日本シリーズ第二戦 (2002.10.27)


 これで巨人側の敵は西武ではなく《油断》となりました。


 まず今日のポイントは“初回”。日本一の《走塁コーチ・伊原》が、昨日の巨人側のダブル・スティールを仕掛けられて黙っているハズはありません。早速“やり返し”て来ました。


 それが二死満塁での“ホームスティール”!


 桑田が二塁に牽制球を投げて、それを仁志が少し逸らした。それを見てサード・ランナーが突入したのですが、あれは先にランナーに「チャンスがあったら行くぞ!」と言ってあります。(すぐ後ろに伊原さんはいるわけですし)多分、桑田投手のフォークやカーブがワン・バウンドすることを想定して準備していたと思います。そこへ桑田が二塁に投げた。仁志がハンブルする前から“突入体勢”を取っていたはずです。(この作戦は、打席にいた“平尾”に対する信頼感がイマイチである、という背景もあってのことです。平尾のヒットの確率とホームスティールとの確率を天秤にかけて後者を選んだ)


 これが成功してまたまた“87年”の《伊原マジックの再現!》とやりたかったのです。ところが結果は間一髪“アウト”!(実際は仁志選手は少し“ウッカリ”していましたから巨人は危なかったのです。初戦の“守備位置”といい、仁志選手の今回シリーズ守備には“女神”がついてますね。でもニュースで見ると、仁志選手はボールをこぼしながらも三塁ランナーの小関をしっかりと見ていますね!ひょっとして「誘った?!」。とすればスゴイし“深い”ね)


 昨日の初回のバント失敗と同じく、今日も西武が初回でチャンスを潰してしまう展開となりました。


 今日の大量点も、昨日同様“投手”の桑田のヒットから始りましたが、ポイントは次の清水の時に何の迷いもない《強攻策》を取ったことです。(去年までの長嶋野球なら、ここは追加点欲しさの送りバントです)


 《原野球》は長嶋野球の後継ではありません。全然“違う”ものです。長嶋野球よりもかなり“攻撃的”です。(長嶋野球は実は“防御的”だったのです。先手・先手と来るので一見“攻撃的”のように見えますが、あれは《防御》、というか、正直に言えば《恐怖》であってDEFENCEとも違いました。ま、これは今回の本題ではないのでこのへんで)


 もう少しで歴史的な《200本安打》に到達しそうだった“清水”選手。一番という打順ですが実際は《三番打者》です。(イチローと同じです)よってチャンスの場合は“三番”として扱うのが当然のこと。バントのそぶりすらありませんでした。(去年までなら、あそこで“バント”が指令されて、それを失敗したり、あるいはバスターに出てアウトになったりと、そのチョコザイぶりがベンチに悪影響を与えて結局チームのムードを悪くしてしまう。《悪い見本》は山ほどありました)


 ここで清水が凡退していても、その“積極性”がチームに与えるムード、というのがあります。次の誰かは打ったでしょうし、その回でなくてもチャンスは作れたでしょう。


 要は、勝負の序盤戦では、いかに《強い気持》を作って行くか、見せて行くか、ここがポイントなのです。これが原野球はやれているんです。(後は、ムードが悪くなった時もコレを貫き通せるか。ここが問題ですね。いい時だけ“強気”、悪くなったら“弱気”では、フツーのカントクです)


 テレ朝『ニュース・ステーション』にヤクルト古田捕手が出演してシリーズ展望をやっていましたが、面白かったですね。(古田さんの話は何でも面白いです。『NANDA』の江夏さんとの時や星野さんとの時も面白かった)


 で、古田さん曰く。


 「シリーズには“シリーズ男”というのもいるが《逆シリーズ男》というのも必ずいる」


その候補選手は西武では“和田選手”を挙げていました。(巨人では阿部慎之介を挙げていましたが、これは“願望”ちゃいまっか?(笑))


 和田選手が“逆シリーズ男”との予言、見事に的中!未だにノーヒットで、フォームも力が入っていてシーズンの力は発揮されていません。


 五番の和田が調子悪い(まさにSFの途中までのサンティアゴ状態)ので、四番のカブレラは少々の“悪球”でも手を出して行く。ヒットにはなりますが“大きい”ものにはならない。悪循環です。


 巨人側としては、“最後まで”和田選手には眠っていて頂きたいところでしょう。(後は“伊東捕手”が《現役引退》を決意したんじゃないでしょうかねぇ?途中からはベンチでコーチ業をやってましたが、顔が勝負師のものではなくなっていました。秋山も引退しましたし、常勝時代の《西武戦士》は工藤と清原だけになりますね。それにしても、伊東“監督”となった時に《伊原》さんはコーチを続けるのだろうか?)


 とにかく今日の巨人は“打った”というより《走った》です。ホンモノの“シリーズ男・二岡”と高橋コンビが塁に出るととにかく走らせる。《康友・西岡》コンビの対伊原意識がありありと感じられます。(もちろん、これはシーズン中からやって来ましたし、打って・守って・走る、というのが原野球の理想ですからね。決してシリーズ“だけ”に用いている戦法ではない。とはいえ、異常によく走っている背景に、シリーズ・西武・伊原がないとは言えない)


 8回9回の“岡嶋・前田”の登板は“もちろん”、次からの《工藤・高橋尚》の試運転ですよ!そうでもなきゃ、カブレラに初球から真ん中に“真っ直ぐ”なんか投げまっかいな!西武の右打者を出させて様子を見たり、左投手への対応をキャッチャーの“阿部”が《実感》出来る!これが大きいんですよ。


 今回のシリーズ、事前のデータ戦争では圧倒的に巨人が勝ってますね。西武は丸裸になってますよ。(ウワサでは、ダイエーの城島経由で工藤投手が対策講座の講師をやったとか・・・真偽のほどは分かりませんけどね。以前、V9を支えたのが南海・野村監督情報だった、という過去の真実は明らかになってます)


 更に“試合中”での情報収集まで行なってますからね。(聞くと見るとじゃ大違い、ということもあるそうですから)


 後半、敢えて西武に“打たせた”のは「大差をつけての勝利」というのは自分のチームに安堵感が生まれてそれが“油断”に繋がる、というなかなかに深慮遠謀な原作戦があってのことです。


 このへんからも、やはり原さんは《四連勝》がアタマにあることが分かります。


 さて。


 西武にストレートでSWEEPされた90年。敵地(東京ドーム)で《二連勝》した森監督は勝利インタビューでこう答えたのをハッキリと覚えています。


 「これで“イーブン”になれましたぁ」


 冷静な森さんにしては少し上気した声のように聞こえましたが、要するに「2勝はしたが、次からはまた初戦と思って戦う(そうすれば四連勝も転がり込んで来るかもしれない)」という意味だったのでしょう。(巨人ファンには“皮肉”に聞こえましたがね、当時)


 あの時を思い出してみると、ホームで2連敗してしまって、そうでなくてもその三年前に西武には軽くひねられている。ここで《四連敗》でもしたら(伝統ある巨人軍として(笑))みっともない!と巨人側が《四連敗》を“強く”意識してしまった。そしてズルズルと、自らその渦に巻き込まれるようにしてあれよあれよとストレートの《四連敗》をしてしまったのでした。(杉浦・南海にストレート負けして以来でしたが、個人的には“二度”もリアルタイムで体験してしまった)


 “巨人ファン”と生まれ来て(笑)今まで一度も《四連勝》を味わったことがない!29回も出てるらしいけど、そのうち“23回”はラジオ・テレビでリアルタイムに同時体験した。“興行的”には四試合では儲からないとかナントカカントカとか理屈言ってないで、一回ぐらいやれヨ!


 しかしですね、「やる側」が強く意識すると実現しないんですね。今までの西鉄(引分1)、南海、大洋、西武のSWEEPは“転がり込んで来た”という感じが強い。(いずれも事前には「相手有利」と言われていたシリーズでした)


 一方「やられる側」が“強く”意識するとそれに“はまって”しまう。“転がるように悪くなる”と言いますからね。


 ということで、巨人としてはとにかく《四連勝》は禁句!次の西武球場から第一戦が始ると思って戦うべきですね。(原さん、今日は「これで“イーブン”になりましたぁ!」と言えば良かったのに(笑))


 原監督の勝利インタビューを注目して聞いていましたが、なんと《四連勝》“宣言”をしましたよ。


 実際は(大声で)「“一つ”“一つ”、勝ちに行きます」と言ったのですが、ワタシにはそれが、


 「あと“二つ”(続けて)勝ちます」


 と聞こえたのでした。


 (原さん、お父さんの貢さんと藤田監督には「四連勝します!」と宣言してるんじゃないでしょうか?となると“狙って”獲った初の《四連勝》となりますね。ま、このメンツなら“狙える”顔ぶれですし、《松井》を入れたメンバーはこれが最後でしょうし、西武球場ではDH制ですから、更に元木などが加わった《空前絶後打線》となりますからね。とにかく“西武球場”ではいい想い出が少ないですからね、巨人ファンとしては。大久保と緒方のホームランぐらいなもので。今までのうっぷん晴らしで、あの球場で暴れまくって欲しいものです)