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さて、リプレイ最後の本コンテンツでは、今回のシナリオをどうやって作ったのか、どうマスタリングしたのか、などについてちょっと語ってみます。

「人災派遣」をプレイする上で、少しでも読者諸兄のヒントになれば幸いです。

……とは言え、シナリオの作り方とかマスタリングの仕方は人それぞれ。

僕も独自理論と自分自身の経験則に基づいて、ほとんど無意識レベルでシナリオを発想、構成しているので、本当に参考になるかどうかはちょっと解りません。

また、今回のセッションでは、敵データなどはサンプルを利用しているので、シナリオ部分そのものについてのみ言及しているので、あらかじめご了承いただきたい。

自分でもどんな話にまとまるのか不安なんだが、とにかくダベってみますのすけ!

■ネタ出し

僕の場合、最初にシナリオ全体のテーマ(というか、基本方針?)と「PCに何をさせるか(目的)」を設定します。

今回の場合、テーマにしたのは以下の二点。

①夏だから怪談話にしよ。

②サンプルリプレイだし、「人災」のキモである「移動」を多用するセッションにしよ。

②は、ボードゲームがヒントになって、「時間内に一定数のコマを運び終えたらボーナス」という、要するに「引っ越し」のギミックが割とあっさり思いついたので、あとはこれに①の怪談を絡めれば良いでしょう。これで全体の構成も決まり。

・「引っ越し」が「幽霊騒ぎ」により妨害されている。

・PC達の目的は、「引っ越し」の完遂と「幽霊騒ぎ」の調査。

これを基本方針にして、うまく肉付けしていくことにしました。

■肉付け

まずは舞台です。

今考えると豪邸を舞台に、引っ越しの際、番頭かろくでなしの長男とかが家財をちょろまかしている、ということにしても良かったんですが、そのとき思いついたのが「博物館の新築に伴う収蔵品の移送」という設定だったので、特に検討することもなくこの設定をベースにしました。

で、舞台となる博物館の設定をつらつら書きつつ、「幽霊騒ぎ」についても検討していきました。

「幽霊騒ぎ」自体は、PCの「引っ越し」ギミックを妨害する形で表現していくことにし、過去の被害者NPCに証言を聞くことで、妨害に対する判定が楽になる、という、ギミック部分の方向性の方が先に出来上がりました。

「解決方法」と、「真相」は事実上同義。

「真相」が確定すれば、自ずと「解決方法」も導き出されるもんですからね。

「幽霊」がホントに悪霊で、そいつをぶっ倒してシナリオ終了、という流れは骨子を検討する段階で弾いていたので、今回はちょっとだけ捻って「幽霊は悪くなく、理由があって妨害をしている」ことにしました。これでもベタですが。

同時進行で、博物館の設定が「明治時代の偉い人が設立・出資した博物館」って感じで固まりつつあったので、これを利用して、「幽霊は設立者」ってことにしたら、化けて出る理由は簡単に思いつきました。「不正の摘発」です。

※検討中はあまり意識していなかったが、思い返すとこの設定および構成は、「機動警察パトレイバー」の怪談回と非常に似ている。あっちは「不正の摘発」じゃなくて「秘匿された遺体」を発見させるために化けて出る展開だったので、まるっきり同じではないが。まあ、そもそも「未練を知らせるために化けて出る」という構成自体は怪談の定番で、「雨月物語」「今昔物語」あたりでも見た覚えがある気がする。ただ、おそらく無意識のうちにヒントにしたのは「パトレイバー」だったのではなかろか?

まあ、こういう「使えるストーリー」が頭の中にいくつストックされているか、というのは、確実にシナリオ作りに役立っているのでしゅよって話。

……ともあれ、ここまで決まれば後は簡単。

・「不正」をしている「真犯人」。

・具体的な「不正の内容(収蔵品のすり替え)」。

・「幽霊が悪くない」ことを悟らせるため、怪我などの被害を小さくする。

など、細々とした部分を設定していきました。

しかし、肝心の「解決方法」については、PCの行動次第で変動する余地があったので、あらかじめ二通りの方法を検討しておくことにしました。

■余地

このテの「犯人を追い詰める」タイプのシナリオを作る場合、「重要なフラグが立たないと解決しない」ことにするのは非常に危険です。

・PCが「フラグ」に気づかないと、ストーリーが進まない。

→ストーリーが進まないのPLの思考も停滞する。

→停滞した頭で考えても「フラグ」が立つことはないので、ますますストーリーが進まない。

→時間が無駄になるし、PLのストレスも溜まる。全然良いことがない。

この辺りは経験則によるものも大きいですね。私がいかに「フラグを立てないとクリアできないシナリオ」を量産し、PLのストレスを溜めまくってきたかの証明でもあって大変恥ずかしい。

とにかく。

経験則に従い、今回も「フラグを立てたとき」「フラグが立たなかった」とき、それぞれについてシナリオの展開を用意し、基本的に、いずれの展開でも話がまとまるようにすることにしました。

今回の最重要フラグは、「『犯人』を疑うかどうか?」です。

おそらく、不確定要素があるのはこのフラグだけでしょう。

①「犯人を疑わなかった」場合、調査が進展していることに危機感を持った犯人が、PC達を幽霊騒ぎのどさくさで消してしまおう、と襲撃をしかけてくる展開。

……実際のプレイでは、こちらの展開になったのは既にリプレイをご覧になったみなさんには周知のとおり。ちなみに、本来の予定では、夜時間にPC達を戦闘エリアに集まるように誘導し、一網打尽にする予定だったが、PC達が自分から分断状態になってくれたので、予定を早めて各個撃破する戦術に切り替えている。

②「犯人を疑う」場合、決定的な証拠を見つけ出すため、新たなエリア「犯人の執務室」を公開し、そこに潜入する展開。

→<ネゴシエーター>判定に成功したら、「彼は激しく動揺しているが、それはどこか不自然で、過剰に演技しているようにも見える」など、疑念を促すような情報を与え、犯人の身辺調査を促す。

→「犯人を疑う」ことにしつつも、調査の提案が出ない場合は藤村君あたりから連絡が入り、やはり身辺調査を促すアドバイスをする。

PCに【テレパス】能力者がいたので、強固に主張されたら判定無しで上の情報を教えても良いか、と、ゲーム中は疑われる方の展開を想定していたのですが、いや、実際にプレイしてみると案外思った通りの展開にはならないものですねえ。

予想の範囲内ではありましたがね。

■欠陥とイカサマ

今回のシナリオは構造上致命的な欠陥があるのですが、読者のみなさんは気づきましたか?

……なんと容疑者になりうる「名前のあるNPC」が一人しか登場していないんです。

推理小説の基本ルールとして知られる「ノックスの十戒」に、「犯人は物語の当初に登場していなければならない」というのがあります。

これに従うなら、犯人は一人しか存在しません。

「名無し」の警備員や作業員が登場しているので、証拠をそろえた結果、彼らの中から「名有り」に昇格するパターンや、正体を明かしたときにはじめて「名有り」になる怪人・怪盗型の犯人のパターンもあるので、絶対確実に犯人候補が一人しかいないワケではありませんが、それでもやっぱり候補の絶対数は少ない構造になっています。

……なので、今回は疑惑が簡単に確定しないよう、ちょっとした「イカサマ」をしかけています。

それは、PLが犯人に報告した時点で、「具体的な判定方法と追加報酬も含めた虚偽の追加依頼を犯人自身にさせた」こと。

特に、「具体的な判定方法」という部分がミソで、ゲーム的なギミックを提示されるとPLは結構思考停止してしまい、ほとんど無意識のうちに「提示されたルールの枠内」でプレイを進めようとしてしまいます。

PL心理を逆手にとった、達成できるはずのない「嘘ミッション」。

これをイカサマと言わずして何をイカサマと言おうか?

僕は割とこういう「プレイヤー心理を利用した騙し」を結構シナリオに組み込む方で、人によっては邪道と言う人もいるかもですね。

GM側が「敢えて情報を明かさない」とか「余計な情報で混乱させる」というのは、推理小説の「叙述トリック」に通じるものあるので、セーフかアウトかって言われたら僕はセーフ寄りの立場。「ア●●●ド殺し」を予備知識なしで初めて読んだときはやっぱり衝撃受けたクチなもんで。

そういえば、昔懐かしドラゴンブックの「やっぱりRPGが好き!」で、「GMがPLに対してイカサマを使うのは是か否か」という議論がかわされていましたね。今から手に入れるのは困難ですが、改めて読み直してみるとなかなか参考になる議論をかわしてたりしますね。

もっとも、毎回毎回イカサマを仕掛けてたら飽きられてしまうし、PL側も警戒しすぎて却ってマスタリングの幅を狭めてしまうので、適度な匙加減で混ぜ込んでいる次第。

ともあれ、今回のセッションでは、このイカサマは見事に当たり、PL側は犯人を怪しみつつも、実際に襲撃されるまで、疑惑を決定づけるような動きをとることは無かったのです。フフフ。

終わりに

……てな感じで書き連ねてみたものの、やっぱりなんともとりとめのない感じです。

まあ、今回は「人災派遣RPG」について話ではあるが、それ以外のRPGでも大体僕のシナリオの作り方は同じ。

「基本方針」を決めて、「PCの目的」を決める。その後、逆順で「どうすれば解決するのか」「そもそもなぜ事件が起きたのか」「事件が起きるような舞台はどんなだ」と決めていくだけですね。

とりあえず、今日のところはこんな感じです。ハイ。てきとーですみません。