02.「人災」のシステム

◆『人災派遣RPG』の特徴は?

RPGシステムとしての『人災派遣RPG』において、デザイン上、最も意識したのは以下の二点です。

・『異能』を使うメリットとリスク

・戦闘におけるバックアップの表現

前者は、「強大な『異能』があるからって、それが実生活に役に立つのか?」というシリーズの本質的なテーマを表現する為、たとえば「派手な『異能』を使えば衆目を集めて仕事ができなくなる」「『異能』の維持のためには莫大な資産が必要」といったギミックをしかけています。

具体的には、『異能』を使うごとに「『露出値(=EP)』という数値が蓄積し、これが一定以上溜まると会社からペナルティを与えられる」「強力なスキルの獲得や使用には、『経費/財産(=PP)』を消費する」という仕様になっていて、周囲の状況を見極めて、『異能』を使うべきか使わざるべきか、メリットとリスクを判断しながら任務を進めていくことになります。

後者は、「天才ハッカーや戦術指揮官といった、現代ものならではの『後方支援』担当キャラクターが、既存のシステムでは、ストーリーの都合により同じ場面に存在しなければならない」という矛盾を解決できないか、と考えた末のギミックで、これはゲーム中に使用する『フィールド』にちょっとした工夫をしかけることで、前線でバリバリ戦うキャラクターと、後方で支援をするキャラクターを、無理なく同時処理できるようになっています。

上記二点以外にも、「現代もの」や「ビジネスシ-ン」を表現する為のしかけが色々仕込んであるのですが、さすがにここでは説明しきれません。

実際に本作を手に取って、そのすべてをお確かめください!

◆どんなキャラクターが作れるのカナ?

本作では、全23種類の『異能』の中から、3種(重複可)を選択することでキャラクターの基本的なタイプが決定します。

異能にはどんなものがあるかと言いますと、

・『獣人』……狼男、人虎、狐憑きなど、その身に獣の血を宿した者。常人離れした体力、耐久力を誇る。

・『不死』……不死人、長命種、吸血鬼など、死を超越した者達。優れた魔力を有する。

・『機械化』……肉体の一部を機械化した者達。防御力に優れ、パーツによって様々な兵器を搭載できる。

・『不定形』……肉体を粘土のように、ゴムのように、自在に変化させられる者達。戦闘能力、潜入能力に優れる。

・『武術』……武術家、騎士、サムライなど、戦闘技術を突きつめた者達。その技は人外の者をも砕き、切り裂く。

・『魔術』……秘匿された知識を備え、超常的な技を操る者達。豊富な知識と魔術を武器に前衛後衛を問わない活躍を見せる。

・『諜報』……スパイ、忍者、探偵など、諜報活動の専門家。情報戦と潜入工作に優れる一方、高い生存能力を誇る。

・『電脳』……情報通信機器の専門家。ネットを通じ、一所に居ながら全世界のあらゆる事象に介入する。

・『テレキネシス』……思念によって物体を自在に動かす能力の持ち主。汎用性の広い能力である。

・『シャーマニック』……自然や霊的存在と干渉する能力の持ち主。医療、防御行為のスペシャリスト。

・『パイロキネシス』……火を生み出す能力の持ち主。最強クラスの攻撃力を誇るが、能力のほとんどが攻撃系に偏る欠点も。

・『テレパス』……精神感応能力の持ち主。調査、交渉を得意とする一方で、精神攻撃や敵の妨害行為も得意とする。

……などなど。

これらを組み合わせることで、「体の半分を機械化したウェアウルフ侍!(機械化+獣人+武術)」とか「水になったり変装したり心を読んだりの諜報のスペシャリスト!(不定形+諜報+テレパス)」とか「魔力で炎を纏った拳で攻撃する謎の武術家!(武術+魔術+パイロキネシス)」とか「全能力を電脳系に特化した最強のクラッカー!(電脳+電脳+電脳)」とかとか、プレイヤーの思い描くキャラクターを自由自在に作り出すことができるのです!

さらに、『異能』には、それぞれ10種類の『スキル』が用意されており、一見相性の悪そうな組み合わせでも、工夫次第で意外な活躍が可能。特に、本作は「現代もの」らしく、交渉や情報戦、隠密行動などの能力に長けている能力がゲームのカギを握るカモ?

◆厳しい手番管理とファジーな時間管理

本作では、PCをはじめとする登場人物に、「1Rに1回、均等に行動する機会が回って来る」という、「手番管理」の制度を徹底しています。

既存TRPGではシステマチックに処理する戦闘中や、あるいはドラマ作りのために場面を切り替える、という形で「手番管理」制を採用しているものが多いのですが、本作ではこれをより徹底し、「戦闘中だろうが交渉中だろうが、行動が1つ終われば次の人の手番に切り替わる」ことにしています。

このルール、考えてみると実はちょっと変です。

「敵に向かって銃を一発撃つ」ことと「敵のしかけた爆弾を解除する」「おばあちゃんとお茶を飲みながら世間話する」が、同じレベルの単位時間で処理されてしまうのですから。

ですが、これを厳密にしていくと、「戦闘と交渉」を同時に処理することが不可能になってしまいます。

ビジネスものである本作では、戦闘は「交渉がまとまるまで時間稼ぎをする」「ハッカーのクラッキングを成功させるまで時間を稼ぐ」といった場面で発生することが多いのですが、これを同じ時間単位で処理すると、戦闘のサイクルの方が早くなってしまって、「調査系行動が終わる前に必ず戦闘が終了してしまう」「PCの活躍機会が戦闘系に偏る」といった、弊害が発生してしまいます。

そのため、本作では、「リアルな時間管理」は一切行わず、すべて「ラウンド」などのファジー管理を行い、代わりに手番制による「活躍機会の均等化」を図っているのです。

このあたりはもともと、デザイナーである私が、ファンタジーRPGで「シーフを担当するキャラクターが専門的な作業をしていると、戦闘に参加できない/活躍できない」ことに不満を持っていたために採用したルールです。

特に、本作は「ビジネス」を基幹とした世界観で、その雰囲気を表現するため、「調査・交渉・解除」といった行為の重要度が高いので、「戦闘担当ではないキャラクターのプレイヤーが不公平に感じない」ことを目指した、という次第なのです。