創価学会インタナショナル 人道・開発部長
浅井伸行さん

七尾の現地担当者

北陸事務局(金沢市)

総務部長上倉雄一さん



第39回 宗援連情報交換会「能登半島地震における宗教者による支援活動の広がりと現状」

6)浅井伸行さん(創価学会インタナショナル 人道・開発部長)

まず元旦に、本部と対象各県において対策本部を立ち上げて情報収集を開始した。翌2日からは最初の物資搬送をプッシュ型で行った。元旦の段階では、石川県と隣の富山県も含めて会館に避難の方もおられたが、翌日にはほとんどの方が帰宅または公的な避難所に移動された。

珠洲会館は建物が損傷し、避難所としては機能を果たせなかった。その後は会員のネットワークを通じた物資と心の支援を中心に行ってきた。食料生活用品・ブルーシート・発電機など、基本的には東京・他地域で備蓄していたものを現地の会員やその周辺の友人・知人へお送りした(金沢市指定倉庫にも)。一部は石川県内でも購入。あんこのお菓子が石川県では人気ということで、現地でも追加で購入した。輸送自体では、我々の関連会社の方で担当した。

義援金は、石川県と13市町(富山県内)へお届けした。石川では、金沢の石川文化会館だけに職員が常駐している。富山の職員、東京の職員を5名から10名程度、交代で派遣し支援活動を進めている。北陸研修道場(七尾市内)を拠点に物資を送り、関係者もここに集合し前線のほうに移動する。

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七尾の現地担当者

北陸事務局(金沢市)上倉雄一総務部長

発災直後から会員の安否確認と励ましを続けてきた。被災者一人一人が心に深い傷を負っているなかでいかに立ち上がっていくことができるか。話を聞きながら並走していきたいと活動している。

発災直後は状況もひどく、励ましといっても話を伺うだけで水や食料物資を渡すことを地道に続けている。3日には比較的被害の少なかった七尾の北陸研修道場を拠点にして激励にまわる体制をとった。道場は宿泊施設でないため、風呂・寝床もない。断水中で非常食や水・寝袋・毛布を持ち込んで宿泊。井戸水を汲んでトイレに使用した。

1月6日には本部から青年部職員10名が派遣され我々地元職員と協力し、激励に歩き始めました。しかし物理的な名簿などが消滅し、口コミを頼りにするしかなかった。そのなかに、東北の同志から、池田名誉会長からの東日本大震災時のメッセージが届いた。それは当時、同志に届けられたものだった。「いかなる苦難も心の宝は壊せない。断じて負けるな。勇気をもて。希望をもて。」と記されていた。これを会員一人一人にお渡ししながら、復興を誓い合った。中には、涙を流して、決意を語る方もおられた。個々に状況もニーズも異なる。できるだけ寄り添い、励ましを続けた。

避難所での生活者にとって、今後の住む場所は最大の課題。早く仮設住宅を建設してほしいという声も多く聞いた。公明党の県本部へも要望を届けた。党は全国のネットワークで、情報を収集し、日本ムービングハウス協会と連携し、県に要請するなか、2月初旬には輪島市に応急仮設住宅として18戸をもってくることができた。

また週末、石川県と富山県の青年部が「かたし隊」を結成し、家の片付けやごみ捨てのボランティアを行っている。若いメンバーが手伝ってくれ、元気をもらったと感謝の声が寄せられている。のべ50名、20数件のお宅をまわった。一方で建物の危険度判定が「危険」「要注意」の建物にはボランティアの安全を守るため、立ち入りできない。しかし、そこに住む方々こそ困っているのも現実。

これまで災害対応についてマニュアルを作成し、様々な想定を行い準備を進めてきた。想定外の事が多かったと実感している。

拠点の道場も断水が続き非常に辛い状況であったが、2月には水が出るようになった。トイレの水を流すのに10ℓの水を使用することもそれまで知らなかった。水道水のありがたみをあらためて感じた。

能登半島の地域は専従職員がいない。これまで平常時は、ボランティアの活動ですべて運営されてきた。それが震災で完全に機能停止となった。地元を離れて、市外や県外に移った方もおられる。また会館以外で、個人のお宅を拠点として集まっていたが、その多くが使用できない状況となっている。

避難所生活の方も多く、個人で集まっても祈る場所がないというのは、非常につらい状況。そういう意味でも仮設住宅への入居が重要となる。3月までは状況の確認と励ましに重点をおいてきたが、今後は一からの再建となる。昭和49年4月28日に池田名誉会長が石川に来られて今年で50年の佳節を迎える。

皆の心に少しでも希望をつくりながら、ともに復興の道を歩んでいきたいと思っている。

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浅井:全国1200の会館は、職員が在籍の100強の会館とその他の千余りの会館に分かれる。後者は職員が常駐せず、地域のボランティアによる運営で、会合以外では閉館している。

災害時には、内外の方々を迎えて機能できるようにと現在取り組んでいる。専門業者も入り、各施設のリスク評価、リスクに応じたBCPやマニュアルを作成した。職員がいる会館での災害対応訓練はほぼ完了している。職員のいない会館は教育訓練の実施を進めている。

さらには、地域社会と連携し(自治会・自主防災組織・社協・行政当局等)、私どもの会館をいい形で使用して頂ければと考えている。これらは、東京の本部が中心となり進めている。先日、香川の高松文化会館で実施した「防災フェア」では、近隣自治会の関係者にも参加くださった。施設も見学され、有事にはどのような使用が可能かも確認して頂いた。こうした取り組みを、今回の教訓もふまえて、さらに進めていきたいと現在議論している。

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島薗:今回の能登で地域社会との連携はいかがでしょうか。

上倉:職員のいない会館に近隣の方が避難に来られることがあった。そこで様々な対応をさせて頂いた。もともと各町会より、我々の会館を使用し防災に関しての説明会を行いたいとの要望に応え、会館をお貸しすることがあった。

島薗:支援活動は、会員を対象となっている。それ以上、一般の市民被災者に広がっていくかという可能性に関してはいかがでしょうか。

浅井:現実、要望が寄せられるのが会員からという事もあり、それに応じた対応ということで実施してきた(注.会員は地域社会で一定の責任を担っていることが往々にしてあり、要望自体、そうした地域の声を反映していることがままある。また、会員が避難所に避難している場合には、会員個人向けではなく避難所全体を意識して物資を寄贈)。

別途、プロの救助隊のようなものを立ち上げるかという議論もあったが、いま大筋では会館の活用を充実していく方向に。有事に会員の内外を問わずご使用して頂く点に関しては、これまでも実施されている。その時々で具体的に検討している状況。

稲場:穴水の能登平和会館に元旦に100名ほどが避難されたことは、1月2日の時点で私共が開発運営している災救マップでもLアラートにより情報が入ってきた。穴水町の自治体と災害前から協定を締結した指定避難所、緊急避難場所が、総務省のLアラートに情報登録される。こうした連携がいつ頃からか。

また発災当初から、津波避難指示で避難所開設となったときに、役所との連携、情報共有、避難者数の公表などはどう連携してきたか。

上倉:能登平和会館が穴水の高台にある。近隣の方が発災直後に集まってこられた。会館は停電しており、会館内もかなり壁や天井が落ちたりと被害がひどかった。当初は受水槽に水が入っていたが、まもなくにトイレなど会館自体の機能が使用できなくなった。当初から各市町村とは避難所指定などの連携はなかったと思うが、近隣の方々としては前回の地震でも駐車場に避難されることもあった。

稲場:今回の能登半島地震で穴水でも神社の高台に住民が避難された事例もありました。能登半島全体では、宗教施設への避難者数や避難状況が自治体でも把握できないということが各地で起きていた。ところが、穴水は行政がその状況を把握していた。そういった中で、創価学会の会館に避難された情報がいち早くLアラートで発信されたということかと。

私も驚いて1月2日から見ていたのですけれど、どうして今回、穴水では情報発信ができたのか。逆に輪島・七尾・珠洲ではそうしたことができずに、行政も、1〜2週間経ってやっと避難所や避難者の数が把握できたというくらいに初動が遅かった。その辺りの情報があれば。

上倉:穴水の能登平和会館については、元旦の段階ではこちらにもそのような情報がなく、もしかしたら会員さん、あるいは避難された近隣の方が、何かしら行政と連携があって伝達したのかもしれない。ただ詳細は私どもも分かりかねるところである。他の会館についても、2日までには状況が掌握できたが、同日には退避されたことがわかった。災救マップとの連携は今後迅速に実施できるようにしたい。

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北村敏泰:なかなか組織的な支援活動で、かつ公明党につなげるというのがならではというか。現地の状況を政治につなげるということは大きな意味がある。さきほど初動の動きで会員やその周辺の友人に対する支援という話があった。阪神淡路大震災でも現場に行って、三ノ宮の創価学会会館もその動きをずっと見てきた。東日本大震災もそうだった。なぜ会員およびその友人に限定した支援となっているのか。

今後は一般に開いていくということだったが、今回はなぜ?物理的制約か、他に別の理由があるのか。これは宗教の公共性に関わる根幹の問題だと思うので、お応え頂ければ。

浅井:現実的に私どもにニーズが寄せられるのが会員、あるいはそれに近しい方々だったので、それに対応するということに今回はなったというのが実態(注.上記の通り、その声は地域社会全体の声である場合もあり、また支援を受け取った会員がそれを地域社会で共有することも多数あり。)。専従職員がいる会館でその周辺が大きく被災している状況であれば、おそらく大きく変わってきたと思う。

特に今回は専従職員が不在の会館が大きく被災しており、そもそも集落が点在し分かれてもおり、正直私共も会員がいない地域では避難者の所在情報なく、対応しようがなかったというのが現実かと思う。

島薗:創価学会は国際的な支援でも多くの成果を上げておられる。それらは会員の方以外への支援活動となっている。国内でも是非そちらへの展開を今後はお考え頂けるのではと思っております。今日は、お願いが主要な話題ではなく、支援活動のご報告を頂き、本当にありがとうございました。

以上