01.『ナナバナ』ってなんだろう?

『ナナバナ』は、『名も無き世界の物語』の略語であり、最早絶滅危惧種(?)の感すらあるシステム先行型TRPGです。

すなわち、世界観よりもシステム的に表現したい部分を優先して制作されたTRPGで、その部分さえ楽しんでもらえたら、世界観や舞台設定などは適当にいじくりまわしてもらって構わない、というスタンスのもとデザインされたゲーム、ということです。

そんなわけで、世界観や舞台設定は「ごくごく一般的な中世ファンタジー」ということにして、ルールブックでも大胆にオミットしています。

その分、システム部分は相応のこだわりと工夫を凝らしているつもりです。

ここでは、そんな『ナナバナ』の特徴をちょっとだけ紹介してみます。

■ズヴァリ! “売り”は“戦闘スタイルの多彩さ”だ!

『ナナバナ』を制作するにあたり、従来のファンタジーTRPGにはない、或いはあっても遊びやすさとの両立が成し遂げられていない、と感じていたのが「武器毎の特徴」=「戦闘スタイルの単調さ」です。

ファンタジー世界には様々な武器が存在しますが、大抵の場合、種別によって違うのは「ダメージ量の違い」程度でしかなく、後は「重さ」や「値段」、「種族・クラス毎の得意不得意」、「スキルとの相性」などによって差異をつけている、というのがほとんどではないでしょうか?

かと言って、某超精密TRPGのように武器一つ一つに丸々1ページの痛打表を設けるなどというのはちょっとやりすぎというか、遊んでいられないレベルと言えるでしょう。

かなり武器毎に明確な差異が出ているTRPGとして私が挙げたいのはやはり「GURPS」です。

使い方に振、突、武器の形状に斬、刺、叩のバリエーションがあり、以下のような特徴があります。

……腕を振るって扱う武器。基本的な威力が高め。

……腕を突き出して扱う武器。基本的な威力は低めだが、貫通時の威力の高い刺し武器は基本的にこちらが基準。

……刃の突いた武器。平均的な威力。

……穂先の突いた武器。基本的な威力は低いが、鎧を貫通した場合の威力が大きい。

……打撃を与える武器。基本的な威力は高いが、鎧を貫通した場合の威力は小さめ。

たとえば、振/叩型の棍棒は硬い鎧を着た相手に有効、槍は軽戦士や鎧にスキマのある鎖帷子などに有効、など、手持ちの武器によって有利な敵、不利な敵が存在するのが印象的でした。

とはいえ、『GURPS』の場合、命中判定に武器毎の技能制を採用していたため、結局一つの得意武器を突き詰める方向になってしまい、相手に併せて戦闘スタイルを切り替える、ということはあまりなかったように思えます。

……もっとも、私の知っている『GURPS』は3版までなのでその後どうなったのかはよく分かりませんが。

■『ナナバナ』はどうやって戦闘スタイルの多様性を表現しているか?

『ナナバナ』は、上方ロール(サイコロを振り合って高い方が勝ち)を判定に採用しています。

判定は命中側と防御側がそれぞれ一回ずつ判定を行い、攻撃が当たったらダメージ判定を行う、というごくごく一般的なものですが……ここにちょっとした工夫をしかけてあります。

それが、「二段階の命中判定」です。

すなわち、防御側の判定を「回避+防御」判定とし、防御の判定を「回避に成功する」「回避に失敗する」の命中の成否だけでなく、「回避には失敗したが防御には成功する」という段階を設けたことにより、一回の判定で「敵の攻撃を完全に避け切る」と「敵の攻撃を武器や防具で受け止める」というパターンを表現したのです。もちろん、防御に成功した場合、敵のダメージを大幅に軽減することができます。

要するに、武器の命中精度にダメージソースとしての意義を持たせたわけです。

多くのゲームにおいて、武器の性能は以下のように、「当てやすさ」「殺傷力の高さ」で表現されています。

■A 「当てやすさ:高」「殺傷力の高さ:低」……短剣、レイピア、パンチ、石投げ

■B 「当てやすさ:中」「殺傷力の高さ:中」……剣、刀、鞭、弓、手裏剣

■C 「当てやすさ:低」「殺傷力の高さ:高」……大剣、斧、ハンマー、大弓

このようにデータ設定されている場合、大抵、Aの「当てやすくて威力は低い武器」は不遇になりがちです。

「攻撃が当たっても大してダメージが発生しない」ために、「多少当てにくくても一撃の威力が高い武器」に、最終的なDPS(時間当たりダメージ)において明確に差ができてしまうためです。

これは、当てやすさと殺傷力の高さが独立したデータになっているため、と言うことができるでしょう。

『ナナバナ』の場合、二段階の命中判定を採用したことにより、「敵の防御を貫くほどの精密な攻撃は、威力は高いがやすやすと防御されてしまう攻撃よりもDPSが高くなる場合がある」のです。

『ナナバナ』では、相手によって得手不得手はあれど、ダメージソースとして明らかに不遇な武器=戦闘スタイルは存在しません。もしくは、ダメージソースとしてはやや物足りない武器も、防御効果や先制能力、攻撃範囲といった形で何らかの特長を備えています。

武器を選ぶ楽しさ、武器を扱う楽しさを求めつつ、処理が面倒になりすぎない。

それが『二段階の命中判定』を採用した理由と言えるでしょう。

■相性の良し悪しはどこで表現したのか。

さて、武器=戦闘スタイルの多様さにこだわって制作したシステムとは言いましたが、武器のことだけ言ってみても片手落ちです。

各武器を使って対峙した際、得意なのはどんな相手なのか。不得意なのはどんな相手なのかを決める要素……すなわち、防具=防御スタイルについても語らなければなりません。

防具は、一般にレザーアーマーやマントなどの『非金属防具』と、チェインメイルやプレートメイルなどの『金属鎧』に分けられます。

ゲーム的には、前者は『動きやすいが防御力は低い』、後者は『動きにくいが防御力は高い』という特徴が与えられていることが多いですね。

これも従来の場合、DPS上、後者が有利で前者は不遇になってしまい、『魔法使いや盗賊は重い鎧を装備できない』などの制限があるために、仕方なく前者を選択する、というパターンが多かったように思います。

ですが、私としては軽装のサムライがヒラヒラと敵の攻撃をかわしながら戦うスタイルも、敵の攻撃を受け止めて耐え抜く騎士のようなスタイルも、自らの意思で選択できるようにしたかったのですね。

そこで、防具についても一考した結果、従来の『動きやすさ』『防御力』に武器のところでも説明した「防御のしやすさ」を加え、さらに『頑丈さ』……要するに防具の壊れやすさ(=装甲点)をデータ化することで、以下のように相性を細分化することにしました。

軽装鎧

皮革鎧

金属鎧

■回避力:高 防御成功率:並 防御力:低 装甲点:低

敵の攻撃をかわしやすいため、火力重視で命中しにくい斧や棍棒に対し特に有利。一方、ひとたびダメージを受けるとあっさりと壊れてしまうほど装甲点が低いため、ダメージは些少でも命中精度の高い細身剣や短剣を相手にするのは苦手。

■回避力:中 防御成功率:並 防御力:高 装甲点:中 ※打撃武器に対して防御効果up

弾力性があるため、敵の攻撃をよく防ぎ、どんな相手にも一定以上の防御効果が期待できる。一撃に対する防御効果は金属鎧よりも高いものの、壊れやすさは並なので、持久力では金属鎧に劣る。緩衝性能が高いため、打撃武器に対してはより高い防御効果が期待できる。

■回避力:低 防御成功率:高 防御力:中 装甲点:高

動きにくく攻撃にはあたりやすいが、全身を覆うため防御成功率は非常に高い。しかし、隙間を突かれるなどひとたび防御に失敗してしまうと皮革鎧よりも防御効果は劣る。並程度の命中精度、並程度の火力に対しては圧倒的に優位だが、命中特化、攻撃力特化したスタイルの相手は苦手。また、緩衝性能は低いため、打撃武器による攻撃はやや苦手。

ちなみに、装甲点の処理は、鎧にHP(装甲点)を設け、自身のHP(生命力)とは別に管理するという比較的シンプルなものです。

また、二段階制のHPにしたことにより、もうひとつ、従来のゲームでは不遇気味だった『棍棒』などの打撃タイプ武器にも、『通常ダメージとは別に防具を通して肉体に直接的なダメージを与える特殊効果がある』という特徴づけをすることができました。

……とまあ、とりあえず二例ほど特徴を上げてみたわけですが、『ナナバナ』はシステム先行のコンセプト通り、割とマニア向けというか、データモンガー向けなシステムになっております。

今後も調整は続けていくつもりですが、上記のような特徴にちょっとでも関心を持たれましたら、どうぞ製品版をお求めください!