の関係
注記 1:概念「教育」及び「指導」、「パン焼き」及び「オーブン」の間には連想関係が存在する。
[ISO 1087-1:2000 3.2.23を引用]
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3.1.3
characteristic
特徴
オブジェクト又はオブジェクト集合の特性の抽象概念
注記 1:特徴は概念 (3.1.4) を記述するために使用される。
[ISO 1087-1:2000 3.2.4を引用]
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3.1.4
concept
概念
複数の特徴の独自の組み合わせによって作られた、知識の単位
注記1:概念は特別な言語に結び付けられる必要はない。しかし、異なる分類法によって導かれる社会的及び文化的な背景に影響されることはある。
[ISO 1087-1:2000 3.2.1を引用]
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3.1.5
concept system
system of concepts
概念体系
概念の体系
相互関係に応じて構造化された概念 (3.1.4)の集合
[ISO 1087-1:2000 3.2.11を引用]
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3.1.6
cross-map entry
相互変換項目
二つの概念(3.1.4)間で相互変換される関係を文書化する相互変換(3.1.8)データの集まりの一部分
3.1.7
cross-map register
相互変換レジスター
相互変換項目 (3.1.6) のレジスター
注記1: 相互変換レジスターは階層レジスタ内のサブレジスターとして実現されることがある。そのような場合には、用語(3.1.28)「相互変換サブレジスター」が使用されることがある。
3.1.8
cross-mapping
相互変換機能
異なる応用分野(3.1.12)の用語項目(3.1.31)を比較して、それらの意味関係を決定する機能
3.1.9
definition
定義
関係する概念と区別するための、説明文による概念(3.1.4)の表現
[ISO 1087-1:2000 3.3.1を引用]
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3.1.10
delimiting characteristic
限定特徴
概念 (3.1.4) を、それに関係する概念と区別するために使用される本質的な特徴 (3.1.14)
注記 1:限定特徴「背中の支え」は、「スツール」及び「椅子」の概念を区別するために使用できる。
[ISO 1087-1:2000 3.2.7を引用]
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3.1.11
designation
designator
指示子
概念(3.1.4)を指す記号による表現
注記1:用語法では三つの種類の指示子、つまり、記号(symbol)、呼称(appellation)、用語(term)を区別する。
[ISO 1087-1:2000 3.4.1を参照]
備考1)本文での用法に合うようにdesignationとdesignatorには同じ「指示子」という訳語を与えている。designationは言葉による表現をするときは「呼称」とする可能性もあったが、non-verbal designationという用法も見られ、又、注記1でも見られるように、記号による表現も考えられるため、誰かが指示して与えるものという意味で「指示子」とした。
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3.1.12
domain
応用分野
< general vocabulary > 用語項目 (3.1.31) が割り当てられている人間の知識の明確な領域
注記1:データベース又は用語集では、一般的に応用分野の集合が示され、その中にある複数の応用分野を特定の概念(3.1.4)に関連づけることができる。
[ISO 19104:2016 4.11を引用]
3.1.13
domain concept
応用分野概念
特定の応用分野(3.1.12)に関連付けられた概念(3.1.4)
注記1:概念は複数の応用分野に関連付けられ、それぞれに関連して応用分野概念として個別に識別される場合がある。
3.1.14
essential characteristic
本質的な特徴
概念(3.1.4)を理解するために不可欠な特徴 (3.1.3)
[ISO 1087-1:2000 3.2.6を引用]
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3.1.15
general concept
[SOURCE:ISO 1087-1:2000, 3.2.3]
一般概念
共通の性質によりグループを形成する二つ以上のオブジェクトに対応する概念(3.1.4)
注記1:一般概念の例には、「惑星」、「塔」などがある。
[ISO 1087-1:2000 3.2.3を引用]
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3.1.16
generic concept
包括概念
より狭い内包 (3.1.20) を持つ包括的な関係 (3.1.18) における概念 (3.1.4)
注記 1:この文脈では、より狭い内包とは特徴 (3.1.3) が少ないことを意味し、結果として概念定義 (3.1.9) の範囲が広くなる。
[ISO 1087-1:2000 3.2.15を参照 —注記 1が追加された。]
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3.1.17
generic concept system
包括概念体系
下位概念 (3.1.25) のカテゴリーに属する概念 (3.1.4) が上位概念 (3.1.26) の拡張の一部になる概念体系 (3.1.5)
3.1.18
generic relation
genus-species relation
包括関係
属–種関係
二つの概念 (3.1.4) 間の関係。一方の概念の内包 (3.1.20) にもう一方の概念の内包と、少なくとも一つの追加の限定特徴(3.1.10) が含まれる場合
注記 1:包括関係は、「単語」及び「代名詞」、「乗り物」及び「車」、「人」及び「子供」という概念の間に存在する。
備考1)ここでは同質な概念の集合を「種」、類似する種を包括する概念を「属」としている。車は、トラック、乗用車、バイクなどを含む種であり、乗り物は車、飛行機、船舶などの集まりとしての属と言える。
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3.1.19
homonymy
同形同音異義語
特定の言語において、指示子(3.1.11)と概念(3.1.4)の間の関係で、一つの指示子が二つ以上の無関係な概念をあらわすもの
注記1:同形同音異義語の例は次のとおり
—bark
—犬の吠え声
—木の幹の外皮
—帆船
注記2:同形同音異義の関係にある指示子の集まりは、homonymsと呼ばれる。
[ISO 1087-1:2000 3.4.25を引用]
備考1)日本語で「さらさら」は、「笹の葉がさらさらと揺れる」、「人の話を聞く気がさらさらない」など、同形同音で複数の意味をもつ。
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3.1.20
intension
内包
概念 (3.1.4) を構成する特徴の集合 (3.1.3)
[ISO 1087-1:2000 3.2.9を引用]
備考1) 内包(intension)は、ある概念で括られるものがもつ共通の特徴の集まりを指し、外延(extension)は、その概念が適用される、具体的なものの集合を指す。例えばすべての犬に共通の性質を犬という概念の内包、一匹一匹の犬全体のあつまりを外延と呼ぶ。
山崎正一、市川浩(編)(1970) 現代哲学事典(講談社現代新書225)、講談社
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3.1.21
monosemy
一義性
ある言語における指示子(3.1.11)と概念(3.1.4)の関係で、一つの指示子が一つの概念にのみ関連するという性質
注記1:一義性の関係にある指示子は、モノセム(monosemes)と呼ばれる。
[ISO 1087-1:2000 3.4.23を引用]
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3.1.22
operating vocabulary
操作語彙
参照語彙(3.1.24)ではない語彙(3.1.32)
3.1.23
polysemy
多義性
ある言語における名称(3.1.11)と概念(3.1.4)の関係。1つの名称が、ある特性(3.1.3)を共有する2つ以上の概念を表す。
注記1:多義性の例としては、次のものがある:
— 橋(bridge)
— 「隙間を越えて交通を可能にする構造物」
— 「弦楽器の一部」
— 「歯板」
注記2:多義性の関係にある名称は、多義語と呼ばれる。
[ISO 1087-1:2000 3.4.24を引用]
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3.1.24
reference vocabulary
参照語彙
一つ以上の他の語彙との用語比較の基礎となる語彙(3.1.32)
3.1.25
subordinate concept
narrower concept
従属概念
限定概念
特定の概念又は部分概念のいずれかになる概念 (3.1.4)
[ISO 1087-1:2000 3.2.14を引用]
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3.1.26
superordinate concept
broader concept
上位概念
広義概念
一般概念 (3.1.16)又は包括的な概念のいずれかである概念 (3.1.4)
[ISO 1087-1:2000 3.2.13を引用]
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3.1.27
synonymy
同義語
特定の言語において同じ概念 (3.1.4) を表す用語 (3.1.28) 間の関係をもつ用語
注記1:同義語の関係は、たとえば"deuterium"(重水素)及び"heavyhydrogen"(重水素)の間に存在する。
注記2:すべての文脈で互換性のある用語は同義語と呼ばれ、一部の文脈でのみ互換性がある場合は準同義語(quasi-synonyms)と呼ばれる。
[ISO 1087-1:2000 3.4.19]
備考1)日本語の場合、例えば「病気」と「やまい」、「巨大」と「おおきい」などは同義語である。
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3.1.28
term
用語
特定の主題分野における一般概念 (3.1.15) の、言葉による指示子 (3.1.11)
注記1:用語には記号が含まれる場合があり、異なる綴り形式などのバリエーションが存在する場合がある。
注記2:この規格では、言葉による指示子は常に書き言葉による指示子である。
[ISO 1087-1:2000 3.4.3を引用]
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3.1.29
terminological data
用語データ
概念 (3.1.4) 又はその指示子(3.1.11) に関連するデータ
注記1:より一般的な用語データには、項目としての用語 (3.1.28)、定義 (3.1.9)、注記、文法ラベル、主題ラベル、言語識別子、国識別子、および情報源識別子が含まれる。
[ISO 1087-1:2000 3.8.1を引用]
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3.1.30
terminological dictionary
technical dictionary
用語辞典
技術辞典
一つ以上の特定の主題分野の概念 (3.1.4)又は指示子(3.1.11) に関連する情報を提示する用語項目(3.1.31) の集まり
[ISO 1087-1:2000 3.7.1を引用]
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3.1.31
terminological entry
用語項目
用語データ (3.1.29) の集まり (ISO 10241-1:2011、3.1.2) の一部で、一つの概念 (3.1.4) に関連する用語データが含まれている。
注記1:ISO 704 で規定されている原則と方法に従って作成された用語エントリは、単一言語であるか多言語であるかに関係なく、同じ構造原則に従う。
[ISO 1087-1:2000 3.8.2を参照 -注記 1 が追加された。]
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3.1.32
vocabulary
語彙
一つ以上の特定の主題分野からの指示子(3.1.11)及び定義 (3.1.9) を含む用語辞書 (3.1.30)
注記1:語彙は単一言語、二言語、又は多言語である場合がある。
[ISO 1087-1:2000 3.7.2を引用]
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3.2 略語
この規格では次の略語が使用される。
LBS Location-based services 位置情報サービス
UML Unified Modeling Language 統一モデリング言語
3.3 概念スキーマの表記
この規格で規定されている概念スキーマは、統一モデリング言語 (UML) を使用して記述されており、ISO 19103:2015 地理情報 - 概念スキーマ言語で規定されているプロファイルに準拠する。
この規格で使用されているいくつかのモデル要素は、他の国際規格で規定されているパッケージで定義されている。それらを表 1 にリスト化する。
表1 — UML パッケージの識別子
接頭辞 パッケージ
CI Citation [ISO 19115-1:2014] 引用
RE Register [ISO 19135-1:2015] レジスター
TR Terminology Register [ISO 19146:2010] 用語レジスター
ISO/TC 211規格の以前の版では、UMLクラスの名前 (基本データ型クラスを除く) に、規格と、クラスが指定されている UML パッケージの両方を識別する二文字の接頭辞が含まれていた。しかしISO/TC 211規格の新しい版では、この規則は適用されなくなった。そこで以前の国際規格から採用されたクラスに指定された二文字の接頭辞は、この規格でも引き続き使用するものとし、この規格で新しく追加されたクラス及びパッケージでは、接頭辞は使用しない。
ISO 19103 の指針に従い、すべてのデータ要素名は、必要に応じて複数の小文字の単語を組み合わせた文字列として表され、介在文字 (「_」、「-」、スペースなど) を使用せずに、正確でわかりやすい名前を形成する。属性名、操作名、関連付け役割名、及びパラメーターの場合、最初の単語に続く各単語の最初の文字が大文字になる。パッケージ名、クラス名、型仕様名、及び関連付け名の場合、最初の単語の最初の文字も大文字になる。
備考1)上の文章は、データ要素名をはじめ、UML概念スキーマ中で使われる名前等は、すべて英語で表現することを前提にした記述である。したがって日本語で概念スキーマを作成する場合の規則については日本産業規格やJPGIS等、我が国の規格やプロファイルで規定されるべきである。
この規格には、ISO 19103、ISO 19104、ISO 19115-1、および ISO 19135-1 への合致を求める参照 (及び適合クラスの依存関係) がある。その結果、すべてのクラス (列挙とコードリストを除く) のステレオタイプは<<interface>> になる。
参考文献
[1] ISO 704:2009, Terminology work — Principles and methods
[2] ISO 860:2007, Terminology work — Harmonization of concepts and terms
[3] ISO 1087-1:2000, Terminology work — Vocabulary — Part 1: Theory and application
[4] ISO 3534-1:2006, Statistics — Vocabulary and symbols — Part 1: General statistical terms and terms used in probability
[5] ISO/CD 17572-1, Intelligent Transport System (ITS) — Location Referencing for Geographic Databases — 1: General Requirements and Conceptual Model
[6] ISO 19109:2015, Geographic information — Rules for application schema
[7] ISO 19111:2007, Geographic information — Spatial referencing by coordinates
[8] ISO 19112:2003, Geographic information — Spatial referencing by geographic identifiers
[9] ISO 19115-2:2009, Geographic information — Metadata — Part 2: Extensions for imagery and gridded data
[10] ISO 19116:2004, Geographic information — Positioning services
[11] ISO 19119:2016, Geographic information — Services
[12] ISO 19132:2007, Geographic information — Location-based services — Reference model
[13] ISO 19133:2005, Geographic information — Location-based services — Tracking and navigation
[14] ISO 25964-2:2013, Information and documentation — Thesauri and interoperability with other vocabularies — Part 2: Interoperability with other vocabularies
[15] Hogg M., Vaughan G., Social Psychology (4th edition), London: Prentice-Hall, 2005
(2025-02-13)