ISO 19160-4:2023 Addressing Part 4: International postal address components and template language
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履歴
ISO 19160-4:2017 withdrawn
対応OGC標準:なし
対応JIS規格:なし
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:83470:en
郵便サービスは、差出人及び受取人が明示的なサービス契約を締結することなく、世界規模かつ普遍的な規模で手紙、小包、そして荷物の配達サービスを提供している。受取人の個人情報及び公開されている配達場所データを組み合わせた郵便宛先は、差出人が受取人を特定する仕組みを提供し、郵便事業者が配達義務を履行するための手段となっている。
伝統的に、郵便事業者は郵便物の宛名表記に関して非常に柔軟に対応してきた。配達場所を明確に特定できる限り、どのような形式や内容の宛名でも許容されていた。今日でも、多くの郵便事業者は、職員の知識と地域に密着した知識を駆使し、不完全な住所表記や通常とは異なる住所表記の郵便物を配達する能力を誇りとしている。
しかし、郵便物の量と人件費の増加により、自動化は経済的なだけでなく、不可欠なものとなった。その結果、ほとんどの郵便物に誤読のリスクなく自動処理できる方法で宛名を記入することが、ますます重要になっている。
住所が不正確又は不完全な状態で郵便物が送られると、宛先不明郵便(UAA郵便)となり、差出人住所に返送されたり、転送先に送られたり、あるいは廃棄物として廃棄されたりする恐れがある。こうした不必要な作業はすべて、経済的な悪影響を及ぼす。
今日、郵便物の大部分には、コンピュータデータベースから抽出されて印刷された住所が記載されている。こうしたデータベースは、人口移動、配達場所の新設・廃止、道路名の変更や建物番号の変更といった仕様変更に伴い、維持管理が必要となる。さらに、電子商取引における住所の妥当性確認の必要性が高まっており、組織間で住所データを交換・取引したり、ある国の組織が他国の組織や個人の住所データを保有したりする傾向が高まっている。これらの国では、郵便宛先の表示方法が異なる可能性がある。
住所の表記方法は、国や郵送イベント(例えば、手紙や月次明細書など、郵送業者が一度に送付する一連の郵便物)ごとに異なる場合がある。本規格は、国や郵送業者に対して郵便宛先の表記方法について義務を課すものではなく、郵便事業者が郵送目的で推奨する表記規則を表現するための言語を提示するものである。
この規格に従って指定されたテンプレートは、国際越境郵便及び国内郵便における住所表示規則に関する情報交換に使用できる。これらのテンプレートは、万国郵便連合(UPU)から許容されているすべての国で入手できる。これにより、郵便物や国際電子商取引の配送の自動処理が容易になる。この文書に基づく変換エンジン (rendition engine)は、同じ住所に対して同じ結果を生成することが期待される。これは、許容されたテンプレートを同じパラメータで使用することを条件とする。許容されていない場合でも、適切な目標として、一貫性が期待できる。
この規格の対象読者には、郵便宛先の表現を含む世界中の郵便宛先データを処理するコンピュータシステムの設計者や開発者、国際的な住所指定ポリシーを策定および実装する人、UAA-1) メールを削減しようとしている人などが含まれる。
この規格はUPU S42バージョン8[3]に基づいており、UPUと共同で開発された。CEN(欧州通信標準化機構)は、EN 14142-1の代替としてこの文書を採用した。
この規格は、新しい住所要素である電話番号を追加することにより、住所構成要素のリストを拡張する。
注記1:このプロジェクトの準備作業については文献[2]に記載されている。
注記2:この規格は文献[2]の勧告を実装しており、郵便目的の住所のみに焦点を当てている。その他の目的の住所については、ISO 19160シリーズの他の部分で説明される。
備考1) UAAメールとは Undeliverable-As-Addressed Mailの略で、配達できないメールのことを指す。
この規格では、郵便宛先表記に関する主要な用語、郵便宛先構成要素、及びそれらの使用上の制約を定義する。具体的には、この規格では、郵便宛先構成要素を3つの階層レベルに分類して規定する。
— 組織名や郵便番号など、明確に定義された概念的意味を持ち、それ自体は従属的な構成要素で構成されているわけではないが、技術的な目的のために細分化できる要素。
— 組織識別情報など、要素を単位にグループ化して郵便宛先の論理的な一部を形成する構成要素。
— 受取人指定など、関連する郵便宛先構成要素や郵便宛先要素を、特定の定義された機能を持つ単位にグループ化するセグメント。
この規格では、戸口 (door) の種類やそのインジケータといった要素内容の細分化、あるいは行政区域のレベルといった住所内の要素の複数出現や位置に対応するサブ要素を作成するためのメカニズムも規定する。
この規格では、構成要素の長さや値の範囲は規定しない。
さらに、この規格では、要素と副要素を識別するためのコードを規定する。
さらに、この規格では、郵便番号の表記の規則を規定する。これには、以下のものが含まれる。
—郵便宛先の表記における出力行の識別と順序付け。
— 候補行の選択条件。
— 郵便番号構成要素の順序と連結。
— 必須構成要素とオプション構成要素。
— 表記する時に郵便宛先を示す( contextualize)ためのパラメータ。
— 構成要素のフォーマット(ただし、そのタスクに使用可能なスペースの制約に従う)。
本規格では、郵便宛先の表記規則を郵便宛先テンプレートとして示す。
最後に、本規格では、郵便宛先テンプレートを正式に表現するためのコンピュータ処理に適した言語を規定する。
本規格はデータ保護については扱っていない。ただし、個人データの保管及び交換は多くの国で法律の対象となることを、本企画の利用者は留意すべきである。
次に示す規格は、その内容の一部又は全てがこの規格の要求事項を構成する形で、本文中で参照されている。日付が記載された文献については、引用された版のみが適用される。日付のない参照については、引用規格の最新版(修正を含む)が適用される。
ISO 639-1, Codes for the representation of names of languages — Part 1: Alpha-2 code
ISO 3166-1, Codes for the representation of names of countries and their subdivisions — Part 1: Country code
ISO 15924, Information and documentation — Codes for the representation of names of scripts
この規格では、次の用語及び定義を適用する。
ISOとIECは、標準化に使用する用語データベースを次のアドレスで維持・公開している。
— IEC Electropedia: http://www.electropedia.org/
— ISO オンライン閲覧プラットフォーム: http://www.iso.org/obp
3.1
address
住所、宛名、アドレス
識別及び位置特定を目的として、オブジェクトを明確に特定できる構造化された情報
[ISO 19160‑1:2015 4.1を参照 — 例及び注記は削除した]
3.2
addressable object
住所指定可能オブジェクト
住所を割り当てることができるオブジェクト
[ISO 19160‑1:2015 4.2を引用]
3.3
addressee
受取人
配送品又はサービスの最終的な受取人
注記1:受取人は、郵便宛先の一部として明示的に指定する場合もあれば、暗黙的に指定する場合もある。例えば、一部の国では、受取人情報の省略は、配送先への法的アクセス権を持つ個人又は法人への配送を意味するものと解釈される。
注記2:Mr. or Mrs. Smithは、受取人が2人のうちのどちらかであることを示し、Mr. Jones and Mrs. Smithは、受取人が2人のグループであることを示す。役割記述子も参照のこと。
注記3:郵便事業者による受取人及び受取責任者 (mailee) データの使用は、郵便物に適用される郵便サービスによって異なる。書留郵便などの一部のサービスでは、郵便事業者の責任には、受取人又は正当に権限を与えられた代理人が郵便物の受領を確認することが含まれる場合がある。その他の場合には、受取人データは純粋に情報提供のみを目的とする場合や、郵便事業者が整合性チェック及び/又は転送サービスの有効化のためにのみ使用する場合がある。また、例えば、ビジネスメールが部署又は個々の会社職員によって事前に順序付けされている場合など、配達前の仕分け又は順序付けのために使用される場合もある。
注記4:国によっては、受取人が「郵便顧客」のような抽象的な概念である場合がある。
3.4
delivery
配達
<郵便> 郵便物が、受取人、郵便物受取人、代理人に手渡される、又は受取人、代理人が集荷に出す、あるいはこれらのいずれかがアクセスできる私書箱に投函されることにより、郵便事業者の責任から離れるプロセス。
注記1:配達は、必ずしも受取人又は郵便物受取人による受領を意味するものではない。
3.5
delivery address
配達先住所
<郵便> 郵便事業者が郵便物を配達するために使用するよう要求される郵便宛先
注記1:通常、配達先宛先は差出人が指定した住所と同一である。
注記2:特定の状況(例えば、宛名のない郵便物)においては、配達先住所が郵便物に必ずしも記載されているとは限らない。この場合、配達先住所は、郵便事業者と差出人との間の合意に基づき、郵便事業者が決定する。
注記3:郵便物は、必ずしも要求された配達先住所に実際に配達されるわけではない。例えば、転送の場合、配達は転送先住所で行われる。
3.6
delivery point
配達場所
<郵便> 郵便事業者が配達可能な有効な場所として認めている物理的な場所
3.7
mail recipient
郵便受取人
郵便物が配達時に実際に受け取る個人、又は集荷のために置かれた郵便物に最初にアクセスする個人
注記1:郵便受取人とは通常、受取人、郵便物受取人、又はこれらいずれかの代理人を指す。ただし、必ずしもこの限りではない。例えば、郵便物が、第三者がアクセスできる場所に集荷のために置かれた場合、受取人/郵便物受取人が転送指示を残さずに転居した場合、又は受取人/郵便物受取人の指定が曖昧で、その結果郵便事業者が誤解した場合など。
3.8
mailee
受取責任者、気付
郵便物が受取人に確実に届くようにする責任を有する者として郵便宛先において指定されている当事者
注記1:受取人(addressee)とは異なり、郵便受取人(mailee)は常に郵便宛先において明示的に指定される。すなわち、郵便宛先に郵便受取人が含まれていない場合、郵便受取人は存在しない。
注記2:注記1にかかわらず、郵便受取人は、役割記述子を用いて明示的に指定される場合もあれば、役割記述子を用いることなく暗黙的に指定される場合もある。
注記3:受取人の場合と同様に、郵便宛先において指定される受取責任者は曖昧になる可能性がある。
3.9
mailer
郵送者
郵便物の作成、生産、仕上げ、導入、および郵便料金の支払いに関わる1つ以上のプロセスを実行する当事者
3.10
party
当事者
<郵便> 郵便物に関連する取引に参加する目的で単一の主体として行動する、1人以上の自然人、法人、又は法人格を持たない組織
3.11
postal address
郵便宛先
受取人の明示的な身元を含む場合を含む住所。宛先対象は郵便物の実際の、又は潜在的な配達場所である。
3.12
postal address component
component
郵便宛先構成要素
構成要素
<郵便宛先> 郵便宛先を構成する要素
例:市区町村、郵便番号、道路、建物識別子
注記1:住所の構成要素は、6.2、6.3、および6.4で規定する。
注記2:住所構成要素は、要素、構成要素、又はセグメントのいずれでもよいが、これらに限定されない。
注記3:便宜上、この規格では、推奨用語「郵便宛先構成要素」を「構成要素」という用語に短縮している。
3.13
postal address construct
construct
郵便宛先構成体
構成体
<郵便宛先> 複数の郵便宛先要素を組み合わせた、郵便宛先構成要素。全体として郵便宛先の論理的部分を形成する。
注記1:構成要素は6.2に規定されている。
注記2:便宜上、この文書では「郵便宛先構成要素」という推奨用語を「構成要素」という許容用語に短縮している。
3.14
postal address domain
domain
郵便宛先地域
地域
<郵便宛先> 郵便事業者によって特定の郵便宛先の種類及び表記法が規定されている地域
例:郵便宛先地域の最も一般的な例は、指定された郵便事業者が郵便配達サービスを提供している国である。
注記1:便宜上、この規格では「郵便宛先地域」という推奨用語を「地域」という許容用語に短縮している。
3.15
postal address element
element
郵便宛先要素
要素
<郵便宛先> 顧客又は郵便処理の目的において重要な、明確に定義された概念的意味を持つ郵便宛先構成要素。それ自体は従属構成要素で構成されてはいない。
注記1:構成要素は6.4に規定される。
注記2:便宜上、この文書では「郵便宛先要素」という推奨用語を「要素」という許容用語に短縮している。
3.16
postal address element code
U-code
郵便宛先要素コード
Uコード
<郵便宛先> 郵便宛先要素又は副要素の簡略表現
注記1:郵便宛先要素コードは、7.2に規定された規則に準拠しており、要素名及び副要素名とは異なり、言語に依存しない。
3.17
postal address sub-element
sub-element
郵便宛先副要素
副要素
<郵便宛先> 郵便宛先要素値の細分要素、又は郵便宛先内の同一要素の複数出現箇所のいずれかを示す識別子
注記1:郵便宛先副要素は、住所の表記、データベースへの保存、及び関連する技術的ニーズを容易にするために用いられるものであり、住所構成要素の特定の場合として考えるべきではない。
注記2:住所副要素については、6.5でさらに説明する。
注記3:便宜上、この規格では、推奨用語「住所副要素」を「副要素」という用語に短縮している。
[+]
3.18
postal address rendering
address rendition
郵便宛先表記
宛先表記
<郵便> 表記用の宛先を作成するプロセス
3.19
postal address segment
segment
郵便宛先セグメント
セグメント
<郵便宛先> 特定の機能を持つ、関連する宛先構成要素及び/又は宛先要素からなる命名されたグループで構成される郵便宛先構成要素
注記1:郵便宛先セグメントは6.2に規定する。
注記2:便宜上、この規格では「郵便宛先セグメント」という推奨用語を「セグメント」という許容用語に短縮している。
3.20
postal address template
template
郵便宛先テンプレート
テンプレート
<郵便> 郵便宛先地域内の郵便宛先表記の仕様
注記1:郵便宛先テンプレートには、表示の指示を含める必要がある場合がある。
注記2:テンプレートは、必須要素と任意要素を示すことにより、郵便宛先の構文上の正確性に関する制約も規定する。
注記3:テンプレートで提供される表示規則を解釈するソフトウェアは、表示用の郵便宛先を生成するために必要である。
注記4:郵便宛先テンプレートの詳細は、第8条で規定する。
注記5:便宜上、この規格では「郵便宛先テンプレート」という推奨用語を「テンプレート」という許容用語に短縮している。
3.21
postal address type
郵便宛先型
必須項目及び任意項目を含む同じ集合で構成される郵便宛先の集合
注記1:郵便宛先型は国によって、また国内の地域によって異なる場合がある。
3.22
postal item
郵便物
郵便サービス契約者が郵便サービスの提供義務を負う、分割不可能な郵送可能な実体
[UPU Standards Glossary 3.90を参照 - 記載事項の注記は削除][5]
3.23
postal operator
郵便事業者
一般市民に郵便サービスを提供することを認可された組織
注記1:郵便行政は郵便事業者の特別なケースである。
[UPU Standards Glossary 3.141を参照][5]
3.24
rendered postal address
rendered address
郵便宛先表記
宛先表記
<郵便宛先> 郵便宛先の構成要素を分離し、順序付けられたテキスト行を含む長方形の形状の画像とした郵便宛先の表記
例:郵送ラベルの住所、注文書の住所、画面に表記される住所。
注記1:便宜上、この文書では、推奨用語である「郵便宛先表記」を、許容用語である「住所表記」に短縮している。
3.25
rendering parameter
表記用パラメータ
<郵便宛先> 郵便宛先の表記の仕方を定義する情報項目
例:郵便物の発送国と配達国が異なる場合は越境郵便物になる。この場合、住所表記の最終行には配達国の正式名称を記載する必要がある。そうでない場合は国内郵便物であり、住所表記に国名は記載する必要がない。
注記1:これには、ラベル、データファイル、画面などの外部媒体における郵便宛先表記の指針が含まれる。
注記2:表記用パラメータは8.2で規定する。
注記3:表記用パラメータは郵便宛先には表記されないが、表記処理を支援又は指定する。
3.26
rendition instruction
変換指示
<郵便宛先> 郵便宛先を表記する際に、住所行内の要素をフォーマット、省略、並べ替え、または分離する操作
注記1:郵便宛先の変換指示については、8.3でより詳しく説明する。
[1] ISO 19160-1, Addressing — Part 1: Conceptual model
[2] ISO/TC 211, N 3188: Review summary of project 19160, Addressing
[3] UPU S42, International postal address components and templates, 2012
[4] UPU, General information on UPU standards [online]. Available from: https://www.upu.int
[5] UPU, UPU standards glossary [online]. Available from: https://www.upu.int
[6] UPU, UPU standards [online]. Available from: https://www.upu.int/en/Postal-Solutions/Programmes-Services/Standards
[7] ITU-T E.164, The international public telecommunication numbering plan
[8] UPU, UPU dynamic code list 210 [online]. Available from: https://support.ptc.post/scms/show_codelist.html?codeListId=210
[9] UPU, Registry of S42 templates for UPU members [online]. Available from: https://www.upu.int/en/Postal-Solutions/Programmes-Services/Addressing-Solutions
(2025-08-16)