6.魔王の真意
魔王ギルモア(GM):「……人間との和平など不可能、か。……正直に言えば、我もそう思う」
アクィラ:そうなの!?
クロード:「……ならば何故です? いったい何をお考えなのですか!?」
魔王ギルモア(GM):「……人間など、ひ弱な存在だ。個々の力では我々が圧倒している。 ……だが、現実にはどうだ? 人間の勢力は拡大を続け、我々の領域は削られる一方だ」
クロード:「……………」
魔王ギルモア(GM):「純粋な戦闘能力では我々の方が上だ。……にも関わらず我々は追い詰められている。我々と、人間の違いはなんだ?」
コクリ:深い質問が……!
ムニエル:このお店の根底にかかわる話だ……!
魔王ギルモア(GM):「……我は、その違いとは、"変われること"だと思っている」
クロード:「……変われること? どういうことですか?」
魔王ギルモア(GM):「人間は、負ける度に反省し、学び、克服し、最後には打ち勝つ生き物だ。敵を理解し、学び、取り込み、協力し、裏切りもし、常に最善の手を模索し続けてきたのだ」
一同:……………。
魔王ギルモア(GM):「我らは、強大な力を持って生まれた。……故に、自らの力に、出自に、固執し過ぎている。……変わることを、畏れ過ぎているのだ」
コクリ:魔王様もいろいろあって考えを改めたんだなぁ……。
アクィラ:あたし、正直、魔王なんてどうでもよかったんだけど……。モクリとコクリが妄信するのも肯けるわ……。
魔王ギルモア(GM):「だから、変わらねばならんのだ。我らも」
クロード:「……………」 魔王の言葉を無言で聞いています。
魔王ギルモア(GM):「和平は、変革のモデルケースの一つに過ぎぬ。店がうまくいけばよし、いかねば別の道を探る。学べ。変われ。それをモンスター達にも肌で感じ取らせる。……それこそがこの計画を推し進める真の理由だ」
ムニエル:そうだったのか……!
魔王ギルモア(GM):「……そしてそれを任せられるのは、かつて人からモンスターに"変わった"お前を置いて他にない。……故に、受けてくれるな? クロードよ」
コクリ:おお~っ!? だからテンチョーが任命されたのか!
アクィラ:神人事! いえ魔王人事ね!
GM:オー人事みたいだからやめてよ!?(笑)
クロード:「御意に……! このクロード、謹んで拝任致しましょう……」 ほわんほわんほわ~ん。回想終わり!
GM:打ち切られた。(笑)
アクィラ:この作品の根底である魔王様の考えを伺えて、超素敵な回想でしたよ!
コクリ:店長が選ばれたのも納得だった……!
GM:……まぁ、ぶっちゃけこれは解釈の一つですけどね。デザイナーとしては、魔王の真意は、セッションごとに違っていいと思っています。冒頭で言ったような『勇者強過ぎ! 無理!』みたいなギャグっぽいノリでも、実は遠大な侵略計画だったことにしても構いません。それは各GMの解釈次第ということで。
クロード:でも、とても納得いく背景だったので、モデルケースとしていい気がしますね。
GM:めっちゃアドリブなんですけどね!(笑)
そして再び、クロードの手番
GM:……さて、場面を切り替えて再びケロペッコ店内。男とクロードの間で、緊張感を伴う沈黙が続いています。
クロード:……まずは判定をしておきましょうか。(笑)
■クロードの〈知性〉判定:(5D6) → [5,2,1,4,2]=[14]
■クロードのチャンス:(1D6) →14+[3]=[17]
GM:あと17!
クロード:さすがに厳しい。しかし、〈精神〉はまだ残っているぞ!
■クロードの振り足し: (2D6) →17+[5,6]=[28]
クロード:まだまだ!
■クロードの振り足し: (2D6) →28+[4,2]=[34]
GM:くっ、それで超えた!
アクィラ:過去が店長を強くする!!
クロード:うむ、これで役割は果たしたな……!
男(GM):「さて、返事を聞かせてもらおうか……!」
コクリ:「あいつを納得させるような答えを出せるのかよ、テンチョー…!」
クロード:「ククククク……。ハハハハハハハハハ!」
アクィラ:悪役笑いだ!?
コクリ:高笑いを始めた!?
ムニエル:いい笑い!
クロード:「この店を始める時にいつか会う日が来るだろうと思っていたぞお客様……いや"勇者"と呼んだほうが良いのかな?」
GM:……実は厳密には違います。(笑) 彼は、人族屈指のモンスターハンターで、"人類最強"とも噂される男、その名はロム。祝福とかチートスキルとかではなく、鍛錬と実戦で圧倒的な力を持つに至った人物です。
コクリ::つ、強そう……!
GM:女神の祝福を受けた伝説の勇者は別にいる設定です。
クロード:あらま。で、ではそう言った体で!(笑)
GM:あいあい。(笑) 「……ああ、オレもそのうち相まみえると思っていたよ。"死の支配者"、"黒の大司教"――クロード」
コクリ:店長にそんなかっこいい二つ名が!?
ムニエル:凄い二つ名だ。……しかし、ついてない方が不自然だろうな。
GM:人災派遣で培ったアドリブ二つ名つけ力を見よッ!(笑)
アクィラ:どんどん二つ名とか伝説が生えてくる……!
ロム(GM):「……幾多の戦場を蹂躙した地獄の王が場末の食堂の店長やってる……これをおかしいと思わねえ奴ぁいねえよ」
コクリ:そりゃリッチが場末の食堂に居たら疑うよなぁ。(笑)
アクィラ:店長が疑われる要因? 魔王人事だめだった?(笑)
クロード:「ククク、そんな風に呼ばれていたこともかつてはあったな。しかし、今はこの店の店長だ。それ以上でもそれ以下でもない……」
ロム(GM):「それを信じろと?」
クロード:「信じるか信じないかはお客様の自由だ。……しかしロムよ、周りを見てみろ。こんな風景が目にできるとは我もにわかには信じがたい」
GM:……そこには、対峙する二人をよそに、わきあいあいと食事を楽しむ人とモンスター。
クロード:「人、モンスター問わずこのように楽しげに過ごせる日が来ると思っていたか?」
アクィラ:全てが繋がった感!
ムニエル:一昔前には考えられなかったような光景が……!
コクリ:店に通ううちに知り合って、同じテーブルを囲むようになったニンゲンとモンスターの常連さんなんかもいそうだな!
坊や(GM):「もっちー(モクリ)、とりさんー♪」
母親(GM):「すみません、この子ったらすっかりモクリさんとアクィラさんを気に入っちゃったみたいで……」
アクィラ:「また来たの? しょうがないわね……! 特別に新作のポージングを見せてあげるわ!」
コクリ:「む~、む~♪」モクリも坊やが来ると嬉しそうだったり!
元ライバル店店長(GM):「くっ、ムニエル……! また腕を上げやがった……!」
ムニエル:「待っているとは言ったが、立ち止まるとは言っていないぞ若造」
若葉マークの冒険者(GM):「またきちゃったのだー!」「疲れたー」「とりあえず生~!」
淡水ギルマン(GM):「料理長、いい魚がとれたで料理に使ってくれギョ~」
コクリ:全員集合だ~!
クロード:「……これこそが魔王様が考えた人間とモンスターの可能性の一つなのだろう。この光景を見ては、人を憎み、モンスターとなった我ですら、もう一度その可能性を信じてみたいと思わされる……それが答えだ! お前はどうだ、ロムよ!?」
ロム(GM):「……………」
GM:ロムは言葉を返さない。しかし――。
クロード:しかし……?
GM:……ここで店長の手番終了!最後コクリとモクリの番!
コクリ:ふぁっ!? 出番あった!?
4-4.コクリの手番
GM:クロードの言葉に、そして見せられた風景にロムは言葉を返さない。……だが、用心棒のモクリとコクリは、ロムの気配に殺気が混じるのに気づく!
コクリ:なっ!?
GM:ロムは静かに言う……。
ロム(GM):「お前の言葉が真実ならいい……そう思うよ」
クロード:……………。
ロム(GM):「だが、それをハイソーデスカと信じられるほど、"俺達"の確執は浅くねえ!」
GM:そう叫ぶが早いか! 雷霆の如き速さで引き抜かれる剣!
アクィラ:きゃーーーーー!?
クロード:これだけ言っても解らぬか、人間め!
GM:一瞬で振りかぶられた剣が、あやまたずクロードを切り裂かんとする! ……その速さに対応できるのは、いち早く気づいたモクリとコクリだけだっ!
コクリ:「させるかぁっ!」
GM:では、判定してもらおう!!
コクリ:よーし、ここはかっこよくテンチョーを守りたい! 店長! ダイスプールを借りる!
クロード:……うむ。まぁ、もう使う機会もないからな。
コクリ::だよね。(笑) じゃあ+4Dで、9Dで判定!
GM:きたまいっ!
■コクリの〈体力〉判定:(9D6) →[5,3,1,3,4,3,4,2,2]=[27]
■コクリのチャンス:(1D6) →27+[2]=[29]
コクリ:くっ、出目が悪い……!
GM:でもあと7!
コクリ:〈精神〉使うぞ!
■コクリの振り足し: (2D6) →29+ [2,4]=[35]
コクリ:あーっ!? 1足りない!
アクィラ:私の〈精神〉を!
ムニエル:私のもだ!
クロード:せっかくだ、我のも使って3Dを振り足すがいい。(笑)
コクリ:ヤッター! みんなの力をお借りします! 今度こそ、いっけー!!
■コクリの振り足し: (3D6) →35+ [46]
コクリ:「奥の手だ!ちょっとだけ力を借りるぜ!」ぴょんぴょこといったん素早く飛び退いて、アクィラ様の弾力ある羽をバネに、さらに料理長の規則正しく並んだ調理器具を足場にしてジャンプ! 店長の背中に蹴りを入れて攻撃を寸前で回避させる! のだ!
アクィラ:みんなのパワーを使ってるのね!?
コクリ:名付けてコクリ・ピタゴラアタックだーっ!!(一同笑)
GM:……ロムの剣がクロードを両断せんとする、まさにその時! コクリのピタゴラアタックでクロードはその軌道から逃れる!コクリ:間に合った……!
アクィラ:終わった……の?
GM:……だが。
コクリ:ま、また「だが」かよ!? 今度はなんだよ!?
GM:剣の勢いを止めることはできない。……店長の体があった場所。そこには今、コクリの体があった。
コクリ:えっ。
GM:剣はそのまま、コクリの体を一刀のもとに両断――
コクリ:「ぎゃーーーーーっ!?」
アクィラ:「いやああああっ!?」
クロード:「コクリーーーっ!?」
GM:……かに見えた。
ムニエル:むっ!?
GM:しかしてロムの剣は、コクリの目前で、時を止めたかのようにピタリと止まっていた……。
コクリ:「あ、あれ……? 目玉と胴体がオサラバしてない!?」
クロード:「ククク……。冗談が過ぎるなお客様……!」
ロム(GM):「……冗談? ……違う。今のは本気だった」
コクリ:「なんだとぉ……!」
ロム(GM):「本気の殺気をぶつけりゃ本性を現す……そう思ったんだがな。そのチビに邪魔されたのも想定外だったが……まさか、かわそうともしないとは」
コクリ:「チビって言うな!」
クロード:……言えない、速すぎてかわせなかったなんて。(笑)
ムニエル:店長! いいところなんだから!(笑)
アクィラ:「えっ、えっ、なに? 今何が起こったの!?」
ロム(GM):「負けたよ、クロード。……それにそこのチビにも。……完全にオレの誤解だった。すまない」
GM:ロムは剣を収め、真摯に頭を下げる。
コクリ:「……ふん、テンチョーはもう昔のリッチじゃない。今はこの店のテンチョーさ!」 見境なくニンゲンに悪さなんてしないぜ!
ロム(GM):「ああ、お前の言う通りみたいだな。……でもな、お前らを試すための狂言だったってワケでもないんだぜ」
コクリ:「……どーゆーことだ?」
ロム(GM):「大多数の人間の声を代弁したようなものだ。現に、オレはこの店を調べるように依頼されてきたんだ。よからぬ企てをしているなら潰すよう、な」
コクリ:「他の大勢のニンゲンはまだオレっちたちを信用してないってわけか……」
クロード:「なるほど、な……」
ロム(GM):「そうだ。……お前らがやろうとしてることは、戦うより余程辛いぜ」
コクリ:「まっ、それならそれでのんびりやるさ。なんせ、オレっちたちの寿命はアンタたちより長いんでな」
アクィラ:コクリかっこいい!
コクリ:わーい! 用心棒らしいことできたー!
クロード:「変わるということは常に痛みを伴うもの……。それは重々承知の上だ……」
ロム(GM):「確かにな。……やれるかもな、お前たちなら」
アクィラ:どんどんこのお店を経営することが重くなってきてるぅ~。
ムニエル:使命は重い。……それだけにがんばらないとな。
ロム(GM):「お前らがその痛み耐え抜いてくれることを、オレも願うよ」
コクリ:「オレっちは魔法生物だからな。魔王様に命じられたなら従うまでよ。100年でも、1000年でもな! それくらいかければちょっとは信用されんだろ!」と呑気にケラケラ笑うのだ!
アクィラ:コクリん……!(感涙)
ロム(GM):「ほう? 魔王に命じられたら人間を攻めるのも辞さないってことかい? そりゃキケンだなぁ」
クロード:この勇者、ドSだなぁ。(笑)
アクィラ:人類代表して試しに来てるんだものねぇ。
コクリ:「もしこの店に来る前のオレっちなら、何も考えずその通りにしてたかもしれないが……今はそんな命令はごめんだね。この店も、ニンゲンのお客さん達も気に入ってるからな!」
モクリ(GM):「む~!」とレストランの声から同意の声。
コクリ:「モクリもそう言ってるぞ!」
ロム(GM):「ふっ……まぁ、そうなったら今度こそ遠慮なくやらせてもらうけどな!」
コクリ:「見てな! オレ達は本気だってことを仕事で証明してやるよ!」
アクィラ:言うわね~!
ムニエル:我々の言いたいことを代弁してくれたよ、コクリ。
GM:……と、いうわけで。ここらでイベントクリアといたしましょう!
一同:やったーーーーー!