はじめに。

2010年代の初頭。色々あってしばし離れていたTRPGに復帰した私こと潮屋が、これまた色々あって自作システムを制作・頒布したところ、思いのほか高評価を得られて気を良くし、以後ほぼ毎年のペースで同人TRPGシステムや関連書籍を発表し続けてきました。……そうこうしてるうち、はや10年の月日が流れ、いつの間にやら2019年も終わろうとしています。


その間、同人TRPGシステムを取り巻く環境も大きく変化しました。


2010年代初頭はイベントでも数えるほどしか出展していませんでしたが、2010年代半ば頃にはイベント毎に多数の同人TRPGシステムが発表され、昨夏にはなんと50以上の新作システムが発表されたそうです。内容、紙面も商業誌レベルまで向上しています。


同人からプロのデザイナーになった人も散見されるようになりましたし、逆にプロのデザイナーが自由な表現を求めてか、同人TRPGを発表するケースも見受けられます。同人TRPGだけを遊ぶコンベンションや、同人TRPGの制作ノウハウを語ったり相談したりするイベント、チャットグループなども開催され、時はまさに同人TRPG戦国時代とも言える活況を呈しています。


……しかし、振り返ってみれば、これだけたくさんのデザイナーが労力と、時間と、情熱を注いできたゲームたちの中で、実際に遊ばれ、記憶に残るゲームはほんの一部。多くのシステムは話題に上ることもなく忘れ去られてしまいます。


それはとても寂しいことです。


2010年代を同人TRPGシステムの制作に血道をあげていた一人として、この激動の時代に生まれていったゲームたちを記録し、後世に伝えたい――そんな思いが沸き上がり、本書の制作を決意しました。


本書を純然たる記録として眺めても良いでしょう。デザイナー達がシステムに込めた想いやひらめきを感じるために読むのも良いでしょう。未だ遊べるシステムを探すために利用することもできますし、新たなシステムを創り出すためのアイディア帖としても構いません。


本書が「同人TRPGシステム」を創る人、創り出そうとしている人、遊ぶ人、知を満たしたい人、愛する人、それぞれの情熱を喚起する一助になることを切に願い、本書を上梓いたします。


2020.11 猫又公司&潮屋G.P.S 潮屋 俊