ボディー・ブロー (2002.11.1)


 松井君の“メジャー宣言”で(読売を母体とする)日本プロ野球機構は、何らかの《対策》を始めると思います。


 《新人獲得》では1956年、南海ホークスに入団した“穴吹義雄”選手の争奪戦は国会で取り上げられるほどの話題となり、契約金の高騰が世間の人の知るところとなりました。(『あなた買います』で映画化)


 ビンボー球団(不人気球団)と金持ち球団(人気球団)との格差が拡がる中、1963年に“初めて”巨人に敗れた西鉄ライオンズの球団社長・西亦次郎が“戦力の均等を”と《ドラフト制度》導入を提案し、65年から実施されました。


 ところが!皮肉なことに、導入された“この年”から《巨人の連覇》が止まらなくなり、結局“9年”も日本一が続いてしまった。(多分ドラフトがなければ9年は続かなかったでしょうね。完全ウエーバー制度ではなかったので、巨人も結構いい選手が獲れましたから)


 がしかし、徐々に戦力は均等化して行き、ついに1975年、《広島カープ》がセ・リーグ初優勝しました!(これはドラフトを導入していなければ永久に(失礼)無かったでしょうね(涙))世に言う“赤ヘル”ブームで、将棋の羽生名人がカープの赤い帽子を被って“恐怖の赤ヘル少年”の異名を取っていた時でもありました。


 またこの年は“常勝球団”の《読売巨人》が史上初の“最下位”になった年でもありました。アンチに取っては“盆と正月”が一緒に来たような年でしたナ。


 これを挟んで、73年に“怪物・江川”の獲得合戦がありました。阪急が一位指名したにも関らず、江川は“大学”に進みました。もちろん意中の巨人に入団したかったからです。大学卒業の77年。次に指名権を獲得したのは太平洋クラブ“ライオンズ”でした。(この時にプロ入りしてたら“西武”の選手になっていたんですねぇ)


 ノンプロ行きだと“二年”も期間が空くので母校の“職員”という《妙手》(笑)を思いついたのですが、翌年指名したのは“阪神”でした。(この“ヨミウリの悪あがき”は、結局他球団へのアイディア見本となり、西武は“西部球団職員”という“スマート”な手法で法律に抵触することのない《実質上のドラフト破り》ともいえる方法を編み出すことになります)


 そして“例の”《空白の一日》という“強硬手段”に出て、何だか分からない「コミッショナー裁定」なるものが出て、小林との“トレード”と相成ったわけではありました。


 その後《大学進学》というカードを使ったり《ノン・プロ》を使ったりと、巨人“のみならず”他球団も智恵を絞ったのですが、もう疲れたんでしょうな、ワル知恵合戦も。(笑)


 そこで今度は(大学以上は)“逆指名”とかなんとか、「世に盗人のタネは尽きまじ」とはよく言ったもんで、ホンマ、ワル知恵は次から次へと出て来まんなぁ。


   で。結局現在は「ドラフト制度」が有名無実のものになってしまったわけです。(でも、現在は別にヨミウリ“だけ”が有利とも言えませんよ。他の球団にも多少の“うまみ”はあるから、ヨミウリ一人をワルモノのイメージを押しつけて、他球団もコッソリその“うまみ”を吸っています)


 次に《FA制度》です。


 ドラフトの前に《10年選手制度》というのがあり(金田さんはそれを行使した)簡単に言うと同一球団に10年以上在籍した選手は“移籍の自由”と“ボーナス獲得”のどちらかの権利が行使できる、というものです。


 メジャーでは「ドラフトとFA」が“セット”になっているので、日本側も導入が検討され、93年11月に実施されました。選手側も以前の“10年選手制度”の復活も望んでいましたし、球団側の“査定”では常にもめますし、バブル期に“一億円プレーヤー”などと“カネ”に話題が集中した時期でもあり、一方で球団側は“ミズテン”のガイジンを獲って活躍しないケースよりも確実な選手が獲れるということで、導入されました。


 巨人“だけ”が沢山獲得したように言われていますが、“ダイエー”も結構獲ったんですヨ。


 が。確かにこの頃から“巨人”の《漁り方》がエスカレートしたのは“事実”です。もうバーゲンでのおばさんよろしく、買いまくりましたなぁ。(汗)


 ところが!


 95年に“野茂”が突然のメジャー行き!(野茂にしてみれば“予定の”行動でしたが)


 ここが《突破口》でしたな。


 “国内”だけしかアタマになかったプロ野球機構は、この《FA制度》導入が、自分で自分のクビを締める結果になってしまった!


 (“悪”は自ら破綻する!因果応報!)


 野茂、イチロー、そして“松井”。全員『ノーモア・ワル知恵』の人達ですよ。


 確かに職業(ビジネス)ですけど“スポーツ”じゃないですか、野球は!


 “スカット”しましょうヨ。キモチ良く。


 松井君が“メジャー”宣言したのは、もちろん本人の《メジャー志向》が強かった、からでしょうけど、ワタシはそれだけではないと感じます。


 遠因の一つに、上記の日本プロ野球機構の“不透明さ”と“狡猾さ”“非・正直さ”があると思います。(松井君に限らず、これを感じている人は多いはずです)


 長嶋茂雄“巨人軍終身名誉”監督というは、実は「松井のメジャー行き阻止」のために用意されたポストだったのだろうと思います。(多分、上層部では「なんだ!長嶋は何やってたんだ!」と、言えないまでも、思っている人は一人か二人はいるでしょう。“日本の上層部”って、そういうところですヨ。これはワタシの“想像”“妄想”ですけど)


 松井は、このような(長嶋さんを使ってまでの姑息な)手段を“取られた”ことに関して“嫌気”がさしていると思います。


 メジャー志向をかぎつけた球団側は、まずカネを言って来ます。(これは、“移籍”の動向を嗅ぎつけたレコード会社と全く“同じ”構造なんです)


 「何が(我が社で)不満なんだ?!カネか?!」


 まず、日本の経営者の10人中《8・9人》は“こう”言って来ます!(間違いありません)だから新聞では「5年で50億!」とかいう数字が踊ります。


 次は「なに?芝生?それなら芝生を変えろ」、とこうです。(「8チャンネル・レコーダーを16チャンにするからさ」と、言われたことがありました。ワタシ)


 どうしてこのように“デリカシー”というものがないのか、不思議です。(日本の“代議士”も品がないですが、日本の経営者にも“お品”のない人が多いですなぁ)


 このように、泣く子におもちゃを放り投げるような、赤子のあやし方のようなことを、大の“大人”に向かってやってくるのですから、選手側の《不信感》は逆に大きくなるんですよ。


 小林信彦さんの先週のコラムに、『弱者には“同情”ではなく“愛情”を注ぐこと』とありました。


 まさに“コレ”なんです。原さんも、《ジャイアンツ・愛》が“個人”を愛することが根底にあってのものかどうか、それを試されたのです。(“個人”への《愛》無くして、“団体”への《愛》など、あっていいはずがないのです)


 球団側も、指導者も、結局は「組織優先」で、“個人”を優先しない。(個人優先が《組織》を作るんです。選手の能力がチームを作った今年の巨人のようにね。「ニワトリと卵」的な構造も一方にはありますケド、やはり《個人》は大切にしないと)


 でも、音楽のように“個人”が最優先されなければならないものも(今までは、ですけど)日本の経営者は《会社優先主義》でやってきた。(本当に“公のもの”としての《会社》であるならまだいいのですが、“会社”と称した「殿様の持ち物」的な、「歌手(選手)は“使用人”」的な扱いをしてきたことは“事実”です。ムカシのことですよ、メジャーの独占時代の頃のハナシです。現在の音楽界のことではありません。渡辺プロからですね、“アーティスト”という名称を使い出したのは)


 現在、中村ノリや若田部、金本らがFA宣言して、その顛末がメディアに流れています。(“真実”かどうかは分かりませんが)


 金本選手には“山本監督”が《土下座》して残留を要請した、とか。(事実のほどは分かりませんけど)


 個人的には、江藤も金本も“広島”に残って欲しい(欲しかった)と思ってますよ。でも金本“個人”としては《自分》を大事にしたい、と思うのは当然で、日本の場合、このように“監督”を使って《情に訴える》というコキタナイ手段をよく使うんですね。(現在“北鮮”が“家族”を使ってやってます)


 プロ野球の折衝の場合、「情に訴えること」自体がコキタナイのではなく、“突然”その時“だけ”やるんですよ。土下座とか、花束とか、社長室に呼ぶとか。


 “その場凌ぎ”なんです。全部が。


 これが選手側からすると更に“イヤ”になるんですよ。(どうしてこのような選手側の気持が分からないんでしょうねぇ。要するに「相手の気持」になってないんですね、とどのつまりは。テメー勝手なんです)


 金本にしても“山本監督”に土下座されても困りますよ。山本さんだって「雇われ監督」じゃないですか。彼がOWNERではない。彼とていつかはクビになる人です。その人に土下座されても・・・ねぇ・・・。困るのことヨ。実際に《責任のある》人が交渉にあたるべきですし、その時も最後は《情》ではダメですよ。何のために『契約』というものがあるのよ!《情》でやるなら、最初から“情”でやってよ!テメーの都合の悪い時だけ“情”を持ち出したってさ。キタナイよ。


 若田部にしても、こっちはOWNER(に近い人)のようだけど、“泣くな”よ!(“制度”というものが実際に“ある”んだからさ。それを想定して準備しておけよ。“経営者”なんでしょ)


 ノリの場合でも、こんな時だけオーナーが出て来るなよ。


 日本型経営者のデリカシーのなさというのは、《普段》を大切にしない!のヒトコト。


 選手はもう《決断》しているのよ!決断“後”にオタオタするのはミットモナイだけ!


 その《決断》に至るまでに、常に彼らを注視して、常に何らかのテを打ち続ける。これを全然してなくて、突然に「カネだ、芝生だ、花束だ」。これがダメなら「土下座、泣き」。(これがダメだとさ、最後にゃ《脅し》ってのもあるからね。デリカシーのなさ、極まれりだ。そして最後の最後は「ヤツらはカネに転んだ!」と選手のイメージを傷つける戦術をメディアを操作して行なう。大体、“メディア”がプロ野球球団持っちゃダメだよ。どこも。常に出て来る情報は経営者側に有利なものばかりじゃない。メディアを操作して《選手の年俸を抑えた》りしていたから選手側も対抗手段を取ったんだヨ)


 以上。ワタシの短い54年間の経験を基に、脚色・演出し、“妄想”したものであります。以上は全部“フィクション”です。(笑)


 オレがオーナーだったら、松井君の“ご両親”のね、いや松井君に限らず、巨人選手全員の《家族の特別席》と部屋を作っておくね。いつ来てもフリー・パス。オーナーのワタシは常に顔を出す。ご家族とも普通のお付き合いをする。オフにはパーティーを開いたり、選手の趣味に付き合ったりとかね。(釣りが好きな選手とは一緒に釣りに行くとかさ、一例だけどなんでもいいんだよ。普段から“関係”を持つこと)


 あの“殿様”ぶって「呼びつける」っていうのを日本のOWNERはまずやめないとダメだよ。もっとFRIENDLYに、フツーに、やらないと。


 で、交渉に“監督”を使わないこと。(これ、非常に“卑怯”)


 当然、選手側も《代理人》を使うこと。(もう“情”でやるのはやめようよ!しこりが残るからさ。《情》でやるなら、本当の《信頼》をお互いが築こうというお互いの“正直さ”がないとダメよ)


 とにかく、《普段》が“一番”大事なんだよ。コトがある時しか動かないという傾向が強過ぎる。“普段”が全然“ない”から、選手側はもう《決断》しちゃってるんだよ。リミットが来てから慌ててももうムダ。


 原監督の涙目(知らなかったのか・・・)、長嶋さんの憔悴しきった顔。気の毒だよ、彼らにそんな“責任”を被せるのは。


あと『卑怯者発言』があったけど、あれは清原を始めとするナインが、優勝祝賀会の時に「来年もやろう!なっ!」と呼びかけられて、つい「うん」とうなづいてしまったことを言ってるんじゃないでしょうか。酒の席とか“どさくさ”に紛れて大事なことを言うというのも日本社会の特徴の一つですね。相手への“配慮”がない。それを気にしている松井君。彼のほうが思いやりがあります。彼を“ここまで”追い詰めてしまった側には反省を求めたいですね。“自分”のことになれば勝手なことを言うくせに、他人である松井の《個人の思い》を配慮しない行為にはハラが立ちます。


 オレがOWNERなら、とにかく盛大に《送り出し》のパーティーをやる!帰ってきてからの“約束”とか、小さいことは一切言わない!“本気”で《彼の選択》を祝福する。


 さて。こう言うと、OWNER側はこう言って来る。


 「何言ってんだ。誰が“育てた”と思っているんだ!ここまで成長して“これから”という時に《他人》に取られる」と。(中国人はスゴイね。残留孤児。“侵略”されてさ、残された子供を可哀想だから“育てた”んじゃない。でもその子供がさ「生まれ故郷に帰りたい」と言った時、どんな気持だったんだろう。“育ての親”としての情を、どう整理したのか。それ考えると、《育ての親》だと強調すると“オトコ(人間)”下げるぜ)


 実は、これよりも“もっと”言いたいことがあるのよ!!!


 それはね、「じゃこの後、ヨシノブだ、上原だ、阿部だと、全員が“メジャー”って言い出したらこの《巨人軍》はどうなるんだぁ!」と。


 これなのよ!最大のテーマは!!!


 結論的にね、ワタシは、《全部を“正直に”》やることを提唱する!これがスベテの解決策にはならないよ。でも長期的に、例えば1000年!、考えるなら《正直》と《愛情》。これしかない。


 彼らが“メジャー”に《挑戦》《憧れ》“以上の”ものを『ジャイアンツ』が作らなければならない。


 とまぁ、言っては見ても、ゲンジツにはこうはならない。(と見る)


 今までの歴史の経緯と、日本人型“経営者”の《やり方》から、ワタシの想像する次の《一手》は、


 『メジャー流出防止法案』


 今度はこういう“妙手(ワル知恵)”で対抗してくると予想される。(実質的には『FA制度の見直し』でやるでしょう)


 《法案》を、正直と愛情で導入しないで、最後は全部“骨抜き”にして、その場凌ぎばっかりやって来たからこういう結果を招いたんだよ。自業自得!(国会と一緒やね!でも“国”が自業自得は困るぞ)


 《松井メジャー宣言》は、かなりの“ボディ・ブロー”ですな。(彼の“愛の鞭”ですよ。日本プロ野球機構よ!目を覚ませ!と。「抜本的な改正を」と・・・言っても・・・結局“しない”んだよなぁ、これが・・・)


とにかく松井君は、死ぬ時に「あれをやっておけば良かったなぁ・・・」なんて後悔したくないのサ。