山下大輔新監督に期待する! (2002.9.28)
「新監督誕生」には、“アッ!と驚く“《予想外の人》の場合や、“なるほどネ”の《想定内の人》の場合がありますが、横浜の山下さんの場合は後者ですね。権藤さんの時でも「山下大輔までの繋ぎ」と言われていました。
このケースは、阪神の中村勝弘監督のように、多少成績が悪くても“長期”になるでしょうし、またそうしてあげる必要がありますし、山下監督なら時間をかければそれなりの結果を出せる人だと思います。
しかし、森さんも“3年”契約なんだからねぇ、いかに最下位でも2年で切られるのは気の毒です。招聘する時は《名監督》とか持ち上げられて、切る時は“後ろ足”ですからね。「勝負の世界は非情」とはいいますが・・・。音楽界にも同じようなケースはありますから「いずこも同じ秋の夕暮れ」ですナ・・・。(あの記者会見の様子では「3年“契約”なので来年も」と言われていたんでしょうね。ただ《3年》で契約しても“2年”でクビになったケースは今までにも結構あります。ナベツネさんは原監督に「まだ44歳だから、10年やっても54歳。10連覇を頼むよ、と言ったんだ。10連覇の後は20連覇だ、と長期政権を約束した」なんて言ったそうですがセ・リーグ5連覇をしても、日本シリーズで4連敗したらクビになった水原さんという例もありますからね。とにかくあのようなセリフは“大ウソ”です。(日本中が“わかって”ますけどね(笑))
でも森さんの場合、やはりと言っては申し訳ないですが、結局は《古葉・大洋》と同じ結果になりましたね。(野村・阪神、とも)
「チーム作りには“最低”でも3年はかかる。来年はいい結果が出たよ」という“言い訳”は出来るでしょうが、ここまでバラバラになってしまったチーム状況を見ると、果たして“来年”好成績を残すかに関しては疑問を持つ人が多いと思います。(ワタシ、森さんよりも《黒江コーチ》がこの後どうするのかにも興味があります。ダイエー・コーチに復帰するのでしょうか(笑))
やはり《チームカラー》ではないでしょうか。これを軽視してはいけません。音楽でもそうです。やはり「会社との相性」はあります。明白な例では“氷川きよし”さん。やはり“コロムビア”だからヒットしたのだと思いますよ。(私は“身をもって”体験してますからね。(笑)コロムビア在籍時、“ぴんから兄弟”が大ヒットしていて「“やっぱり”こういうのが合うんだなぁ、この会社は」と思っていました。もともとはジャズから始った会社でしたが、60年代中期にCBSレーベルが去ってからですかね、洋楽調のヒットが出なくなったのは。随分“ポップス系”はトライしたんですよ。GSのフローラルからエイプリル・フール、マッシュルーム・レーベル、ナイアガラ等々。どれも根づきませんでした。そこへ“氷川きよし”ですから、これは「やっぱり」としか言いようがありません)
不思議なものですね。野球でも“選手”は入れ代わっているのに何かそこの「チームの野球」というものがあるような感じを受ける。何なんでしょうねぇ・・・。
《西武》はやっぱり“西鉄”ですね!(“ライオンズ”を捨てていないところに西鉄のDNAが埋めこまれているというか。東尾、伊原と“西鉄DNA”の保持者を監督に起用しているのも強さが継承されている原因の一つでしょう。必ずしも“生え抜き絶対主義”ではないですよ。“DNA”を持っているか否か、です)
『巨人・西武』は“やはり”《巨人・西鉄》。「水原・三原」の対決ですよ。(当時は「武蔵・小次郎」の“巌流島”まで持ち出してましたからねぇ。こういう対立軸が背景にあるものは盛りあがります。「もう時代は違っているんだよ。そんなものは関係ネーよ」と思うヤツは単に“若い”だけのこと(笑))
という意味で《横浜》はやはり“大洋ホエールズ”。(うーむ。またしてもここに“三原脩”が・・・。権藤さんも“三原DNA”を持つ仰木さんと一緒にやってましたからね。“大洋”には縁があったのカモ。鯨肉が好きだった、とか。(笑)でも大洋OBの秋山・土井・近藤昭はダメでしたからねぇ・・・DNA論もイマイチ説得力に欠けますなぁ)
ま、昔ばなしはともかく、私が山下大輔さんに期待する理由は、大ちゃんの“メジャー解説”を聞いていたからなんです。この人は野球を“よく分かっている”人であると共に《自分の考え》を持っている人だと感じました。(同感するところが多かったので、故に“期待”する、と)
さて、また“メジャー”かいな!と、眉をひそめる方もおられるかもしれません。もう「“メジャー”では・・・」という言い方は飽きたデ!と思っている人も多いでしょう。レッツゴー・ジュンじゃないんですからね。ナンでもカンでも「ア・メリカでは」というのも能がありません。
これに関しては項を改めますが、《メジャー野球 vs 日本野球》という対立構図で捉えるのはもう“古い”です。(“違い”は野球に限らず、何にでもありますからね。殊更違い“だけ”を取り上げて語っても「憂さ晴らし」にはなるかもしれませんが発展性がありません)
で。大ちゃんは、“メジャーを知っている”ということではなく《野球》を知っている、と感じました。(オリックスの監督になった石毛さんは、去年メジャーのカイセツをしてましたが随分“批判的”な発言が多かったですね。メジャーの“悪い”ところを指摘して、日本野球ならこうする!と、力強く語っていましたが・・・その結果が“ああ”ですからね・・・)
カイセツがいかに素晴らしくても、それが“実践”に結び付くかどうかというのは《別問題》、というのは野球に限らず、これまた“音楽”でも同じであります。(ワタシなど、70年代に“イヤ”というほど言われたものであります。(笑)その後も言われてました。「カイセツの方が音楽よりもオモシロイ!」、と)
大ちゃんのカイセツから感じたことは、この人は“対立構図”で捉えていない、ということです。
歪んだ形で輸入してしまったドラフトやFAにしても“向こう”がオリジナルですし、日本“独自”と思われている「送りバント多用」ももとは《ドジャース戦法》。土井や川相の送りバントは“当たり前”になってしまいましたが、その前の広岡や千葉はあんなにバントしませんでした。
「メジャーがナンボのもんや!」と吠えているカントクさんだって今や《先発→中継ぎ→抑え》という投手起用をしていない人はいないでしょう。これだってメジャーの発案です。(日本で最初のこのシステムの成功例はV9川上の“8時半の男”宮田でした。ネーミングが気がきいてますナ。新しいことは古臭いネーミングの方がオモシロイかもね)
しっかりと“いいとこどり”をしておいて、日本型の独自の発展を遂げると「もうメジャーに学ぶべきものはない」とくる。未だにどこかに《鬼畜米英、何するものぞ!》と“遠吠えのDNA”を抱えているんですね・・・。(涙)
その間違えた“遠吠え”的なものが山下大輔さんには“ない”。虚心坦懐に「いいところは積極的に取り入れる」人のように思えます。(当然のことながら、悪いところまでマネするつもりはない、と)
今年の“原・巨人”の好結果も同じ事が言えると思います。(メジャー帰りの(笑)鹿取投手コーチの起用法etc)
やはり、とにかくチーム力の“現状の徹底分析”。そこからの“長期戦略”。これが大事です。これを無視して“屋根”だけ立派にしても土台から崩れます。
そういう意味で、野村・森(&長嶋)の“失敗”は、もう《名将型》は終った!ということではないでしょうか。これからは、伊原さんもそうですが“実務型”。
《名将型》の最大の欠点は「理想が高過ぎる」ということです。もちろん“理想”を高くしておかないと進歩が止まります。しかし、実情とあまりにもかけ離れた《理想》では選手を“圧迫”するだけです。(古葉さんの失敗もこれだったのでしょうし、星野さんもこういう側面、ないですか?)
原さんは“名将型”を選ばなかった。これが成功の原因でしょうね。(よく言われていますが、やはりお父さんが“苦労人”のようですからね。それと“実務”の担当者であるコーチとの連携。“当たり前”なんですけど、それをやらない・出来ない人って結構いるんですね)
星野さんも、かなりの“戦略家”で、このへんが分かっていたので《阪神DNA》を持っている田淵さんを招聘し、オマリーのコーチ起用等々、やっていたようですが、イマイチ“有機的”な繋がりになっていないのではないでしょうか。
どちらにしても《お山の大将(オレ一人)》の時代は終りました。
横浜の場合、小谷投手コーチも戻って来るようなハナシもあるようですし、まずは“横浜(大洋)DNA”を根底に据えて“チームカラー”に合った野球をすることでしょうね。
誰でも思うことですが、佐々木のような“抑え投手”とローズのような主砲はフロントがシッカリと獲ってきて欲しいところです。そして先発投手陣の整備。後は二軍選手の才能の発掘。(“ソリアーノ”はいないか(笑)。なんで“金城”は森さんになってから使われなくなったんだろうね?巨人の清水のようなものですかネ。せっかくいい選手が出て来た!と思ったものでしたが)
《メジャーとの“差”》などとイチイチ言いたくないですが、とにかく《守備力》は「月とすっぽん、カメ&アンコー」。これは誰もが認めるところでしょう。“好守”の大ちゃんですから、当然“ここ”には重点を置いているでしょう。
《守備(&走塁)》も野球の醍醐味の一つであることを見せてくれるような“いいチーム”を作ると思いますよ。(今年の巨人は“スピード&チャージ”を掲げていた時よりも数倍“走った”そうですね。鈴木康&西岡の“西武コンビ”が走らせていたようです。伊原型のチャレンジ走塁も試してましたね。ワタシ、そこだけ“たまたま”見ていて「あ!やってるな」と思いました。結果は“アウト”になってましたが、シーズン中にシリーズ用の走塁を試しているところなど、《原・巨人》もなかなかやってますネ)
私は山下大輔さんにやってもらいたいことがあるのですが、それは《1%の可能性の追求》です。とにかく一年目は“練習”と捉えて、「アウトになってもいい走塁」を沢山やって欲しい。そして(アウトになっても)その《勇気を讃える》ダグアウト(監督・コーチ)であって欲しい。
あの“失敗した”選手を(戦犯のように)扱う・責めるという“やり方”は、もう(時代にも)合わないし《逆効果》です。(といって、高校野球のように“ムリヤリの笑顔”も気持ち悪い!あれはガチガチの“裏返し”。“同じ”ことです。無意味。逆効果)
どうも日本野球は“失敗を引きずる”傾向が強くないですか?サッカーなど、世界のチームを見ると、失敗した選手ほど“声を出している”。あれ、日本なら“顰蹙モノ”だと思うのですが、コレが日本チームを今一つ“大きく”しない最大の原因ではないかと思うのです。
日本の“戦術”は以前の《伝統的将棋型》というか“流れ”が強調され、ゲームの進行を直線的に捉える傾向が強い。
一方、海外は《囲碁型》というか、一つ所に執着しない。“ここ”がダメなら、次は“あっち”、と。終わったことは忘れて、次に向かう。
つまり。その時その時で“切って”行くこと。(昨今の将棋も変化して来て、羽生名人は「経験が邪魔をすることがある」と語っていました。確かに“羽生マジック”は、流れの中に“ない”駒を意外な場所に置きますからねぇ)
エラーをした場合、あるいは走塁ミスをした場合、「してしまった」場合はもう“終って”いるんですからね。そこで“申し訳なさそうな”顔をしたところでそのミスが戻って来るわけではない。(しかし“コクミン感情”が許さないんでしょうナ、平然としていては)
宇野が“オデコ”に当ててエラーをした時に、マウンド上でグラブを投げつけていた投手がいましたが(笑)あの場合に投手がやらなければならないのはバックホームの“カバーリング”です。“基本”を怠っているんですね、あの行為は。(だから未だにミスした選手を睨んでばかりいるんですねぇ(笑))
ミスが起きた場合、(原発も同じですが)一番大事なのはそのミスを指摘しまくることではなく《再発の防止》なんです。野球では「次のミスを防ぐ」。それを忘れると“一点”で済んだものが“二点”取られたりします。(感情的なミスの指摘は“根本原因の追求”の妨げになる危険性もありますよ。そこで爆発させると気分が治まってしまって、それからの追求が甘くなる)
「100%の成功の確率がない場合はやるな」なんてムリです。出来ない相談。世の中に“100%安全”なものなどないのと同じです。(もはや“食品”ですらそうなんですから)
“どこ”が“どう”危険か。無意味な《安全性の追求》よりも「危険性の分析」の方が重要です。
ましてや野球など、テレビ番組でもよく見るように、狙ったところへはボールは行かないし、打ったボールだってどこへ飛ぶかも分からない。ましてや返球のリレーなど、どこにどう逸れるか分からない。安全性どころか“危険”ばかりの球技に“100%の可能性”を求めること自体が馬鹿げています。(要は「“失敗”を“恐れて”いる」だけのことでしょう)
『メジャー野球への批判』というのも、“失敗”ばかり取り上げて語る人が多い。
《成功》というのは“失敗を恐れない”から獲得出来るのであって、チマチマとした目先の《確率論》から得られたものは単に“失敗しなかった”ということで《成功》と呼べるほど素晴らしいものではありません。
「失敗しなければいい」というぬるま湯から脱却して(失敗しても)成功を目指す!
これを山下大ちゃんに期待しているんです。(飛んだり跳ねたりする“退嬰的・幼児的”な見せかけはもう沢山ですからね。彼なら失敗にも成功にも“淡々とした”指揮官になるでしょうし、「オーソドックスが一番」だということも見せてくれるでしょう)
“すがすがしい”野球を!