カルカミのこと。

ここは、1995年夏コミで配布した「カルカミ~異神討伐RPG~」について解説するページなのれす。

■「カルカミ」はどんなゲーム?

「異神討伐RPG」というサブタイトルが示すように、本作は「【神様】になって、【別世界から侵略しにきた神様=異神】を倒す」ことを目的とするゲームです。

と、一言で言ってしまうと何やらエピックかつヒロイックな展開を期待してしまうかも知れませんが……ごめんなさい。多分想像している雰囲気とは全然違います。

むしろデザイナーであるボク自身がこのコンセプトでなんでそうならなかったのか不思議ってくらい、特殊な世界観のゲームができあがりつつあります@3@;

どう特殊なのかについては……ここから説明していきましょう。

■【神】が【神】であるために必要なこと。

そもそも、本作を作り始めたきっかけは、僕が最も尊敬してかつ愛してやまない漫画家、藤子F不二夫先生の短編「ぼくは神様」を読んで物凄い衝撃を受けたためです。


作品についての詳しい解説は省きますが、この作品はSFコメディの体裁をとりつつ、その実は「【神】は【人】にとってなんであるか?」を問いただす内容で、当時中学生だった僕は、これによって宗教観が固まってしまうほどの影響を受けました。本作にもその影響は非常に色濃く反映されています。


いちいち細かく説明するのもまだるっこしいので、結論から言いましょう。

本作において、「【神】は【人】に依存する存在」です。

……逆じゃね? って思ったアナタ。それは【人の視点】です。

PLが【神】になり、【神の視点】で見たとき、【神】と【人】の主従の関係は逆転するのです。


……いよいよ何言ってんだコイツ? って感じになってきましたね。

でももう少しだけ辛抱してお聞きください。


考えてみてください。

あなたがもし、ちょっと悪いことをして「こんなことしたら罰があたるかも」と思ったとします。

このとき「罰をあてる」のは誰ですか?


みなさんが思い浮かべるのはキリスト教の「神様」や、仏教の「仏様」に「閻魔大王」「お不動様(不動明王)」、地元に神社がある人は「お稲荷様(稲荷明神)」や「天神様(菅原道真)」、或いはもっと身近な「ご先祖様」や「亡くなったお祖母ちゃん」を思い浮かべる人もいるかも知れません。


ですが、「アステカの破壊神テスカトリポカに憑りつかれる!」と思った人はいないでしょう。


なぜ誰もそうは思わないのでしょうか? それは、我々日本人にとって、テスカトリポカが身近でないため。「知らない」「知っていても別に信じたり祀ったりはしていない」……そんな神様が、まさか突然自分に何か害を与えるとは思いもしないでしょう。


……そう、「【神】は【自分を信じる人間】にしか影響力を持たない」のです。


では、【人間社会に大きな影響力を持つ強い神】になるために【神】はどうするべきなのか? 応えは非常に明快で、「苦境になった人間や信心深い人間を救ったり、悪い人間を罰したりして自身の影響力を誇示し、より多くの信者を獲得すること」が【神】としての力の源である—本作では、そのように解釈しています。


本作における「神と神の戦い=異神討伐」もまた、単純に相手を倒せばよい、というものではありません。

相手を倒すためには、「相手よりも多くの信者を獲得する」ことが絶対に必要です。

言い換えるならば、「異神討伐とは信者の獲得合戦」なのです。


……ほらね。

全然ヒロイックかつエピックな雰囲気じゃないでしょ?

■インスト10分! キャラビルド1分! ファーストプレイ30分! ボドゲライクなRPG

さて、上記のような世界観は、私が随分昔から温めていた企画で、いよいよ具体化してきたぞ、とゆーところなのですが、本作にはもう一つ、ゲーム面でのコンセプトが存在します。


それは、前々から悩んでいた、「初プレイまでのハードルが高い」という、拙作……いえ、TRPGという遊び自体が抱える問題への挑戦です。


これに対し、本作は「できるだけゲーム性を追求することでプレアビリティ(遊びやすさ)を高める」という方法を突き詰めてみました。


・ボードゲーム風の戦闘や共通リソースにより、システムレベルでPC間の協力関係を構築。

・カード(トランプで代用可能)を多用し、視覚的にゲーム感を表現。

・PCの成長方法に特徴を持たせ、ビルド時点で決めるべきことをできるだけ簡略化。


……といったルールコンセプトにより、本作は「異神との戦闘をボードゲーム感覚で楽しめる」「担当キャラクターに成長要素のあるボードゲーム」としても楽しめるようになっています。


極端なことを言えば、いちいち世界観の説明などなくても、「君達は神で、相手は敵対する神だ! あいつを倒すために以下のルールに従って闘ってくれ!」と、ゲーム的な部分だけを集中して説明すれば、それだけでセッションをスタートできるようにしています。シナリオすら必要ありません!

■とはいえ。

一方で、「シナリオを使って物語を作っていく遊び方」にもきちんと対応しています。


「【神】になって信者を獲得するロールプレイとはどんなものか」「【神】になって敵の信者を獲得するシナリオ」「敵対する【異神】の信者獲得方法とその阻止方法」などなど、「【神】が【人】に依存する」というちょっと特殊な世界で物語を作っていくための手引きやサンプルも大量に用意しています。


正直、「カルカミ」のコンセプトは、その物語的な部分についてもシステム的な部分についても、私の知る限りではこれまでに見たことのない、斬新なものができあがりつつある、と自負しています。


……とはいえ、これらのコンセプトが他人から見て「面白いのか」「魅力的なのか」は未知数です。既存の作品と同列に語れないだけに、はっきり言って、ウケるかどうか全然自信がありません。@@


っていやいや、頒布前からそんなこと言っててどうする!?

弱気は敵だ! 前を向け!


……そんなわけで、私にとっては「ナナバナ」「人災」以上の冒険&挑戦となりそうな「カルカミ」ですが、どうぞよろしくお願いします><