総合討議・情報交換
総合討議・情報交換
第42回 宗援連情報交換会 「能登半島地震支援活動のその後の展開」
6)総合討議・情報交換
島薗進(司会・宗援連代表):
これまで五名の方々から貴重なご報告をいただきました。これを受けての討議に加え、本日の話題以外にも、現在取り組まれている活動についての情報交換の場として、皆様からのご発言を歓迎いたします。
八本俊之(真如苑SeRV・宗援連事務局):
ご報告ありがとうございました。地元で支援活動を展開されることの意義について、改めて深く感じ入るところがありました。被災しながらも支援に尽力される姿勢は、容易に真似できるものではなく、目の前の困難に直面する方々を放っておけないという宗教者としてのあり方を、私自身も学ばせていただきました。
私たち真如苑SeRVは、能登の穴水町に支部寺院を有しておりますが、当初は被災の影響で建物内に入ることもできず、修行の場として使用できない状況が続いておりました。しかしながら、金沢の寺院を拠点としながら(3月より能登の支部寺院を拠点に)、輪島・珠洲・穴水にて物資支援や避難所・仮設住宅での足湯活動、ボランティアセンター運営等を継続いたしました。
本部である立川の本山からの支援は、(9月の輪島水害も含めて)昨年11月で一旦区切りをつけておりますが、現地の信徒グループがSeRV活動を継続しており、現在も週一回のペースで足湯の取り組みが行われています。石川、富山、福井の信徒を中心に、在家の方々が主体となって活動を行っております。毎回の参加人数は十名前後で、穴水町の川島第二仮設集会所にて定期的に実施しております。
この活動は、職員のみならず、信徒が自発的に準備から実施まで担っており、足湯を通じて自然な形で打ち解け、終了後にはお茶を共にするなど、傾聴の場としても機能しています。臨床宗教師の資格は有していないものの、利他の実践を志す方々が心を込めて取り組んでおります。
地元の方々による支援は、言葉や距離感においても非常に自然で、被災者との心のつながりを感じる場面が多々あります。ある年配の女性は、当初は多くを語られませんでしたが、足湯を通じて徐々に打ち解け、最後には「頑張ろうね」と声をかけてくださり、むしろ私たちが励まされるような場面もございました。
このような距離感は、地元の方々だからこそ築けるものであり、同じ石川県内や近隣からの支援だからこそ、継続的な活動が可能となっております。週一回のペースでの取り組みを続ける中で、今後も現地の信徒や活動者との連携を深め、継続的な支援を展開してまいりたいと考えております。以上、現地での活動状況についてご紹介させていただきました。
島薗:
地元の方々による支援の重要性について、改めて感じるところがございます。先ほどの北原さんや松本さんも地元の方であり、外部から訪れる者にとっては、言葉の壁があることを実感します。例えば、石川県では「お気の毒な」という言葉が「ありがとう」の意味で使われたり、「ひどい」という表現が「疲れた」という意味で用いられることがあります。こうした言語感覚は、地元でなければ理解しがたいものであり、地元の方が支援にあたることの意義は非常に大きいと感じております。
北原密蓮(真言宗千手院@穴水町、日本臨床宗教師会):
同じ仮設住宅で、私が土曜日に活動しており、SeRVさんは日曜日に活動されています。少々表現が適切でないかもしれませんが、実際には来訪される方々の層が異なっております。一部重なる方もいらっしゃいますが、私の活動には来られていない方がSeRVさんの方には参加されていたり、その逆もあります。つまり、被災者の方々は自ら居心地の良い場を選んで参加されているということです。似たような活動であっても、それぞれの場に個性があり、共存していくことの大切さを改めて感じております。
高柳龍哉(全国曹洞宗青年会、ビハーラ秋田):
まず、共通して言えるのは、皆様が傾聴活動に真摯に取り組まれているという点です。当会の活動が的外れではなかったという確認ができたことが、個人的には非常に大きな収穫でした。先ほども申し上げましたが、現地に足を運ぶたびに景色は変化していきます。しかし、被災者の皆様の心情やストレスといった内面の部分は、なかなか変わらないという実感があります。今後も引き続き、力を尽くしてまいりたいと考えております。本日は誠にありがとうございました。
日野史(真宗大谷派西照寺僧侶、こまつ子ども食堂代表):
私も同様に感じております。これほど多くの方々が、それぞれの立場で活動されていることを知り、時折感じる孤独感や迷いが、決して自分だけのものではないと確認できました。皆さんがつながることで、もっと多くのことができるのではないかという希望を感じました。今後もぜひ連携を深めていきたいと思います。ありがとうございました。
島薗:日野さん、ありがとうございます。まさにそのために宗援連という場を設けているのだと、あらためて感じております。
仙波達治(崇教真光):
いつもお世話になっております。島薗先生には以前よりご指導いただいており、今回もお声がけいただき、参加させていただきました。私は新宗連に所属しており、飛騨高山に本部を置く崇教真光の者です。前回に続き、今回が二度目の参加となります。
本日は、現場での取り組みについて多くの方々から貴重なお話を伺い、大変勉強になりました。新宗連では昨年4月から12月にかけて、七尾市を拠点に能登半島へのボランティア派遣を行いました。青年隊を中心に、北陸・中京・関西・関東の近隣地域から約百名の青年が参加し、被災地支援に尽力いたしました。
私自身も、東日本大震災の際に気仙沼市唐桑町へ本部幹部と共に赴き、津波警報が出る中、かき養殖の農家支援を行った経験があります。その際、避難を促しても現地の方々は動かず、我々が高台へ避難するという状況もありました。今日の傾聴活動に関するご報告を伺い、その時の記憶が鮮明に蘇りました。
昨年7月には、元教団職員の実家が珠洲市にあることから、現地に赴きました。教会は新築であったため大きな被害は免れましたが、周囲には倒壊した建物が多数あり、神社の本殿以外は参拝も困難な状況でした。
このような経験を踏まえ、今後も宗援連の情報交換会に参加し、青年隊を通じて奉仕活動を継続してまいりたいと考えております。ただ、現地での活動には安心・安全の確保が不可欠であり、宗教団体に対する行政の対応や、こども食堂への処遇など、改善すべき点も多くあると感じております。
また、個人的なつながりとして「日本リモート」という団体との交流もございます。災害死亡者の家族支援を行う医療系の団体であり、災害救助犬を派遣する日本レスキュー協会とも関係があります。私どもの青年隊も、近隣の者が時折協力させていただいております。
ボランティア活動は容易ではありませんが、今後も精神的・霊的支援と医療支援の連携を模索しながら、学びを深めてまいりたいと考えております。教団内には医療従事者の団体もございますので、連携の可能性を探りつつ、今後ともこの会に参加させていただきたいと思っております。
若林祐亮(創価学会):
創価学会の若林と申します。本日は、五名の方々によるご発表を拝聴し、心より感謝申し上げます。特に北原先生の「スタディ・デ・モンク」の取り組みに深く感動いたしました。私自身、地元の町会活動に参加しており、子どもたちが集まる場での様子を日常的に目にしております。学校では話せないことを語る子どもたちの姿に触れる中で、北原先生の活動がいかに意義深いものであるかを実感いたしました。特に、学校への直接的な働きかけについてのお話も印象的で、その情景を思い浮かべながら拝聴いたしました。
当会の最近の取り組みとして、6月に能登町の社会福祉協議会へ備蓄用のパンを中心とした食料を寄付いたしました。報道でも指摘されているように、世間の関心の低下に伴い、食料寄付が減少している現状があります。現地との連携を通じて、地域の方々が「これ、もらっていいんですか?」と手に取られる様子を伺い、継続的な支援の重要性を改めて認識いたしました。
さらに、全国的な取り組みとして、当会の各地の会館では災害時の避難訓練を実施しております。地元町会と合同で行う訓練や、町会イベントの一環として避難訓練を組み込むなど、地域との信頼関係を築くための工夫が各地で展開されています。こうした取り組みを国内外に共有することで、災害時の迅速な対応と信頼構築に資するものと考えております。今後も知恵と力を尽くし、検討を重ねてまいります。本日は誠にありがとうございました。
稲場圭信(大阪大学・宗援連世話人):
ありがとうございました。能登半島地震における支援活動が現在も継続していること、そして今後に向けて地域連携や行政、社会福祉協議会など多様なセクターとの関係構築が極めて重要であると改めて感じました。
私自身も、能登教務所の竹原了珠さんと共に、七尾市の茶谷市長、珠洲市の泉谷市長、穴水町の吉村町長に直接お会いし、宗教を地域資源として捉える深い理解に触れる機会を得ました。ただし、国や石川県の動きには難しさもあり、慎重な対応が求められます。
先日、災害対策基本法が改正され、事前登録制度が始まりましたが、宗援連や宗教法人が単に国の制度に従属するのではなく、地域に根差した活動を継続し、国の「下請け」ではなく「パートナー」として、被災者に寄り添う支援を展開していくことが重要です。皆様の報告を通じて、その思いを新たにいたしました。ありがとうございました。
島薗:
予定時間を過ぎてしまいましたが、五名の方々(うち一名は代読)による深いご報告、そしてその他の皆様からの貴重なご発言を伺うことができました。能登での支援活動は、まだまだこれからであり、新たな課題も常に生じていることを実感いたしました。皆様、本当にありがとうございました。
以上