ISO 19160-1:2015 Addressing Part 1: Conceptual model
現行
履歴
対応OGC標準:なし
対応JIS規格:なし
原文URL
https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:19160:-1:ed-1:v1:en
住所は、オブジェクトの識別及び位置特定を目的として、オブジェクトを明確に特定する最も一般的な方法の一つである。住所は国によって異なる。欧州を中心とする多くの国では、住所に道路網を参照するのが一般的である、日本や韓国(韓国はこれから離れつつあるが)などの国では、住所は幹線道路を参照せずに行政区域の階層構造からなる。高度道路交通システムの分野では、住所は(座標参照系とは対照的に)簡略化された位置情報システムと見なすことができ、興味のある地点や郵便番号はカーナビゲーションに適用可能な住所情報となる。住所は、郵便配達、緊急対応、顧客関係管理、土地管理、公共施設の計画及び保守など、多岐にわたる目的で使用される。
住所指定(住所に関わる活動)には、多くの利害関係者が関与する。住所の割り当て(地方自治体、郵便事業者など)、住所の様々な利用(顧客サービス提供者及び電子商取引事業者、地方自治体及び中央政府、公共サービス提供者、選挙管理委員会など)、そして住所の検索(住民、配送及び緊急対応サービス提供者など)などである。これらの利害関係者は、住所指定に関する初期段階(stage zero project)の準備作業中に特定され、現在ではISO 19160住所指定規格の開発に関与しているか、その動向を認識している。
世界中で様々な住所規格や仕様が使用されている。これらのいくつかは、本国際規格の準備作業報告に記載されている。これらの規格や仕様は、様々な業務プロセスに適切に統合されており、場合によっては法的に施行されている。同時に、一部の国では住所体系の合理化や新たな体系の構築が進んでいる。住所は、新しい地理オブジェクト(例:道路設備)を参照するためにも使用されることが多くなっており、車載ナビゲーションなどの新技術でもますます利用されている。本国際規格の目的は、既存の住所規格及び将来の住所規格間の相互運用性を促進することである。
ISO 19112は、本国際規格の準備作業において、既存の規格及び仕様の調査に含まれていた。ISO 19112は、現実世界における位置をラベル又はコードの形で間接的に記述する(座標形式で直接的又は明示的に記述するのではなく)地理識別子を扱っている。レビューサマリーでは、規格のアドレス指定に関する要件はISO 19112の適用範囲とは大きく異なると結論付けられた。必要に応じて、ISO 19160のこの部のプロファイルを作成し、ISO 19112の関連部分を本国際規格にマッピングすることは可能である。
この国際規格の準備作業段階では、以下のタイトルの5つのプロジェクトが推奨された。
— 住所指定 — 概念モデル
— 住所指定 — 住所割り当てスキームの優良事例
— 住所指定 — 住所データの品質管理
— 住所指定 — 国際郵便住所構成要素とテンプレート
— 住所指定 — 郵便以外の目的のための住所表示
ISO 19160のこの部は、これらの推奨事項の最初のものとして、概念モデルを実現している。これは、例えば異なる住所仕様間での概念モデルの相互マッピングなど、住所仕様間の相互運用性を促進することを目的としている。
備考1)2025年8月現在、ISO 19160シリーズは6つの部に分割されている。ただし、第1部は概念モデルである。
ISO 19160のこの部では、住所情報の概念モデル(住所モデル)並びに、モデル内の概念を説明する用語及び定義を規定する。ライフサイクル、メタデータ、及び住所の別名が、概念モデルに含まれている。このモデルは、統一モデリング言語(UML)で表現される。
このモデルは、実際の住所実装には依存しない、住所情報の共通表現法を提供する。他の仕様で提案されている概念モデルを置き換えることを意図したものではなく、住所情報に関する異なる概念モデル間の相互マッピング手段を提供し、仕様間での住所情報の転換を可能にする。
このモデルは、個々の国又はコミュニティごとに住所仕様を開発するための基礎を提供する。
次に示す規格は、その内容の一部又は全てがこの規格の要求事項を構成する形で、本文中で参照されている。日付が記載された文献については、引用された版のみが適用される。日付のない参照については、引用規格の最新版(修正を含む)が適用される。
ISO 8601, Data elements and interchange formats — Information interchange — Representation of dates and times
ISO 19103:2015, Geographic information — Conceptual schema language
ISO 19107:2003, Geographic information — Spatial schema
ISO 19115-1:2014, Geographic information — Metadata — Part 1: Fundamentals
ISO 19135-1: 2015, Geographic information — Procedures for item registration — Part 1: Fundamentals
ISO 19152:2012, Geographic information — Land Administration Domain Model (LADM)
この規格では、次の用語及び定義を適用する。
4.1
address
住所、宛名、アドレス
識別及び位置特定を目的として、オブジェクトを明確に特定できる構造化された情報
例1:対象が事業所の場合の住所:611 Fifth Avenue, New York NY 10022
例2:対象が建物の場合の住所:Lombardy House, 809 Lombardy Street, The Hills, 0039, South Africa
例3:対象が建物の土地区画の場合の住所:San 4-5, Munjae-ro, Songpa-gu, Soul, 13144, South Korea
例4:対象が学校や大規模マンションなどの建物群の場合の住所:228-dong-404-ho, 26 Kyunghee-daero,
注記1:オブジェクトは現実世界で識別可能とする。すなわち、電子アドレス及び仮想アドレスは除く。
注記2:「識別」とは、住所内の構造化情報がオブジェクトを一義的に特定すること、すなわち、人間がオブジェクトを同定するのに役立つことを指す。言い換えれば、ここでの「識別」は、データベース又はデータ集合内の一意の識別子を指すものではない。
注記3:オブジェクトには複数の住所が存在する可能性があるが、どの時点(またはライフサイクル段階)においても、1つの住所は単一のオブジェクトを一義的に特定する(例については附属書Dを参照)。
注記4:同一の住所指定可能オブジェクトに対し、異なる住所クラス(4.4)(すなわち、構成要素の集合が異なる)に属する二つの住所は、二つの異なる住所である(詳細な例については附属書Eを参照)。
注記5:同一の住所指定可能オブジェクトに対し、同一の住所クラスに属する二つの住所であっても、異なる言語で記述されている場合は、二つの異なる住所である(詳細な例については附属書Eを参照)。
注記6:住所指定可能オブジェクトに加えて、一つの住所に関連付けられた多数の人物、組織、受取人(addressees)、又はその他のオブジェクトが存在する場合がある。これらは住所モデルの外部にある(詳細な例については附属書Cおよび附属書Fを参照)。
4.2
addressable object
住所指定可能オブジェクト
住所(4.1)を割り当てることができるオブジェクト
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4.3
address alias
住所の別名
住所(4.1)集合のうち、同一の住所指定可能オブジェクト(4.2)を一意に特定する住所集合の要素の一つ
4.4
address class
住所クラス
住所構成要素(4.5)、演算、メソッド、関係、及びセマンティクスを共有する住所集合(4.1)の記述
例1:「25 Blue Avenue Hatfield 0028」と「384 Green Street Motherville 2093」は同じ住所クラスに属す。
例2:「PO Box 765 Goodwood 33948」と「PO Box 567 Grayville 98373」は同じ住所クラスに属す。
4.5
address component
住所構成要素
住所(4.1)の構成部分
注記1:住所構成要素は、空間オブジェクト(4.17)(例:行政境界、土地区画)や非空間オブジェクト(例:組織、個人)などの他のオブジェクトを参照することができる。
注記2:住所構成要素は、異なる言語による代替値や省略形など、1つ以上の代替値を持つことができる。
[+]
4.6
addressing
住所指定、アドレッシング
住所(4.1)に関する活動
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4.7
address position
住所位置
住所(4.1)を表す位置
注記1:住所は、建物の異なる入口など、複数の位置で表される場合がある。
4.8
address reference system
住所参照系
住所構成要素(4.5)及びそれらを住所(4.1)に組み合わせるための、定義をもつ集合
4.9
child address
子住所
親住所(4.13)を基準として定義された住所(4.1)
4.10
child addressable object
子住所指定可能オブジェクト
別の住所指定可能オブジェクトを基準として住所指定される住所指定可能オブジェクト (4.2)
例1:アパート内のアパート。
例2:日本では、街区 (block) 内の住居番号(residence number)。
例3:複合施設内の建物。韓国では、建物群内の洞(建物の棟又は区画)。
4.11
lineage
典拠
資源の生産に使われた情報の出所(4.16)、情報源及び製法
[ISO 19115‑1:2014 4.9を引用]
4.12
locale
ロケール
言語及び文化的な慣習に依存するユーザー環境のサブセットの定義
注記1:コンピューター利用において、ロケールとは、ユーザーの言語、国、及びユーザーがユーザーインタフェースに表示させたい特別な派生表記(variant)設定を定義するパラメータの集合である。通常、ロケール識別子は、少なくとも一つの言語識別子及び一つの地域識別子で構成される。
[ISO/IEC IEEE 9945:2009 3.211を参照 — この項目に関してISO/IEC IEEE 9945:2009に記載されている注記は省略。注記1が追加された。]
4.13
parent address
親住所
親住所指定可能オブジェクト(4.14)の住所(4.1)
注記1:子住所(4.9)指定可能オブジェクトの住所は、親住所の住所構成要素(4.5)を完全に継承する。
4.14
parent addressable object
親住所指定可能オブジェクト
一つ以上の他の住所指定可能オブジェクトを完全に囲む住所指定可能オブジェクト(4.2)
例1:内部に多数のアパートがあるアパート。
例2:日本では、多数の住戸番号(residence number)を持つ街区(block)。
例3:多数の建物からなる複合施設。韓国では、多数の洞(建物の棟又はセクション)を持つ建物のグループ。
4.15
profile
プロファイル
特別の働きをするために必要な、一つ以上の基礎標準又は基礎標準のサブセット、及び、もし許容される場合は、それらの基礎標準の中から選ばれる箇条、クラス、オプション及びそれらの基礎標準のパラメータの特定
[ISO 19106:2004 4.5を引用]
4.16
provenance
出所
過去に記録を作成,蓄積,維持及び利用した機関又は個人
注記1:出所情報には、以下のものを含む。
— 記録の情報源又は起源
— 記録に対する全ての変更
— 記録の作成以降、記録を保管してきた全ての組織または個人
[ISO 5127:2001 4.1.1.10を参照 –注記1を追加した][翻訳はJIS X 0701:2005 4.1.1.10 を参照]
4.17
spatial object
空間オブジェクト
地物の空間的な特徴を表現するために用いるオブジェクト
[ISO 19107:2003 4.69を引用]
参考文献
[1] ISO 3166-1:2013, Codes for the representation of names of countries and their subdivisions — Part 1: Country codes
[2] ISO 5127:2001, Information and documentation — Vocabulary
[3] ISO 13527, Space data and information transfer systems — XML formatted data unit (XFDU) structure and construction rules
[4] ISO 15836, Information and documentation — The Dublin Core metadata element set
[5] ISO 21127, Information and documentation — A reference ontology for the interchange of cultural heritage information
[6] AS 4590:2006, Interchange of client information, Standards Australia
[7] AS/NZS 4819, Rural and urban addressing, Standards Australia and Standards New Zealand
[8] BS 7666-0, Spatial datasets for geographical referencing — Part 0: General model for gazetteers and spatial referencing, British Standards Institute
[9] Akeno K., 2008). Japanese address system, ISO Workshop on address standards — Considering the issues related to an international address standard, held under the auspices of WG7, Information Communities, of ISO/TC 211, Geographic information on 25 May 2008 Copenhagen, Denmark available at http://www.isotc211.org/Address/Copenhagen_Address_Workshop/workshop.htm, accessed 1 May 2013
[10] D2.8.1.5 INSPIRE Data Specification on Addresses — Guidelines, INSPIRE Thematic Working Group on. Addresses, 2010
[11] Japan (1962). Address Indication Act
[12] Japan (1899). Real Property Registration Act
[13] New Zealand Post, Postal Address File Technical Guide. Available at http://www.nzpost.co.nz/sites/default/files/uploads/shared/paftechguide.pdf, accessed 22 July 2013
[14] New Zealand Geospatial Office, 2011). The Spatial Data Infrastructure Cookbook v.1.1. Available at http://www.linz.govt.nz/geospatial-office/spatial-data-infrastructure/sdi-cookbook-v11-home, accessed 1 October 2013
[15] Review summary of the ISO 19160 stage zero project. ISO/TC 211, Geographic information/Geomatics, document N 3188
[16] SANS 1883-1, Geographic information – Address, Part 1: Data format of addresses, South African Bureau of Standards (SABS)
[17] UPU S42, International postal address components and templates, Universal Postal Union, Berne, Switzerland
[18] US Thoroughfare, Landmark, and Postal Address Data Standard, United States Federal Geographic Data Committee (US FGDC)
(2025-08-10)