ISO 19154:2014 Geographic information — Ubiquitous public access — Reference model
現行
履歴
対応OGC標準:なし
対応JIS規格:なし
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:19154:ed-1:v1:en
最近の Web ベース及びモバイル コンピューティングの技術の進歩により、一般の人々がコンテンツの消費者になるだけでなく、新しい充実したコンテンツの作成者又は提供者としても活動する時代が到来した。
特に急速な変化と成長を遂げている分野の一つが地理情報分野である。
一般的な意味での「場所」は、すべての移動ユーザーにとって、基本要件の一つになっている。初期の開発では、ユーザーは場所ベースのコンテンツを「消費」するだけだったが、モバイル ハードウェア装置がますます高度化し、通信ネットワーク及びセンサー Web対応社会基盤の範囲が拡大するにつれて、移動ユーザーはさまざまな種類の地理データを作成できるようになった。コンテンツの作成は、ブログ エントリ(備考1)で説明されている新しいカフェへのナビゲーションを可能にするために座標位置を使用する個人レベル、又は GPS トラック(備考2)を収集して Open Street Map プロジェクトに組み込むなどの共同作業として行うことができる。
小型の装置、組み込みシステム、無線通信、センサー ネットワーク (ユビキタス コンピューティング技術) では、地理情報の生成及び消費の両方の面で地理情報を処理する方法が必要とされる。ユビキタス コンピューティング技術は、これまで限定されていた一般の地理情報消費を超えて、一般の人々が地理情報を生成、配布、消費するための社会基盤を提供する。これらの概念は、「いつでもどこからでも、使いやすい地理情報とサービスにシームレスにアクセスできる」という形で表現される。これらの概念を地理情報へのユビキタス公共アクセスと呼ぶ。
地理情報へのユビキタスな公共アクセス (UPA-to-GI) の目標は、あらゆる「スマート」装置の使用体験(user experience)において、直感的で理解しやすく、使いやすいと感じることである。この目標を達成するには、さまざまな情報源から収集されたコンテキスト情報(備考3)が UPA アーキテクチャ内で効率的に管理される。したがって、UPA から地理情報へのシステム又はサービスは、コンテキスト情報の配信メカニズムを利用可能にする必要がある。
この国際規格は、地理情報へのユビキタスな公共アクセスを利用可能にするシステム及びサービスの標準化の要件を定義し、地理情報への UPA の要素の抽象的な記述を提示する包括的な一連の基本的な側面について記述する。
この国際規格ではさらに、概念枠組みとして構成される一連のモデルも提示されており、これを実装すると、地理情報へのユビキタスな公共アクセスを可能にする一連のシステム及びサービスの開発が可能になる。UPA 環境では、一般ユーザーは、地理情報の受動的な消費者ではなく、収集、作成、記録、使用、配布など、データと情報の管理ライフサイクルのいくつかのステップに積極的に参加することができる。
地理情報へのユビキタスな公共アクセスは、一種の地理情報サービスと考えられる。ただし、移動環境で現在使用されている標準は、UPAの要件を処理するには効率が不十分な Web 技術に基づいている。ユーザーに適切な地理情報を提供するには、ユーザーのコンテキストが記述される。
ここで指定する参照モデルでは、語彙集、写真、ビデオ、その他の情報源など、さまざまな情報資源から地理的に明示的なコンテキスト情報を抽出する方法を利用可能にする枠組みを形成するモデル グループを定義する。枠組み内の追加モデルは、一般の人々によって作成及び配布される地理データを意味的に接続してユーザーのコンテキスト要求を満たす方法、及びユーザーが操作する機器の種類に関係なく、異種の地理コンテンツにシームレスにアクセスし、統合してユーザーに提供する方法を提示する。
備考1)ブログエントリ(blog entry)とは、ブログに投稿された記事のこと。
備考2)GPSトラック(GPS トラック)とは、GPSを使って得られるユーザの軌跡
備考3)コンテキスト情報については、用語定義4.5 コンテキスト認識、及び本文7.2.2を参照のこと。
この国際規格は、地理情報へのユビキタス公共アクセス (UPA) の参照モデルを定義する。この参照モデルは、ISO/IEC 10746-1 のオープン分散処理参照モデル (RM-ODP) 及び ISO 19101の両方の標準概念を使用する。
この国際規格で規定する参照モデルは、次の事項を定義する:
— 地理情報へのユビキタス公共アクセス (UPA) の概念モデル。
— この分野における現在及び将来の仕様開発を支援する参照モデル及び枠組み。
— 地理情報の UPA のためのシステム並びにサービス内の情報及び処理のセマンティクス。
— この国際規格及び他の ISO 地理情報規格とのアーキテクチャ関係。
この国際規格は、位置情報サービス (LBS)、ユビキタス コンピューティング環境、接続オープンデータ、及び地理情報へのシームレスな公共アクセスを必要とするその他の分野に適用される。
この国際規格は、情報技術及び情報技術規格の文脈で構成されているが、応用システム開発法又は技術実装アプローチとは無関係である。
次に示す規格は、その内容の一部又は全てがこの規格の要件を構成する形で、本文中で参照されている。日付が記載された文献については、引用された版のみが適用される。日付のない参照については、引用規格の最新版(修正を含む)が適用される。
ISO 19101-1:2014, Geographic information — Reference model — Part 1: Fundamentals
ISO/TS 19101-2:2008, Geographic information — Reference model — Part 2: Imagery
ISO 19103:—1), Geographic information — Conceptual schema language
ISO 19109:—2), Geographic information — Rules for application schema
この規格の目的に応じて、次の用語及び定義が適用される。
4.1
ambient intelligence
アンビエントインテリジェンス、環境知能
ユビキタスコンピューティング、ユビキタスコミュニケーション、及びユーザーに合わせたインタフェースの融合
備考1) "ambient intelligence"とは、環境中に配置されたセンサー及び機器が感知する周囲の状況及びユーザの性質や要求に基づいて、自動的にユーザーを補助する技術を指す。
4.2
application
応用、応用システム
利用者の要求に応えるために行われるデータの操作及び処理
[ISO 19101‑1:2014 4.1.1を引用][翻訳はJIS X 7109:2009 4.1を引用]
4.3
computational viewpoint
計算処理視点
システムを、インタフェースにおいて対話するオブジェクトに機能分解することによって分散を可能にする、ODPシステムとその環境に関する視点
[ISO/IEC 10746‑3:2009 4.1.1.3を引用]
4.4
context
コンテキスト、文脈
特定の状況における実体の行動又は期待に影響を与える、実体の外見又は特性
4.5
context-awareness
コンテキスト認識
コンテキスト (4.4) 固有の情報を収集して配信し、各ユーザーに合わせたデータに変換する統合操作
例:getContext(staticFeature) = FD_Feature
注記1:この例では、getContext 操作によって、写真、ビデオなどのさまざまな情報源から、地理的に明示的なコンテキスト情報 FD_Feature が抽出される。
備考1)コンテキスト情報とは、情報資源が示す場所、情報資源の種類、そしてそのセマンティクスなどを表す。詳細については、本文の7.2.2を参照のこと。
4.6
enterprise viewpoint
事業的視点
システムの目的、適用範囲及び方針に焦点をあてた、ODPシステムとその環境の視点
[ISO/IEC 10746‑3:2009 4.1.1.1を引用]
4.7
geographic context awareness
地理的コンテキスト認識
ユーザーの地理的コンテキスト (4.4) の認識に基づく応用システム(4.2)又はサービス (4.23)行為
4.8
geographic information
地理情報
地球における場所に暗示的又は明示的に関連づく現象に関する情報
[ISO 19101‑1:2014 4.1.18を引用]
4.9
geographic information service
地理情報サービス
利用者に対して、地理情報を変換したり、管理したり、表現するサービス(4.23)
[ISO 19101‑1:2014 4.1.19を引用]
4.10
geographic information system
地理情報システム
地球における場所に関連する現象に関する情報を扱う情報システム
[ISO 19101‑1:2014 4.1.20を引用]
4.11
information system
情報システム
情報処理システムと、これに関連する人的資源、技術的資源、財的資源などの組織上の資源からなり、情報を提供し配布するもの
[ISO/IEC 2382‑1:1993 を引用][翻訳はJIS X 0001:1994 01.01.22を引用]
4.12
information viewpoint
情報視点
情報と情報処理のセマンティクスに焦点をあてた、ODPシステムとその環境の視点
[ISO/IEC 10746‑3:2009 4.1.1.2を引用]
4.13
interface
インタフェース
実体の振る舞いを特徴付ける、名前の付いた操作の集まり
[ISO 19119:2005 4.2を引用]
4.14
interoperability
相互運用性
それぞれの機能単位に固有の特徴に関する知識を利用者がほとんど又は全く必要とせずに、各機能単位が互いに通信し、プログラムを実行し又はデータを転送する能力
[ISO/IEC 2382-1:1993 01.01.47を引用][翻訳はJIS X 0001:1994 01.01.47を引用]
4.15
linked geodata
接続地理データ
セマンティックWebで公開されている地理データ及び情報資源(4.22)
注記1:これらの公開されている地理データと情報資源は、標準化された形式モデルで公開される。
4.16
ontology
オントロジー
意図された意味を明示して、現象とその相互関係を説明する、定義や公理を含む基礎となる語彙を伴う、論議領域(4.1.38)中の現象の形式的な表現
[ISO 19101‑1:2014 4.1.26を引用]
4.17
operation
操作
オブジェクトが変換や問い合わせを実行できるようにするための仕様
[ISO 19119:2005 4.3を引用]
[+]
4.18
public access
公共アクセス
一般ユーザー及び専門ユーザーの両方が情報源やサービスに自由にアクセスできること(4.23)
4.19
reference model
参照モデル
ある環境の実体間の重要な関係を理解し、その環境を利用可能にする一貫した標準又は仕様を開発するための枠組み
注記1:参照モデルは、少数の統一概念に基づいており、教育や非専門家への標準の説明の基礎として使用できる。
[ISO 14721:2003 1.7.2.63を参照 - 定義の2 番目の文を注記にした。]
4.20
schema
スキーマ
モデルの形式記述
[ISO 19101‑1:2014 4.1.34を引用]
4.21
seamless mobility
シームレスモビリティ
プロトコル、ネットワーク、周波数帯域、物理的環境に関係なく、さまざまな情報源及びサービスへの継続的及び直感的なアクセス (4.23)
4.22
Semantic Web
セマンティックWeb
意味を伴うデータのWeb(4.30)
注記1:意味を関連付けることによって、人間と同様に、自動化されたツールがデータや情報を理解し、処理できるようになる。
[ISO 19101‑1:2014 4.1.35を引用]
4.23
service
サービス
インタフェース (4.13) を通じて、実体によって提供される機能の個別の部分
[ISO 19119:2005 4.1を引用]
4.24
service broker
サービスブローカー
特定のユーザーのニーズに合わせて低レベルのサービス (4.23) を組み合わせたり提供したりする、仲介のための応用システム (4.2)
[ISO 19132:2007 4.46を引用]
4.25
ubiquitous public access
UPA
ユビキタス公共アクセス
UPA
エンドユーザーが、場所又はアクセス装置に関係なく、関心の基準に合致する特定の種類のデータに簡単かつ相互運用可能なアクセスができるようにするサービス (4.23)
例: 情報ネットワークに接続された地理データ サービス
注記1:この例では、接続地理データ サービスは、リソース記述フレームワーク (RDF)又はWeb オントロジー言語 (OWL) 形式への変換を使用して、地理情報を外部リポジトリー又はWeb 情報源に自由に相互接続する役割を担う。
4.26
ubiquitous geographic information
ユビキタス地理情報
ユビキタス公共アクセス(4.25)の概念に従ってユーザーに提供される地理情報(4.8)
備考1)4.25と4.26は逆にすべき。
4.27
universal representation
ユニバーサル表現
ユーザーが思う構造や抽象化モデルを知らなくても指定できる一般的な地物モデル
[+]
4.28
universe of discourse
論議領域
関心あるものすべてを含んだ、実世界又は仮想世界のビュー
[ISO 19101‑1:2014 4.1.38を引用]
4.29
viewpoint (on a system)
(システムに関する)視点
システム内の特定の関心事に焦点を当てるために選択された、一連のアーキテクチャ的な概念と構造化のルールを使用して達成される抽象概念の形態
[ISO/IEC 10746‑2:2009 3.2.7を引用]
備考1) ISO 19101-2:2018 3.42において、同じ用語の定義が行われている。
4.30
World Wide Web
Web
ワールドワイドウェッブ
Web
ネットワークでアクセス可能な情報およびサービス(4.23)の世界
[ISO 19101‑1:2014 4.1.40]
[+]
4.31
Web service
Webサービス
Web(4.30)を通じて可能になるサービス(4.23)
注記1:Webサービスは通常、プログラムとデータの連携を含み、人的資源を含むこともある。
[ISO 19101‑1:2014 4.1.41を引用]
[+]
[1] ISO 19105:2000, Geographic information — Conformance and testing
[2] ISO 19115-1:2014, Geographic information — Metadata — Part 1: Fundamentals
[3] ISO 19119:—6), Geographic information — Services
[4] ISO 19125, Geographic information — Simple feature access
[5] ISO/TS 19130, Geographic information — Imagery sensor models for geopositioning
[6] ISO 19132:2007, Geographic information — Location-based services — Reference model
[7] ISO 19141:2008, Geographic information — Schema for moving features
[8] ISO 19147:—7), Geographic information — Transfer nodes
[9] ISO 19148:2012, Geographic information — Linear referencing
[10] ISO 19155:2012, Geographic information — Place Identifier (PI) architecture
[11] ISO/IEC 19501:2005, Information technology — Open Distributed Processing — Unified Modeling Language (UML) Version 1.4.2
[12] Ambient intelligence, Wikipedia, Available at <http://en.wikipedia.org/wiki/Ambient_intelligence>, Accessed on October 16, 2010
[13] Berners-Lee T., Linked Data – Design Issues, Available at <http://www.w3.org/DesignIssues/LinkedData.html>, Accessed on October 16, 2011
[14] GeoNames Ontology, Available at <http://www.geonames.org/ontology>, accessed on June, 7, 2013
[15] Omnipresence, Stanford Encyclopaedia of Philosophy, Available at <http://plato.stanford.edu/entries/omnipresence/>, Accessed on October 16, 2010
[16] Open Street Map Project, Available at <http://www.openstreetmap.org>, Accessed on October 16, 2011
[17] ISO/IEC 10746-1:1998, Information technology — Open Distributed Processing — Reference model: Overview — Part 1
[18] ISO/IEC 10746-2:2009, Information technology — Open distributed processing — Reference model: Foundations — Part 2
[19] ISO 19150-1:2012, Geographic information — Ontology — Part 1: Framework
[20] ISO/IEC 10746-3:2009, Information technology — Open distributed processing — Reference model: Architecture
[21] ISO/IEC 2382-1:1993, Information technology — Vocabulary — Part 1: Fundamental terms
[22] ISO 14721:2003, Space data and information transfer systems — Open archival information system — Reference model
1) 発行予定
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(2025-04-10)