ISO 19111:2019 Geographic information/Geomatics — Referencing by coordinates
現行
履歴
ISO 19111-2:2009 withdrawn
ISO 19111:2007 withdrawn
ISO 19111:2019/Amd 1:2021
ISO 19111:2019/Amd 2:2023
これらの追補は、前文だけが公開されており、内容の詳細は説明されていないので、この抄録集には収録しない。
対応OGC標準: OGC Abstract Specification Topic 2: Referencing by coordinates Corrigendum (2021) 18-005r5
このOGC標準は、ISO 19111:2019に対してAmd 1:2021による修正を加えたものに対応する。
対応JIS規格:JIS X 7111:2014 地理情報−座標による空間参照
このJIS規格は、ISO 19111:2007に対応する。
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:19111:ed-3:v1:en
地理情報は本質的に四次元であり時間が含まれる。空間成分は実世界中に位置付けられる地理データとして表現される地物に関係付く。空間への参照は二つのカテゴリーに分類される。それは、
−座標を使うもの
−地理識別子に基づくもの
である。
地理識別子による空間参照はISO 19112[5]で定義される。この規格では厳密な空間概念を背景(context)としつつ、時間を含むように拡張された、座標による空間参照のために必要なデータ要素、関係及び関連するメタデータを示す。その背景を図1に示す。
図1 座標による参照の背景
水平位置と非空間パラメータを組み合わせた三次元システムを使用する科学コミュニティーがある。そのようなコミュニティでは、パラメータは三番目の垂直軸であると考えられる。そのパラメータは高さ又は深さに応じて単調に変化するが、必ずしも単純に変化するとは限らない。従って、パラメータから高さ又は深さへの変換は自明というわけではない。通常、関係するパラメータは絶対測定値であり、原子はパラメータの直接の物理的測定量を参照することによって取得される。これらの非空間パラメータとパラメトリック座標参照系のモデル化の構造は、以前、ISO 19111-2:2009 で示されていたが、モデル化の構造はこの規格に含まれる他の座標参照系のタイプと同一であるため、この改訂版に組み込んだ。
この規格では、地理情報に適用できるさまざまなタイプの座標参照系を完全に定義するために必要な要素を示す。必要な要素のサブセットは、座標の型に部分的に依存する。この規格には、座標参照系に関するメタデータを含めることを可能にするオプションのフィールドも含む。これらの要素は、機械と人間の両方が可読になるように設計されている。
この規格では、座標参照系の規定に加えて、二つの異なる座標参照系間の座標演算又は経時的な地殻変動を考慮した座標演算の規定も提示する。このような情報を使用すると、異なる座標参照系で参照される空間データを、指定された一つの時刻に一つの指定された座標参照系で参照できるようになる。これにより、空間データの統合が容易になる。あるいは、座標演算の監査証跡1)を維持することも可能になる。
備考1)監査証跡 (audit trail) とは、システムを監査する際に、時系列に沿って、実施された操作とその結果行われた処理の記録などを保存して、一連の処理が正当に行われたかどうかを判断するために使用するログデータである。これは追跡可能性(traceability)確認の根拠として使用される(ISO/IEC 25012:2008, JIS X 25012:2013 5.3.2.6参照)。
この規格では座標による参照の記述のための概念スキーマを定義する。ここでは座標参照系に求められる最低限のデータを示す。この規格では次の定義を根拠づける。
— 時間と共に変化することのない座標値を記述するための空間座標参照系
— この参照系は
— 国家又は国際的な地域に適用される測地系
— 建築又は土木工事などに適用される局地的な参照系
— 画像データ又は画像センサーなどに適用される局地的な参照系
— 自動車、船舶、航空機又は宇宙船のような移動体のための参照系。このような座標参照系は時間要素を含む座標変換を通じて地球に関係付けられる第二の座標参照系に関連づけることができる。
— プレートの変動又はその他の地殻の変形によって時間と共に変化する地表付近又は地上の点の座標値に関する空間座標参照系。このような動的な参照系は時間経過を含むが、本質的には空間参照系のままである。
— 高さ又は深さと共に単調に変化する非空間パラメータを使用するパラメトリック座標参照系
— 時間と共に単調に変化する日時(dateTime)、時間カウント又は時間測定量を使用する時間座標参照系
— 空間、パタメトリック又は時間座標参照系の複合参照系
座標参照系の定義は時間とともに変化することはないが、場合によっては、定義に含まれるパラメータの一部にその変化率が含まれることがある。動的座標参照系及び時間座標参照系中の座標値は、時間とともに変化する可能性がある。
この規格では、座標値を変更する操作を記述するために必要な情報を定義するための概念スキーマも示す。
座標参照系または座標演算の定義に必要な最小限のデータに加えて、概念スキーマは、提供されるべき追加の説明情報(座標参照系メタデータ)を示す。
この規格は、地理情報の作成者とユーザーが適用することができる。この規格で示されている原則はデジタル地理データに適用可能であるが、地図、海図、文書などの他の多くの形式の空間データに拡張することができる。
次に示す規格は、その内容の一部又は全てがこの規格の要件を構成する形で、本文中で参照されている。日付が記載された文献については、引用された版のみが適用される。日付のない参照については、引用規格の最新版(修正を含む)が適用される。
ISO 8601, Data elements and interchange formats — Information interchange — Representation of dates and times
ISO 19103, Geographic information — Conceptual schema language
ISO 19115-1:2014, Geographic information — Metadata — Part 1: Fundamentals
3.1 用語及び定義
この規格では、次に示す用語と定義が適用される。
ISOとIECは、規格化に使用する用語データベースを次のアドレスにおいて維持・公開している。
— IEC Electropedia: http://www.electropedia.org/
— ISO オンライン閲覧プラットフォーム: http://www.iso.org/obp
備考1)例えば楕円の「楕」は常用漢字に含まれていないため、JIS規格の中では「JIS Z 8301 規格票の様式」の規定を遵守して「だ(楕)」と表記している。しかし、学校教育の現場や測地学の文献等では「楕」が定着しているため、また、検索の便も考慮して、この概説では「楕」と表記する。この例に限らず、同様の扱いをする漢字があることを留意していただきたい。
3.1.1
affine coordinate system
アフィン座標系
ユークリッド空間において、直線の軸をもつ座標系。軸は、必ずしも相互に直交しない。
[翻訳はJIX X 7111:2014 4.1を引用]
3.1.2
Cartesian coordinate system
直交座標系
すべて同じ測定単位を持つ、互いに直交する n 本の直線軸に対する点の位置を与えるユークリッド空間の座標系
注記1:この規格では、n は 2 又は 3 である。
注記2:直行座標系は、アフィン座標系を特殊化したものである。
備考1)直交座標系はデカルト座標系ともいう。
3.1.3
compound coordinate reference system
複合座標参照系
少なくとも二つの独立した座標参照系を用いて位置を示す座標参照系
注記1:一方の座標参照系の座標値が他方の座標参照系の座標値に換算又は変換できない場合、二つの座標参照系は互いに独立しているという。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.3を引用]
3.1.4
concatenated operation
連結演算
複数の座標演算を逐次的に適用する座標演算
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.4を引用]
3.1.5
coordinate
座標、座標成分
点の位置を指し示す数の列のうちの一つ
注記1:空間座標参照系では、座標を示す数は単位によって修飾される。
備考1)一般的に"coordinate"は、直線、円弧又は同様の一次元の図形上の点の位置を表現する数とされる。n次元の図上の位置は、n本の座標軸上のcoordinateの組み合わせ(coordinate tuple又はcoordinates)で表現される。3.1.13参照。、ただし、"coordinate conversion"のように形容詞的に使われる場合は単数系で表記されることが多い。ただし、"coordinate conversion"のように形容詞的に使われる場合は単数で表記されることが多い。
備考2)JIS X 7111:2014 4.5では、次のように翻訳されているが、coordinate を座標成分と考えることが困難になるので、ここでは採用しなかった。
「n次元空間内の点の位置を示すためのn個の数値の列。」
3.1.6
coordinate conversion
座標換算
元の座標参照系の座標を、同じ原子に基づくターゲットとなる座標参照系の座標に変更する座標演算
注記1:座標換算では特定の値をもつパラメータを使用する。
例1:楕円体座標を直交座標に写像する地図投影
例2:ラジアンから度又はフィートからメートルのような単位の変更
3.1.7
coordinate epoch
座標エポック
ある動的座標参照系の座標が参照される時点
3.1.8
coordinate operation
座標演算
一対一の関係に基づいて、元の座標参照系の座標をターゲットとなる座標参照系の座標に変更する、又は、同じ座標参照系内で、元期における座標を今期の座標に変更する数学的モデルを使用した処理。
備考1)測量成果として得られた基準点の位置の参照が可能になった時点は元期という。それに対して、その測量成果を使って測量を行う時点を今期という。詳細については『セミ・ダイナミック補正の導入について』国土地理院時報2010 No.120 などを参照するとよい。この規格では、元期は"source coordinate epoch"、今期は"target coordinate epoch"であり、両者はともに座標エポックである。
3.1.9
coordinate reference system
座標参照系
原子によってオブジェクトに関連付けられた座標系
注記1:測地及び鉛直原子は基準フレームとして関連付けられる。
注記2:測地及び鉛直基準フレームにおいては、オブジェクトとは地球のことである。惑星への適用については、測地及び鉛直基準フレームは他の天体にも適用することができる。
備考1)この規格では「原子」と「基準フレーム」は同義語である。3.1.15参照。
3.1.10
coordinate set
座標集合
同一の参照系、及び、同じ座標エポックをもつ動的な座標参照系に関連する、座標組の集合
備考1)「座標組」は、原文では"coordinate tuples"である。
3.1.11
coordinate system
座標系
点にどのように座標を割り当てるかを規定する数学的規則の集合
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.10を引用]
3.1.12
coordinate transformation
座標変換
元の座標参照系の座標をターゲットとなる座標参照系の座標に変更する座標演算。元の座標参照系とターゲットとなる座標参照系は異なる原子に基づく。
注記1:座標変換では、実証に基づくパラメータが使用される。座標の誤差は座標変換に埋め込まれ、座標変換が適用されると、埋め込まれた誤差が出力座標に伝播する。
注記2:座標変換は、理論に基づかずに「原子変換 (datum transformation)」と呼ばれることもあるが、これは間違いである。座標変換では座標値は変更するが、原子の定義を変更するわけではない。この規格では、座標は座標参照系を参照する。座標変換は、二つの原子間ではなく、二つの座標参照系間で行われる。
3.1.13
coordinate tuple
座標組
複数の座標成分で構成する組
注記1:座標組内の座標成分の個数は、座標系の次元と等しくなる。座標組中の座標成分の順序は、座標系の軸の順序と同一である。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.12を参照]
備考1)日本では"coordinate tuple"に相当するものを座標、"coordinate"に相当するものを座標成分ということがある点に留意すべきである。
3.1.14
cylindrical coordinate system
円筒座標系
ユークリッド空間上の3次元座標系。位置は二つの直線座標と一つの角度座標で示される。
3.1.15
datum
reference frame
原子
基準フレーム
座標系の原点の位置、スケール、及び軸の向きを定義するパラメータ又はパラメータの集合
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.14を参照]
備考1)ISO 19107:2019 3.18 coordinate reference systemでは、地球楕円体のような「理論的に正確な幾何学的基準になる幾何オブジェクト」が"datum"であり、その訳語は「データム」とした。"ISO 5459 - Geometric product specifications (GPS)" の対応規格である「JIS B 0022 幾何公差のためのデータム」ではdatumを同様の概念に対して使用し、データムとしていることが、その理由である。一方この規格では、そのような図形を定義するためのパラメータ又はパラメータの集合をdatum又はreference frameとしているので、訳語は原子又は基準フレームとした。日本ではreference frameを基準系と訳すことがあるが、「系」は英語では通常は"system"であり、"frame"とは異なる概念を表す。そこで、ここでは「原子」と同じ概念をもつ用語として「基準フレーム」の使用を提案する。ただし「基準」は、英語では一般的に"criterion"であり、"reference"は、準拠楕円体(reference ellipsoid)など、「準拠」と訳すこともあることを勘案すれば「準拠フレーム」がよいとも考えられる。
備考2) ISO 19111:2019 Figure 13に示されているUMLクラス図を見ると、Datumクラスは抽象クラスであり、その下位クラスであるGeodeticReferenceFrameが具象クラスとして、座標参照系(CRS)の中で実装されるので、実装される座標参照系データには"Datum"という言葉は出現しないことになる。これについては、例えばこの規格の "Example E.3.3: Definition of a spatio-parametric CRS" を参照するとよい。
3.1.16
datum ensemble
原子アンサンブル
近似的な空間参照を目的とする、大幅に異なるものではない、同一の地上参照系又は鉛直参照系の、複数の実現値のグループ
注記1:原子アンサンブル内のさまざまな実現値を参照するデータ集合は、座標変換なしで併合(merge)できる。
注記2:「近似的」はユーザーが定義するもので、通常は1デシメートル未満程度であるが、最大2メートルになる場合もありうる。
例:WGS 84 (TRANSIT)、WGS 84 (G730)、WGS 84 (G873)、WGS 84 (G1150)、WGS 84 (G1674)、及びWGS 84 (G1762) を含む未分化の実現グループとしての「WGS 84」。地球の表面では、TRANSIT と G730 の実現の間で平均 0.7 m、G730 と G873 の間でさらに 0.2 m、G873 と G1150 の間で 0.06 m、G1150 と G1674 の間で 0.2 m、G1674 と G1762) の間で 0.02 m 変化した。
備考1)定義中の「実現 (realization)」とは、同じ参照系に含まれるものの、パラメータが決められた元期が異なるため、その値に微小な違いが現れているため、異なる成果として公開されている、それぞれの座標参照系の実体を指す。
3.1.17
depth
深さ
選択した鉛直基準面から、その面に立てた垂線に沿って下方向に測った点までの距離
注記1:線の方向は直線の場合もあれば、地球の重力場やその他の物理現象に依存する場合もある。
注記2:鉛直基準面より上方の深さは負の値で表される。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.15を参照]
3.1.18
derived coordinate reference system
派生座標参照系
すでに確立された座標参照系内の座標に、指定された座標換算を適用することによって定義される座標参照系
注記1:あらかじめ確立された座標参照系を基本座標参照系と呼ぶ。
注記2:派生座標参照系は、その原子又は基準フレームをその基本座標参照系から継承する。
注記3:基本座標参照系及び派生座標参照系の間の座標換算は、座標換算の定義で指定されたパラメータと式を使用して実装される。
3.1.19
dynamic coordinate reference system
動的座標参照系
動的基準フレームを持つ座標参照系
注記1:動的座標参照系を参照する地球の地殻上または地殻付近の点の座標は、通常は構造移動(tectonic motion)又は氷河性地殻均衡(glacial isostatic adjustment)などの地殻変動により、時間とともに変化することがある。
注記2:動的座標参照系を参照するデータ集合のメタデータには、座標エポック情報が含まれている必要がある。
3.1.20
dynamic reference frame
dynamic datum
動的基準フレーム
動的原子
定義するパラメータの中に時間の経過が含まれる基準フレーム
注記1:時間経過を伴う定義パラメータは、通常は座標の集合である。
備考1)" dynamic reference frame"が推奨用語、"dynamic datum"は許容用語である。
3.1.21
easting
E
東距
座標系における南北基準線からの東方向 (正) または西方向 (負) の距離
3.1.22
ellipsoid
reference ellipsoid
楕円体
準拠楕円体
<geodesy>主軸を中心に回転する楕円によって形成される 3D ユークリッド空間に埋め込まれた幾何学的基準面
注記1:地球の場合、楕円体は極軸を中心に回転する二軸をもつ。これにより、焦点の中点が地球の名目上の中心に位置する扁球楕円体が得られる。
備考1)地球楕円体は極軸が主軸であり、かつ短軸である。この短軸に対して赤道上経度0度の位置に向かう軸が長軸である。従って、注記1の二軸とは短軸と長軸を指す。
備考2)"ellipsoid"及び"reference ellipsoid"は同義語ということになるが、MLGT (Multi-Lingual Glossary of Terms)を見るとreference ellipsoidは許容用語とされている。https://isotc211.geolexica.org/concepts/2405/
(2025-08-21閲覧)
3.1.23
ellipsoidal coordinate system
geodetic coordinate system
楕円体座標系
測地座標系
測地緯度、測地経度及び(三次元の場合)楕円体高で位置を指定する座標系
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.18を引用]
3.1.24
ellipsoidal height
geodetic height
h
楕円体高
測地高
h
楕円体面からそれに垂直な線に沿って測ったある地点までの距離で、楕円体の上側又は外側に向かう場合を正とするもの
注記1:三次元楕円体座標系の一部、又は三次元投影座標参照系内の三次元直交座標系の一部としてだけ使用しそれ単独では使用しない。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.19を参照]
備考1)"ellipsoidal height"が推奨用語、 "geodetic height"は許容用語である。"h"は、これらの略語である。
3.1.25
engineering coordinate reference system
工学的座標参照系
工学的原子に基づく座標参照系
例1:建築や土木の現場などの基準点から数キロメートル以内の相対位置を特定する座標参照系。
例2:船や軌道を周回する宇宙船などの移動物体に適用される局所的な座標参照系。
例3:画像データの内部座標参照系。これには連続した軸がある。グリッドの基礎になることがある。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.20を参照]
備考1)JIS X 7111:2014が制定された時点では、移動体の局所的な座標参照系というよりは、建設現場で使用する参照系という意味が強調されていた。しかしその後、この座標参照系の利用範囲が多分野に拡大していることを考慮すれば "engineering" は「工学的」と翻訳するべきなので、ここでは「工学的」の使用を提案する。
3.1.26
engineering datum
local datum
工学的原子
局所原子
座標系の局所的な参照に対する関連付けを記述する原子
注記1:工学的原子は、測地基準フレームと鉛直基準フレームの両方とも含まない。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.21を参照]
3.1.27
epoch
エポック
<geodesy> 時点
注記1:この規格では、エポックはグレゴリオ暦によって十進年で表される。
例:グレゴリオ暦で 2017-03-25 のエポックは 2017.23 である。
3.1.28
flattening
f
扁平率
楕円体の長半径 (a) と短半径 (b) との差の、楕円体の長半径に対する比の値:f=(a-b)/a
注記1:時には、扁平率の逆数 1/f = a(a - b) を与えることもある。1/f は、逆扁平率とも呼ばれる。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.22を引用]
備考1)"f"は"flattening"の略語である。
3.1.29
frame reference epoch
フレーム参照エポック
動的基準フレームを定義する座標のエポック
備考1)これは、動的測地参照系を定義する、点の座標が参照されるエポックを指す(ISO 19111:2019, Table 52 参照)。
3.1.30
geocentric latitude
地心緯度
楕円体の中心から、与点を通る方向までの、赤道面に対する角度、北向きを正とする。
3.1.31
geodetic coordinate reference system
測地座標参照系
測地基準フレーム及び、三次元直交座標系又は球座標系のどちらかを基礎とする三次元座標参照系
注記1:この規格では、測地基準フレーム及び楕円体座標系に基づく座標参照系は地理座標参照系という。
3.1.32
geodetic latitude
ellipsoidal latitude
φ
測地緯度
楕円体緯度
赤道面と与点を通る楕円体の垂線との間の角度。北向きを正とする。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.25を引用]
備考1)"geodetic latitude"及び "ellipsoidal latitude"は同義語である。"φ"はこれらの略語である。
3.1.33
geodetic longitude
ellipsoidal longitude
λ
測地経度
楕円体経度
本初子午線面と与点の子午線面との間の角度、東向きを正とする。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.26を引用]
備考1)"geodetic longitude"及び"ellipsoidal longitude"は同義語である。"λ"はこれらの略語である。
3.1.34
geodetic reference frame
測地基準フレーム
地球と二次元又は三次元の座標系との関係を記述する基準フレーム又は原子
注記 1: この規格で示すデータ・モデルでは、UML クラス GeodeticReferenceFrame には、現代の地球基準フレームと古典的な測地原子の両方が含まれる。
3.1.35
geographic coordinate reference system
測地座標参照系
測地基準フレーム及び楕円体座標をもつ座標参照系
3.1.36
geoid
ジオイド
あらゆる場所で重力の方向に垂直な地球の重力場の等ポテンシャル面で、局地的、地域的又は全地球的に平均海面に最もよく一致するもの
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.27を参照]
3.1.37
gravity-related height
H
標高
地球の重力場に依存する高さ
注記1:これは、特に正標高(orthometric height)と正規高(normal height)のことを指し、これらはいずれもある地点の平均海面からの距離の近似であるが、正規正標高(normal-orthometric height)、動的標高(dynamic height)又はジオポテンシャル(geopotential)の数値も含まれる場合がある。
注記 2: 基準面からの距離は、重力方向の影響を受けるため、必ずしも直線ではなく曲線を描く場合がある。
備考1)"H"は"gravity-related height"の略語である。
3.1.38
height
高さ
選択した基準面からその面に垂直な線に沿った上向きを正とする、任意の地点までの距離
注記1:基準面から下向きの高さは負の値で表される。
注記2:楕円体高(h)と標高(H)を一般化した言葉である。
3.1.39
linear coordinate system
一次元曲線座標系
線形地物が軸を形成する一次元の座標系
例1:パイプラインに沿った距離
例2:傾斜坑油井の深さ
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.32を引用]
3.1.40
map projection
地図投影
楕円体座標系から平面への座標換算
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.33を引用]
3.1.41
mean sea level
MSL
平均海面
<geodesy> あらゆる段階の潮位及び季節的変動を平均した海面高
注記1:局所的な意味の平均海面は、通常、一か所以上の地点で、一定の期間観測した結果から計算した、ある地域の平均海面を意味する。IHOの基準を満たすには、その期間は 19 年間の完全な月の周期である必要がある。全地球的な状況では、平均海面と全地球的なジオイドとの差は 2 m 以下である。
[翻訳はJIS X 7111 4.34を参照]
備考1)"MSL"は"mean sea level"の略語である。
3.1.42
meridian
子午線
楕円体面とその楕円体の短半径を含む平面との交線。
注記1:子午線という用語は、完全な閉曲線としてではなく、両極を結ぶ弧線を表すことが多い。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.35を引用]
3.1.43
northing
N
北距
東西基準線から北向きを正、南向きを負とした座標系上の距離
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.36を引用]
備考1)"N"は"northing"の略語である。
3.1.44
parameter reference epoch
パラメータ参照エポック
時間依存の座標変換のパラメータ値が有効となるエポック
注1:座標変換を適用する前に、まず変換パラメータ値を座標のエポックに伝播させる必要がある。
3.1.45
parametric coordinate reference system
パラメトリック座標参照系
パラメトリック原子に基づく座標参照系
3.1.46
parametric coordinate system
パラメトリック座標系
軸の単位が本質的に空間的でないパラメータ値になる一次元座標系
3.1.47
parametric datum
パラメトリック原子
パラメトリック座標系とオブジェクトとの関係を記述する原子
3.1.48
point motion operation
点移動演算
点の運動により一つの座標参照系内の座標を変更する座標演算
注記 1: 座標の変更とは、最初のエポックの座標から別のエポックの座標への変更のことである。
注記 2: この規格では、点の動きは構造移動または地殻変動によるものである。
3.1.49
polar coordinate system
極座標系
位置が一つの距離座標と一つの角度座標によって指定されるユークリッド空間の二次元座標系
注記1;三次元の場合については、球座標系を参照。
3.1.50
prime meridian
本初子午線
他の子午線の経度を測る基となる子午線
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.38を参照]
3.1.51
projected coordinate reference system
投影座標参照系
地図投影を適用した二次元測地座標参照系から導かれる座標参照系
注記1:その次元は二次元又は三次元の場合があり、導出元の地理座標参照系の次元に等しい。
注記2:三次元の場合、水平座標 (測地緯度と測地経度の座標) は北座標と東座標に投影され、楕円体高は変わらない。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.39を参照]
3.1.52
reference frame
datum
基準フレーム
原子
座標系の原点の位置、スケール、及び軸の向きを定義するパラメータ又はパラメータの集合
[+]
3.1.53
semi-major axis
a
長半径
楕円体の最長軸の半径
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.40を参照]
備考1)"a"は長半径の略語である。長半径は赤道半径ともいう。
3.1.54
semi-minor axis
b
短半径
楕円体の最短軸の半径
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.41を参照]
備考1)"b"は短半径の略語である。短半径は極半径ともいう。
3.1.55
sequence
列
繰り返しを許した、関連する項目(オブジェクト又は値)の、有限で順序をもつ集まり
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.42を参照]
3.1.56
spatial reference
空間参照
実世界における位置の記述
注記1:これは、ラベル、コード又は座標組の形態をとってもよい。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.43を参照]
3.1.57
spatio-parametric coordinate reference system
空間パラメトリック座標参照系
一つの構成座標参照系が空間座標参照系であり、もう一つがパラメトリック座標参照系になる複合座標参照系
注記1)通常、空間コンポーネントは「水平」であり、パラメトリックコンポーネントは「鉛直」である。
3.1.58
spatio-parametric-temporal coordinate reference system
空間パラメトリック時間座標参照系
空間、パラメトリック及び時間座標参照系の複合座標参照系
3.1.59
spatio-temporal coordinate reference system
時空間座標参照系
構成要素としての座標参照系が空間座標参照系及び時間座標参照系になる複合座標参照系
3.1.60
spherical coordinate system
球座標系
位置が一つの距離座標と二つの角度座標によって指定されるユークリッド空間の三次元座標系
注記1:楕円体を球に「簡易化」した楕円体座標系と混同してはならない。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.44を参照]
3.1.61
static coordinate reference system
静的座標参照系
静的基準フレームをもつ座標参照系
注記1:静的座標参照系を参照する地球の地殻上または地殻付近の点の座標は、時間とともに変化することはない。
注記2:静的座標参照系を参照するデータ集合のメタデータには、座標エポック情報は不要である。
3.1.62
static reference frame
static datum
静的基準フレーム
静的原子
時間の経過を含まないパラメータを定義する基準フレーム
備考1)"static reference frame"は推奨用語、"static datum"は許容用語である。
3.1.63
temporal coordinate reference system
時間座標参照系
時間原子に基づく座標参照系
3.1.64
temporal coordinate system
時間座標系
<geodesy>軸が時間になる一次元座標系
3.1.65
temporal datum
時間原子
オブジェクトと時間座標系との関係を記述する原子
注記1:オブジェクトは通常地球上の時間である。
3.1.66
terrestrial reference system
TRS
地球参照系
宇宙空間中の日周運動において地球と共回転する(co-rotating)空間参照系の原点、スケール、方位、時間経過を定義する一連の規則
注記1:TRS の抽象概念は、通常、正確に決定された座標とオプションでその変化率を持つ一連の物理点で構成される地球参照系を通じて実現される。この規格では、地球参照系はデータモデルの測地基準フレームの要素内に含まれる。
備考1)"TRS"は"terrestrial reference system"の略語である。
3.1.67
transformation reference epoch
変換参照エポック
時間固有の座標変換のパラメータ値が有効となるエポック
注1:座標変換を適用する前に、まず座標をこのエポックに伝播させる必要がある。これは、座標変換が適用される前に、まず変換パラメータ値を座標のエポックに伝播させる必要があるパラメータ参照エポックとは対照的である。
3.1.68
tuple
組
順序をもつ値のリスト
[ISO 19136:2007 4.1.63を引用][翻訳はJIS X 7111 4.45を引用]
3.1.69
unit
単位
大きさをもつパラメータを表現する定義済みの量
注記1:この規格における単位の下位型として、長さ、角度、時間、目盛り及びピクセル間隔の各単位がある。
[翻訳はJIS X 7111:2014 4.46を引用]
3.1.70
vertical coordinate reference system
鉛直座標参照系
鉛直基準フレームに基づく一次元座標参照系
3.1.71
vertical coordinate system
鉛直座標系
標高又は深さの測定のために使用する一次元座標系
3.1.72
vertical reference frame
vertical datum
鉛直基準フレーム
鉛直原子
標高又は深さと地球との関係を記述する基準フレーム
注記1:ほとんどの場合、鉛直基準フレームは平均海面に関係する。鉛直原子には測深原子 (水路測量の目的で使用される)が含まれており、この場合、標高は負の標高又は深さになる可能性がある。
注記2:楕円体高は、測地基準フレームを参照する三次元の楕円体座標系に関係する。
備考1)"vertical reference frame"は推奨用語、"vertical datum"は許容用語である。
3.1.73
vertical reference system
VRS
鉛直参照系
地球と標高又は深さの関係を説明する、原点、スケール、方位、および時間経過を定義する一連の規則
注記 1: VRS の抽象概念は、垂直基準フレームを通じて実現される。
備考1)"VRS" は"vertical reference system"の略語である。
3.2 記号
a 楕円体の長半径
b 二軸楕円体の短半径
E 東距
f 扁平率
H 標高
h 楕円体高
N 北距
λ 測地経度
φ 測地緯度
E, N, [h] 投影座標参照系の直交座標
X, Y, Z 測地座標参照系の直交座標
i, j, [k] 工学的座標参照系の直交座標
r, θ 2D工学的座標参照系の極座標
r, Ω, θ 3D工学的座標参照系の球座標
注記 この規格ではΩは極(天頂)角でありθは方位角である。
φ, λ, [h] 地理座標参照系の楕円体座標
3.3 略語
CC 座標換算coordinate conversion
CCRS 複合座標参照系compound coordinate reference system
CRS 座標参照系coordinate reference system
CT 座標変換coordinate transformation
MSL 平均海面mean sea level
pixel ピクセル "picture element" の短縮形。デジタル画像データの属性が割り当てられる最小要素 a contraction of “picture element”, the smallest element of a digital image to which attributes are assigned
PMO 点移動演算point motion operation
SI 国際単位系le Système International d’unités (International System of Units)
UML 統一モデリング言語Unified Modeling Language
URI 統一資源識別子Uniform Resource Identifier
1D 一次元one-dimensional
2D 二次元t wo-dimensional
3D 三次元three-dimensional
[1] Hooijberg M., Practical Geodesy, Springer, 19974)
[2] IERS Conventions (2010) — International Earth Rotation and Reference Systems Service (IERS) Technical Note No. 36
[3] ISO 19107:2003, Geographic information — Spatial schema
[4] ISO 19108, Geographic information — Temporal schema
[5] ISO 19112, Geographic information — Spatial referencing by geographic identifiers
[6] ISO 19123, Geographic information — Schema for coverage geometry and functions
[7] ISO 19148, Geographic information — Linear referencing
[8] ISO 19157, Geographic information — Data quality
[9] ISO 19161-1, Geographic information — The International Terrestrial Reference System (ITRS)
[10] ISO 19162, Geographic information — Well-known text representation of coordinate reference systems
[11] ISO/IEC 19501, Information technology — Open Distributed Processing — Unified Modeling Language (UML) Version 1.4.2
[12] ISO/IEC/IEEE 9945:2009, Information technology — Portable Operating System Interface (POSIX®) Base Specifications, Issue 7
[13] ISO 80000-3, Quantities and units — Part 3: Space and time
[14] Snyder John P., Map Projections: A Working Manual, USGS Professional Paper 1395, 1987, 383 pp
パラメータの参考文献Parametric bibliography:
[15] ISO 2533:1975, Standard Atmosphere
[16] Doc 7488, Manual of the ICAO Standard Atmosphere: extended to 80 kilometres (262 500 feet). International Civil Aviation Organisation (ICAO), Third Edition, 1993
[17] The Miami Isopycnal Coordinate Model, 2000, available at http://oceanmodeling.rsmas.miami.edu/micom/
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4) ここであげた参考文献及び類似の文献ではこの規格中に組み込まれている測地学的な概念を説明しているが、ここで定義されている用語とは異なる用語が使用されている場合がある。一部の用語については両方の文書に共通していても、意味は異なる。
(2024-11-10)