小川勝さん (2002.10.3)
小川勝さん (2002.10.3)
《長嶋論・ナイアガラ風味》を手伝ってくれた元スポニチ・現スポーツライターの“小川勝”さんの“松井”原稿が載っている『NUMBER 559号』が送られて来ました。
創刊された頃は殆ど毎号、そして『特集』が出た時は必ず購入していたものですが、最近チョトご無沙汰しておりました。
相変わらず“丁寧”な作り方をしてますね、全体的に。特に小川さんのは松井の故郷・石川県や明徳・高知県にまで取材に出かけての丁寧さです。“オチ”は秀逸ですヨ。(笑えます)
また『スピーチ・バルーン』のお正月特番で二宮清純さんと小川さんとで“野球談義”を行ないましたが、その時に話が出ていた(オン・エアー版には入りませんでしたが)『イチローは“天才”ではない』(角川oneテーマ21:角川書店)も出ていたんですね。
中で早稲田の鈴木教授が、イチローが試合中にしょっちゅう行なっている《(sumo)ストレッチ》に関する考察をしているのですが実に示唆に富んだ内容です。
日本の野球を見ていると、打席に入ろうとする打者を呼び止める監督、という光景をよく見かけますよね。(これを“細かい”野球、というのでしょうか)で、その指示を聞いた打者は表情を更に“硬くして”打席に入ります。
全部のデータを取ったわけではありませんから一概には言えないのですが、“とある”監督さんがそれをやった場合はほぼ90%は失敗に終っていました。(二軍から上がって来た日にガチガチになって打席に入り“三球見逃し三振”で翌日多摩川に戻った選手とか、あるいはオシリを叩かれて打席に入った選手が凡打したシーン等々。25年ぐらい経っているのに未だに覚えています)
どうも日本“軍隊”調の緊張を強いる方式が延々と取られているような気がするんですけど、そろそろ、やめた方がいいのではないでしょうか。
緊張時よりも“リラックス時”の方が好結果が出るのはスポーツに限ったことではありません。
例えば最近よく「ゲームを“楽しむ”」という言い方がされます。(野茂から、でしょう、これ)
正確には「楽しむ(つもりで)ゲームに臨む」とか「懸命にやっている自分を見ている自分がいる」「精神を硬直させない」ということですよね、意味は。ところがテレビに出て来る“ジジイ達”は言葉尻りを捉えて「“楽しむ”とはナニゴトだぁ!喝ぁっ!」と威張ってます。
ま、《楽しむ》という言葉に“楽(ラク)”という漢字が使われていることが“喝”の原因のようですが、内容ではなく「言葉」の問題ですね。(英語なら「Take It Easy」の“easy”という言葉があるのですが、このeasyに相当する日本語がないですからね)
これと同じで《リラックス》も誤解されやすい言葉のようです。「たるんでるぞ!」とか言われますからね。
実際、“チャランポラン”と“リラックス”を混同している例もありますからジジイ達の言っていることにも一理あります。どちらにしても、これらは《緊張社会・日本》の副産物と言えます。楽しむとかリラックスは“反抗するもの”として存在してきた面もありますからね、実際。しかし、そろそろプラス面からリラックスを研究・追求すべきだという風潮が生まれている。この本を読んで強くそれを感じました。
第二章は「大リーグ幻想からの脱皮」。
伊良部がテレビで「メジャーもロッテも、自分にとっては“日本か?アメリカか?”ということではなく、数ある選択肢の一つであった」と語っていました。
佐々木がメジャーへ行く時も「メジャーは選択肢の一つ」と語っていました。(が、最後まで巨人との“密約説”を執拗に書いていたマスコミもありました)
現在、近鉄の中村ノリも同じ発言をしています。
90年代、FA騒動が起きた時、実際に“巨人”に来る(来たい)選手も多かったのですが、来なかった選手も一度は「巨人入りか?」と書かれました。
これは、選手側にとって、一応“巨人”と言っておけば契約金が上昇するという“計算”もあった、と書いているメディアもありました。(真偽のほどはわかりませんが私から見ても“アヤシイ”と思われる選手は確かにいましたネ)
現在も、中には(そういう意図で)“メジャー”なる語句を使っている(あるいは“いた”)選手もいるかもしれませんし、これからもこういう手法はなくならないのかもしれません。
しかし、そろそろ伊良部の言うように力のある選手はメジャーを“本当に”《選択肢の一つ》と考えていいと思います。「日本を“捨てる”」とかさ、浪花節調の脚色、好きだからねぇ。未だに「球団の“身売り”」という語句を使いますからね。“吉原”じゃないんだからさ(笑)。「経営権の譲渡・売買」とか、正式な語句を使いましょうよ。
メディア側ももう《日本 vs メジャー》という鋳型で捉えるのもやめた方がいいのではないかと思います。(が。そう書いた方が“売れる”のであれば仕方ないですけどネ。そう「思いたい!」という人が多い、ということなんでしょうから)
P.S.
例えば、カブレラが日本で56本打って、メジャーに復帰して56本を打つ、とか。あるいは松井がメジャーで55本打つ、とか。それで「メジャーは大したことない」という安直な結論を持つのではなく、日本が、とか、アメリカが、ではなく《野球》を“共通言語”として捉える。そういう時期ですよ。日本野球もメジャーもどうでもいい。数字もどうでもいい。ルースもアーロンも、王貞治もカブレラも、全員が“スゴイ選手”なんです。スゴイ選手!これで十分でしょう!