ISO 19141:2008 Schema for moving features
現行
履歴
対応OGC標準:なし
対応JIS規格:なし
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:19141:ed-1:v1:en
備考1)上記の原文には用語及び定義が収録されていないが、TC211が公開しているMulti Lingual Glossary of Terms (MLGT)で公開されているので、この概説には収録した。
この国際規格は、移動する地物、つまり、時間とともに位置が変化する地物に対応する概念スキーマを示す。このスキーマには、クラス、属性、関連付け、及び操作が含まれており、これらによって実装できる共通概念の枠組みが提示されるので、移動する地物を扱うさまざまな応用領域で利用可能にできる。それらには、次の分野が含まれる。
— 位置情報サービス、
— 高度道路交通システム(ITS)、
— 追跡及び誘導 (陸上、海洋、又は宇宙)、並びに
— モデリング及びシミュレーション
スキーマは、地物の平行移動や回転からなる動きを記述する仕組みを示すが、地物の変形は含まない。スキーマは、葉(リーフ)の集合又は軌道の集合として表示できる単一パラメータの幾何集合の概念に基づく。葉は、パラメータの特定の値 (たとえば、時点) で移動する地物の幾何を表し、軌道は、パラメータに対して移動する地物の幾何の中の点の経路を表す曲線である。
備考1)移動する葉及びその軌道については図1を参照のこと
この国際規格は、剛体として移動する地物の幾何を記述する方法を定義する。このような動きには、次の特徴がある。
a) 地物は、ISO 19107で指定されている空間オブジェクトで構成される任意の定義域内で移動する。
b) 地物は計画された経路に沿って移動できるが、計画された経路から外れる場合もある。
c) 運動は、軌道力、重力、慣性力などの物理的な力の影響を受ける場合がある。
d) 地物の動きは、他の地物に影響を与えたり、他の地物から影響を受けたりすることがある。例:
1) 移動地物は、事前に定義された経路(道路など)をたどり、ネットワークの一部である場合もあり、既知の点(バス停、経由地など) で経路を変更する場合もある。
2) 二つ以上の移動地物が「引き寄せられる」か、押し離される場合もある (例: 飛行機は飛行中に燃料補給される、捕食者は獲物を検出して追跡する、難民グループは力を合わせる)。
3) 二つ以上の移動地物は、一定期間、特定の空間関係を維持するように制約される場合がある (例: トラクターとトレーラー、車列)。
この国際規格は、地物に対するその他の種類の変更には対応しない。対応しない変更の例には、次のものがある:
— 地物の変形。
— 地物又はそれらの関連の継続。
— 地物の非空間属性の変更。
— 地物の幾何表現は、他の地物の幾何表現を含む幾何複合体に埋め込むことはできない。これらを可能にすると、地物が移動すると他の地物の表現を更新する必要があるためである。
この国際規格は地物の動きの幾何学的記述に関するものであるため、地理識別子で地物の動きを記述する仕組みは規定していない。これは、部分的に ISO 19133 で行われている。
次に示す規格は、その内容の一部又は全てがこの規格の要件を構成する形で、本文中で参照されている。日付が記載された文献については、引用された版のみが適用される。日付のない参照については、引用規格の最新版(修正を含む)が適用される。
ISO/TS 19103, Geographic information — Conceptual schema language
ISO 19107, Geographic information — Spatial schema
ISO 19108, Geographic information — Temporal schema
ISO 19109, Geographic information — Rules for application schema
ISO 19133, Geographic information — Location-based services — Tracking and navigation
4.1.1
base representation
基礎表現
<Moving features>
特定の参照時間における幾何オブジェクトの、局所原点と局所座標ベクトルを使用した表現
注記1:剛体幾何オブジェクトは平行移動又は回転する場合があるが、基礎表現と一致する。
注記2:局所原点及び座標ベクトルによって、工学的座標参照系 (ISO 19111) が設定される。これは、局所フレーム又は局所ユークリッド座標系とも呼ばれる。
4.1.2
curve
曲線
直線の連続な像を表現する一次元の幾何プリミティブ
注記1:曲線の境界は、その両端の点の集合である。曲線が閉路の場合、二つの端は同一であり、その曲線は(位相的に閉じている場合は)、境界をもたないとみなす。最初の点を始点、最後のものを終点と呼ぶ。“直線の連続的な像”という定義文の語句によって、曲線の連結性が保証される。位相幾何学の定理は、連結している集合の連続な像は連結であることを規定している。
[ISO 19107を引用][翻訳はJIS X 7107:2005 4.23を引用]
4.1.3
design coordinate reference system
設計座標参照系
移動するオブジェクトの基礎表現を示す工学的座標参照系
4.1.4
feature
地物
実世界の現象の抽象概念
注記1:地物は型として、又はインスタンスとして現れる。型又はインスタンスの一方だけを意味するときには、地物型又は地物インスタンスという用語を使うのが望ましい。
[ISO 19101を引用][翻訳はJIS X 7109:2009 4.8を引用]
4.1.5
feature association
地物関連
ある地物 (4.9) 型のインスタンスを同じ又は異なる地物型のインスタンスに結び付ける関係
注記:地物関連は地物の集成を含む。
[ISO 19110を参照--注記が追加されている][翻訳はJIS X 7110:2009 4.2を参照]
4.1.6
feature attribute
地物属性
地物の特徴
[ISO 19101を引用]
4.1.7
feature operation
地物操作
地物(3.2)型のすべてのインスタンスが実行できる操作
[ISO 19110を引用]
備考1)ISO 19110:2016 3.7にこの用語の定義並びに、例及び注記が示されている。
4.1.8
foliation
葉序
幾何データの単一パラメータ集合。集合を構成するプリズム内の各点は、一つの軌道と一つの葉だけにある。
備考1)葉序、葉、軌道、及びプリズムについては、次に示す図1(ISO 19141:2008 5.1 Figure 1に基づいて作成)を参照のこと。
図1葉序としての地物移動
4.1.9
geometric object
幾何オブジェクト
幾何集合を表す空間オブジェクト
[ISO 19107を参照][翻訳はJIS X 7107:2005 4.47を参照−注記は削除されている。]
4.1.10
geometric primitive
幾何プリミティブ
単一の連結で均質(等方的)な空間の要素を表す幾何オブジェクト
注記1:幾何プリミティブは、幾何構成についての情報を表す不可分なオブジェクトである。点、曲線、曲面及び立体は幾何プリミティブである。
[ISO 19107を引用][翻訳はJIS X 7107:2005 4.48を引用]
4.1.11
instant
瞬間
時間における位置を表現する零次元の幾何プリミティブ
[ISO 19108を引用][翻訳はJIS X 7108:2004 4.1.17を参照]
4.1.12
leaf
葉、リーフ
<one parameter set of geometries>特定のパラメータ値における幾何
備考1)時点などの単一のパラメータを特性とする幾何オブジェクトを表す。例えば、同じ形状を取りつつ落下する木の葉は、時点という単一パラメータによって、連続に位置を変える幾何属性をもつ。4.1.15及び4.1.8の図1を参照。
4.1.13
location based service
位置情報サービス
サービスを依頼するクライアントソフトやその他の物、オブジェクト、又は人物の所在地に依存した戻り値又はその他の特性を提供するサービス
[ISO 19133を参照]
[+]
4.1.14
network
ネットワーク
連結点と呼ばれる零次元オブジェクトの集合と、連結点を接続するリンクと呼ばれる1次元オブジェクトの集合で構成される抽象構造。各リンクは、開始 (出発、発生)連結点と終了 (終着、消滅)連結点に関連付けられる。
注記1:ネットワークは、本質的にはナビゲーション問題の議論の対象である。ネットワークは、1次元の位相複体の一種である。この観点から、連結点と位相ノードは同義語であり、リンクと有向エッジも同様である。
[ISO 19133を引用]
4.1.15
one parameter set of geometries
単一パラメータ幾何集合
区間 t ∈ [a, b] で定義される関数 f。f(t) は幾何であり、各点 P ∈ f(a) に対して、単一の点のパラメータ集合 (P の軌跡と呼ばれる) P(t) : [a, b] →P(t) が存在し、P(t) ∈ f(t) となる。
例: 構成パラメータ t を持つ曲線 C は、点の 単一パラメータ集合 c(t) である。
4.1.16
period
期間
時間の範囲を表現する一次元の幾何プリミティブ
注記1:二つの異なる時間位置が期間の境界となる。
[ISO 19108を引用][翻訳はJIS X 7108:2004 4.1.27を引用]
4.1.17
point
点
位置を表現する零次元の幾何プリミティブ
注記1:点の境界は空集合である。
[ISO 19107を引用][翻訳はJIS X 7107:2005 4.61を引用]
4.1.18
prism
プリズム
<one parameter set of geometries>
単一パラメータ幾何集合の幾何の和集合 (又は軌跡の和集合) 内の点の集合
注記:これは幾何学的プリズムの概念の一般化であり、3D空間内の二つの合同な多角形の凸包である。このような多面体は、合同な多角形の葉の配置として見ることができる。
4.1.19
temporal coordinate system
時間座標系
単一の時間単位の倍数として距離を測定する間隔尺度を基礎とする時間参照系
[ISO 19108を引用][翻訳はJIS X 7108:2004 4.1.31を引用]
4.1.20
temporal position
時間位置
時間参照系に関係する位置
[ISO 19108を引用][翻訳はJIS X 7108:2004 4.1.34を引用]
4.1.21
temporal reference system
時間参照系
時間の測定に対応する参照系
[ISO 19108を引用][翻訳はJIS X 7108:2004 4.1.35を引用]
4.1.22
trajectory
軌跡
単一パラメータ点集合によって記述される移動点の経路
4.1.23
vector
ベクトル
方向と大きさをもつ量
[ISO 19123を引用]
備考1)ISO 19123-1:2023 3.1.51に同じ用語及び定義が見られる。
[1] ISO 19101:2002, Geographic information — Reference model
[2] ISO 19110:2004, Geographic information — Methodology for feature cataloguing
[3] ISO 19111:2003, Geographic information — Spatial referencing by coordinates
[4] ISO 19123:2005, Geographic information — Schema for coverage geometry and functions
[5] ISO/IEC 19501:2005, Information technology — Open Distributed Processing — Unified Modeling Language (UML) Version 1.4.2
[6] C. S. Jensen, et al. A consensus glossary of temporal data base concepts, ACM SIGMOD Records 1994, Vol. 23 Also available as consGlos.ps from ftp://ftp.cs.arizona.edu/tsql/doc/
[7] Object Management Group, OMG Unified Modeling Language Specification, version 1.3 1999, Available from World Wide Web at http://www.omg.org/cgi-bin/doc?ad/99-06-08
[8] Luca Forlizzi et al., A data model and data structures for moving object databases. Proceedings of the 2000 ACM SIGMOD international conference on Management of data, pp. 319 – 330, Available from the World Wide Web at http://portal.acm.org/citation.cfm?id=335426&dl=ACM&coll=portal
[9] Ouri Wolfson et al., Moving objects databases: issues and solutions. Proceedings of the 10th International Conference on Scientific and Statistical Database Management, 1998, pp. 111-122
[10] Martin Erwig et al., A foundation for representing and querying moving objects. ACM Transactions on Database Systems March 2000, pp. 1-42
[11] Bourg, David, M., Physics for Game Developers, O’Reilly & Associates, 2002
[12] Hearn, Donald and Baker, M. Pauline, Computer Graphics, Prentiss Hall, 1997
[13] Savchenko, Sergei, 3D Graphics Programming, Sams Publishing, 2000
[14] Shoemake, Ken, Animating Rotations with Quaternion Curves, ACM SIGGRAPH 1985, Volume 19 Number 3, pp. 245-254
(2024-12-19)